土曜夜更新が常態化していてすみません〜の追加クエストもどき。タイトル通りユルい内容です。「おいしいミルク」はヒーローズ2に出てくるアクセサリー強化素材ですが、モーモンやがいこつが落とすことがあります。モーモンは赤ちゃんモンスターだからわかるんですが、がいこつは何故だろう・・・と思ってできた話です。骨強化?今回この話ではがいこつじゃなくて死霊の騎士にしましたが。こんな死霊の騎士に剣の錆にされたらイヤだ。
ナザム地方を訪れていたミミとイザヤールは、希望の泉に佇んでいた時間が思っていたよりも長くなったのもあって、日が落ちて暗くなった森の中を歩いていた。ルーラですぐ帰ってもよかったのだが、なんとなくもう少し二人きりでエルギオスとラテーナを偲んでいたい気分だったのである。
しんみり歩いていると、誇り高い騎士の亡霊で姿がすっかり骨になってしまっている魔物「死霊の騎士」がいきなり飛び出して斬りかかってきた!・・・が、イザヤールのカウンターで返り討ちに遭い、ばらばらに崩れて地面に落ちた。普通の人間のカップルと思って襲いかかってきたのがこの魔物の運の尽きだったようだ。
「ミミ、怪我は無いか?」
「はい・・・vvv」
流れるような動作で剣を収めるイザヤールを、ミミがハートの飛び散りそうなうっとり顔で見つめるというお約束の光景が展開されて、辺りは夜の森にもかかわらず甘い雰囲気に包まれだした。
だが、そのとき。崩れ落ちてばらばらになっていた死霊の騎士の骨が、ぴくぴくと動き、組み合わさって再び立ち上がった!
「おのれェ〜!」死霊の騎士は叫んだ。「チャラチャラと女連れのふやけた剣士と思って油断したが、次はこうは行かぬぞ!」
前述の通り、死霊の騎士は誇り高いナイトの亡霊の魔物だが、この死霊の騎士は誇り高いは誇り高いようだがどこか方向性がズレているようだ。ミミは、バトルマスター姿のイザヤール様を見て畏怖じゃなくてチャラチャラとかふやけたとか思うなんて珍しい魔物だなあ・・・と思い、今度は私がイザヤール様をお守りする、と、愛用のロトのつるぎを構えた。
「やめておけ、拙者は女には刃を向けぬ。しかも、そんなヒラヒラした服装でまともに動けるものか。愚かな・・・」
おどりこのドレス姿のミミを死霊の騎士はせせら笑いしたが、最後まで言わないうちにミミに剣を弾き飛ばされた。
「そ、そんな・・・」死霊の騎士はがっくりと膝を着いた。「こんな可憐な姫君のような小娘に、剣であっさり負けるとは・・・」
褒められているのか悪口なのかいまいちよくわからずミミは困惑した。サンディならディスられてんだかられてないんだかよくわかんない、と言うところだろう。
「もう怨念は捨てて、地上を去った方がいい。潮時だろう」とイザヤール。
「いいや!これは今の我が肉体が弱っているからだ!そうに違いない!」死霊の騎士は叫んだ。「骨格がこんなにあっさりばらばらにならなければ貴様たちなど!」
そして死霊の騎士は、頭蓋骨が外れそうな勢いで頭を上げて言った。
「そうだ!骨だ!骨が丈夫にさえなれば!骨には牛乳だ!・・・しかし、この拙者が、ブラッドアーゴンどもに頭を下げるなど・・・」
死霊の騎士はしばらくぶつぶつ言っていたが、尊大な態度でミミとイザヤールを振り返った。精一杯虚勢を張っているようにも見えたが。
「貴様たち、ブラッドアーゴンどものところに行って、奴らの持つ『おいしいミルク』を取ってこい!拙者がそれを飲んで骨を丈夫にしても貴様たちに勝てなかったら、負けを認めて地上を去ってやる!」
無茶苦茶なことを言うな・・・と二人は思ったが、元守護天使として怨念を持つ魂が未練を無くして地上を去るのはいいことなので、頼みを聞くことにした。ミミとイザヤールはクエスト「骨にはミルク」を引き受けた!
二人はさっそくブラッドアーゴンを探しに行った。ブラッドアーゴンは西ナザムや魔獣の洞窟に多く棲息しているが、ナザム村から程近い竜の門地方に探しに行くことにした。
夜なので悪魔の一種であるブラッドアーゴンはたくさんうろうろしていた。どちらもそれぞれにたいへん旨そうな血の持ち主の旅人二人を見て襲いかかってきたが、先ほどの死霊の騎士のようにあっさり返り討ちに遭った。
「待って、私たちは戦いに来たんじゃないの。あなたたちが持っているっていう『おいしいミルク』を分けてもらいたくて来たの」
それを聞いてブラッドアーゴンは言った。
「なんだ〜、そーだったのか。だけどな、持ってんのはオレたちじゃないぜ。弟たちが持ってんだ。あいつら赤ん坊で、まだまだミルクを飲んで暮らしてるからな」
弟たちとは、ウォルロ地方に棲息している魔物モーモンのことだ。あんな可愛い姿がこんなことになってしまうのだから、諸行無常ではある。気にするのは人間たちだけで、本人?たちはさほど気にしていないだろうが。
ではさっそく行ってみようとミミとイザヤールは移動しようとしたが、ブラッドアーゴンが引き留めた。
「おいおい、情報がタダってわけにはいかねえなあ。おまえたちの旨そうな血を情報料代わりに・・・」
「血はあげられないけれど」ミミは袋から何か取り出した。「このさえずりのみつでどう?」
ミミはさえずりのみつの瓶の栓を開けた。なんとも甘く芳醇な香りが辺りに広がる。
「しょうがねえなー。今回は特別に許してやるか〜」
こうして二人は首尾良く情報を手に入れウォルロにルーラで飛んだ。モーモンは一応悪魔の一種なので夜もふわふわ飛んではいるが、どことなく眠そうだ。だが、ミミたちを見ると遊んでほしいらしくふわふわ寄ってきた。
ミミとイザヤールはモーモンの頭をなでたり、背中を掻いてやったりしながら、おいしいミルクについて尋ね、言った。
「ねえねえ、あなたたちのミルクと、このクッキーを交換しない?」
ミミは「ごうかなクッキー」を取り出し、モーモンに交渉を持ちかけた。
「わ〜い、おいちそうなクッキーなんだモン♪」
モーモンたちは喜んで、ミルクの入った瓶を持ってきて交換に応じた。そこへスライムたちも集まってきて、ちゃっかり一緒にクッキーをつまみながら言った。
「エラフィタの牧場から毎朝キメラが運んでくれる、新鮮なミルクなんだよ〜」
なんだ、エラフィタのミルクならリッカの宿屋にもあったのに・・・とミミとイザヤールは苦笑し、どうせならもう少しミルクを持って行こうかと、直接エラフィタに行くことにした。
エラフィタの牧場主に会ってミルクが欲しいことを伝えると、ちょうど夕方の搾乳後で搾りたての新鮮なミルクを分けてもらうことができた。しかも瓶では重いだろうと小型の樽に入れてくれた。
これだけ有れば死霊の騎士も納得するだろうと、ミミとイザヤールは顔を見合わせてにっこり笑い、さっそく届けに行くことにした。
「でも、イザヤール様、いくら最上等のミルクでも、一回がぶ飲みしただけじゃ骨は丈夫にならないんじゃ・・・」
「まあそうだろうが、気分の問題なんだろう」
「もしかして、気付いてなかったりして・・・」
「まさか。・・・まあそうだとしても、気付かれたら、骨が丈夫になるまで一年待て!とか言われてしまうぞ。彼が安らぎを得るのにまた時間が掛かってしまう」
「そうですね、だったら気付いていませんように!」
ミミがぎゅっと目を瞑って懸命に祈りのしぐさをすると、イザヤールは思わず可愛いなと笑ったが、あの死霊の騎士では、本当にそんな勘違いをしていそうだなと苦笑も漏れた。
ミミとイザヤールはナザム地方に戻って、先ほどの死霊の騎士を探した。他の死霊の騎士と見間違う心配もあったが、二人の姿を見た途端に尊大な声で話しかけてきたので、すぐにそれと知れた。
「おお、持ってきたか!よし、暫し待っておれ!そのミルクを飲み骨を頑丈にして、今度こそ貴様たちを討ち果たしてくれるわ!」
やはり即効性と勘違いしているようだ。そう言うと死霊の騎士はミルクの入った小樽を引ったくり、一気にがぶ飲みした!・・・筈なのだが、何せ骨しかない姿である。せっかくのおいしいミルクは、下顎の穴や隙間という隙間から溢れ出し、衣服をびしょびしょに濡らしていった。せっかくのミルクがもったいないなあ・・・とミミは悲しくなった。
死霊の騎士もさすがにこの状況には気付いて、悔しそうに言った。
「くそう、自慢の帯と靴が濡れてしまった・・・」
「えっ、気にするのそこ?!」
「しかしこれで骨は丈夫になった筈!では男よ、再び勝負だ!今度こそ貴様を剣の錆とし、その小娘を絶望の涙に沈ませてくれるわ!」
いや、飲めてない飲めてない、とツッコミたいところだが、イザヤールは、絶対に負けないつもりであっても、死霊の騎士がミミを絶望の涙に沈ませると言ったことに怒り、一片の容赦もしないことに決めた。棍ではないが即座に黄泉送りする気満々だ。
ミミは、イザヤールが勝つことを疑ってもいなかったが、おいしいミルクを摂取したという「思い込み」で死霊の騎士が本当に強くなってしまってイザヤール様に怪我をさせたら、と思うと心配で、間抜けな状況の割にはハラハラした気持ちで勝負を見守ることになった。
死霊の騎士は、咆哮を上げてイザヤールに斬りかかってきたが、静かな怒りに燃える彼に勝てる筈も無かった。一瞬で首、腕、腰を斬られ、死霊の騎士は崩れ落ちた。ミミはイザヤールがかすり傷一つ負わなかったことに安堵し、それから二人で崩れ落ちた死霊の騎士の骨を見守っていると、しばらくして骨はまた繋がって、再び死霊の騎士は立ち上がった。
だが、死霊の騎士はすっかり戦意を無くしていた。彼は、悔しそうに、だが弱々しい声で言った。
「骨の頑丈さのせいではなかったか・・・。無念ではあるが、騎士に二言は無い、おとなしく逝くとしよう」
それがいい、とミミとイザヤールは頷いた。
「貴様たちには敵とはいえ世話になったな。礼代わりに、我が自慢の帯と靴をくれてやろう」そう言って死霊の騎士はまず衣装のベルトを外そうとしたが、途端に叫んだ。「ぐはあっ、何だこの臭いは!」
衣装の布地に染み込んだミルクが、元々ゾンビ系なモンスターであることも相まって、強烈な臭気を放っているらしい。牛乳を拭いた雑巾と同じようなことになってしまったようだ。
「ぐむむむ・・・耐えられん、さっさと地上とはおさらばだ!」
そう言い残すと、死霊の騎士は再び崩れ落ちた。そして、今度は骨も衣装も全て灰となっていき、風に吹き散らされて消えた。後には、プラチナソードだけが残された。
こんな理由で怨念から解放されるのでいいのかなあ・・・とミミは思ったが、まあどんな形でも死霊が一人あの世に旅立ったのはいいことだと思い直した。
「やれやれ、人騒がせだったな。ミミ、すっかり遅くなってしまったが、帰って夕食にしようか」
「はい。リッカが、今日は暑いからスパイシーなチキン料理にするって言ってたの♪」
ミミは、先ほどモーモンに分けてもらったおいしいミルク入りの瓶を袋の上からそっと触れた。これは死霊の騎士に渡していなかったのでまだ残っていたのだ。お風呂上がりにイザヤール様と半分こしようかな?そう内心呟いて彼女は微笑み、セントシュタインに向けてルーラを唱えた。〈了〉
ナザム地方を訪れていたミミとイザヤールは、希望の泉に佇んでいた時間が思っていたよりも長くなったのもあって、日が落ちて暗くなった森の中を歩いていた。ルーラですぐ帰ってもよかったのだが、なんとなくもう少し二人きりでエルギオスとラテーナを偲んでいたい気分だったのである。
しんみり歩いていると、誇り高い騎士の亡霊で姿がすっかり骨になってしまっている魔物「死霊の騎士」がいきなり飛び出して斬りかかってきた!・・・が、イザヤールのカウンターで返り討ちに遭い、ばらばらに崩れて地面に落ちた。普通の人間のカップルと思って襲いかかってきたのがこの魔物の運の尽きだったようだ。
「ミミ、怪我は無いか?」
「はい・・・vvv」
流れるような動作で剣を収めるイザヤールを、ミミがハートの飛び散りそうなうっとり顔で見つめるというお約束の光景が展開されて、辺りは夜の森にもかかわらず甘い雰囲気に包まれだした。
だが、そのとき。崩れ落ちてばらばらになっていた死霊の騎士の骨が、ぴくぴくと動き、組み合わさって再び立ち上がった!
「おのれェ〜!」死霊の騎士は叫んだ。「チャラチャラと女連れのふやけた剣士と思って油断したが、次はこうは行かぬぞ!」
前述の通り、死霊の騎士は誇り高いナイトの亡霊の魔物だが、この死霊の騎士は誇り高いは誇り高いようだがどこか方向性がズレているようだ。ミミは、バトルマスター姿のイザヤール様を見て畏怖じゃなくてチャラチャラとかふやけたとか思うなんて珍しい魔物だなあ・・・と思い、今度は私がイザヤール様をお守りする、と、愛用のロトのつるぎを構えた。
「やめておけ、拙者は女には刃を向けぬ。しかも、そんなヒラヒラした服装でまともに動けるものか。愚かな・・・」
おどりこのドレス姿のミミを死霊の騎士はせせら笑いしたが、最後まで言わないうちにミミに剣を弾き飛ばされた。
「そ、そんな・・・」死霊の騎士はがっくりと膝を着いた。「こんな可憐な姫君のような小娘に、剣であっさり負けるとは・・・」
褒められているのか悪口なのかいまいちよくわからずミミは困惑した。サンディならディスられてんだかられてないんだかよくわかんない、と言うところだろう。
「もう怨念は捨てて、地上を去った方がいい。潮時だろう」とイザヤール。
「いいや!これは今の我が肉体が弱っているからだ!そうに違いない!」死霊の騎士は叫んだ。「骨格がこんなにあっさりばらばらにならなければ貴様たちなど!」
そして死霊の騎士は、頭蓋骨が外れそうな勢いで頭を上げて言った。
「そうだ!骨だ!骨が丈夫にさえなれば!骨には牛乳だ!・・・しかし、この拙者が、ブラッドアーゴンどもに頭を下げるなど・・・」
死霊の騎士はしばらくぶつぶつ言っていたが、尊大な態度でミミとイザヤールを振り返った。精一杯虚勢を張っているようにも見えたが。
「貴様たち、ブラッドアーゴンどものところに行って、奴らの持つ『おいしいミルク』を取ってこい!拙者がそれを飲んで骨を丈夫にしても貴様たちに勝てなかったら、負けを認めて地上を去ってやる!」
無茶苦茶なことを言うな・・・と二人は思ったが、元守護天使として怨念を持つ魂が未練を無くして地上を去るのはいいことなので、頼みを聞くことにした。ミミとイザヤールはクエスト「骨にはミルク」を引き受けた!
二人はさっそくブラッドアーゴンを探しに行った。ブラッドアーゴンは西ナザムや魔獣の洞窟に多く棲息しているが、ナザム村から程近い竜の門地方に探しに行くことにした。
夜なので悪魔の一種であるブラッドアーゴンはたくさんうろうろしていた。どちらもそれぞれにたいへん旨そうな血の持ち主の旅人二人を見て襲いかかってきたが、先ほどの死霊の騎士のようにあっさり返り討ちに遭った。
「待って、私たちは戦いに来たんじゃないの。あなたたちが持っているっていう『おいしいミルク』を分けてもらいたくて来たの」
それを聞いてブラッドアーゴンは言った。
「なんだ〜、そーだったのか。だけどな、持ってんのはオレたちじゃないぜ。弟たちが持ってんだ。あいつら赤ん坊で、まだまだミルクを飲んで暮らしてるからな」
弟たちとは、ウォルロ地方に棲息している魔物モーモンのことだ。あんな可愛い姿がこんなことになってしまうのだから、諸行無常ではある。気にするのは人間たちだけで、本人?たちはさほど気にしていないだろうが。
ではさっそく行ってみようとミミとイザヤールは移動しようとしたが、ブラッドアーゴンが引き留めた。
「おいおい、情報がタダってわけにはいかねえなあ。おまえたちの旨そうな血を情報料代わりに・・・」
「血はあげられないけれど」ミミは袋から何か取り出した。「このさえずりのみつでどう?」
ミミはさえずりのみつの瓶の栓を開けた。なんとも甘く芳醇な香りが辺りに広がる。
「しょうがねえなー。今回は特別に許してやるか〜」
こうして二人は首尾良く情報を手に入れウォルロにルーラで飛んだ。モーモンは一応悪魔の一種なので夜もふわふわ飛んではいるが、どことなく眠そうだ。だが、ミミたちを見ると遊んでほしいらしくふわふわ寄ってきた。
ミミとイザヤールはモーモンの頭をなでたり、背中を掻いてやったりしながら、おいしいミルクについて尋ね、言った。
「ねえねえ、あなたたちのミルクと、このクッキーを交換しない?」
ミミは「ごうかなクッキー」を取り出し、モーモンに交渉を持ちかけた。
「わ〜い、おいちそうなクッキーなんだモン♪」
モーモンたちは喜んで、ミルクの入った瓶を持ってきて交換に応じた。そこへスライムたちも集まってきて、ちゃっかり一緒にクッキーをつまみながら言った。
「エラフィタの牧場から毎朝キメラが運んでくれる、新鮮なミルクなんだよ〜」
なんだ、エラフィタのミルクならリッカの宿屋にもあったのに・・・とミミとイザヤールは苦笑し、どうせならもう少しミルクを持って行こうかと、直接エラフィタに行くことにした。
エラフィタの牧場主に会ってミルクが欲しいことを伝えると、ちょうど夕方の搾乳後で搾りたての新鮮なミルクを分けてもらうことができた。しかも瓶では重いだろうと小型の樽に入れてくれた。
これだけ有れば死霊の騎士も納得するだろうと、ミミとイザヤールは顔を見合わせてにっこり笑い、さっそく届けに行くことにした。
「でも、イザヤール様、いくら最上等のミルクでも、一回がぶ飲みしただけじゃ骨は丈夫にならないんじゃ・・・」
「まあそうだろうが、気分の問題なんだろう」
「もしかして、気付いてなかったりして・・・」
「まさか。・・・まあそうだとしても、気付かれたら、骨が丈夫になるまで一年待て!とか言われてしまうぞ。彼が安らぎを得るのにまた時間が掛かってしまう」
「そうですね、だったら気付いていませんように!」
ミミがぎゅっと目を瞑って懸命に祈りのしぐさをすると、イザヤールは思わず可愛いなと笑ったが、あの死霊の騎士では、本当にそんな勘違いをしていそうだなと苦笑も漏れた。
ミミとイザヤールはナザム地方に戻って、先ほどの死霊の騎士を探した。他の死霊の騎士と見間違う心配もあったが、二人の姿を見た途端に尊大な声で話しかけてきたので、すぐにそれと知れた。
「おお、持ってきたか!よし、暫し待っておれ!そのミルクを飲み骨を頑丈にして、今度こそ貴様たちを討ち果たしてくれるわ!」
やはり即効性と勘違いしているようだ。そう言うと死霊の騎士はミルクの入った小樽を引ったくり、一気にがぶ飲みした!・・・筈なのだが、何せ骨しかない姿である。せっかくのおいしいミルクは、下顎の穴や隙間という隙間から溢れ出し、衣服をびしょびしょに濡らしていった。せっかくのミルクがもったいないなあ・・・とミミは悲しくなった。
死霊の騎士もさすがにこの状況には気付いて、悔しそうに言った。
「くそう、自慢の帯と靴が濡れてしまった・・・」
「えっ、気にするのそこ?!」
「しかしこれで骨は丈夫になった筈!では男よ、再び勝負だ!今度こそ貴様を剣の錆とし、その小娘を絶望の涙に沈ませてくれるわ!」
いや、飲めてない飲めてない、とツッコミたいところだが、イザヤールは、絶対に負けないつもりであっても、死霊の騎士がミミを絶望の涙に沈ませると言ったことに怒り、一片の容赦もしないことに決めた。棍ではないが即座に黄泉送りする気満々だ。
ミミは、イザヤールが勝つことを疑ってもいなかったが、おいしいミルクを摂取したという「思い込み」で死霊の騎士が本当に強くなってしまってイザヤール様に怪我をさせたら、と思うと心配で、間抜けな状況の割にはハラハラした気持ちで勝負を見守ることになった。
死霊の騎士は、咆哮を上げてイザヤールに斬りかかってきたが、静かな怒りに燃える彼に勝てる筈も無かった。一瞬で首、腕、腰を斬られ、死霊の騎士は崩れ落ちた。ミミはイザヤールがかすり傷一つ負わなかったことに安堵し、それから二人で崩れ落ちた死霊の騎士の骨を見守っていると、しばらくして骨はまた繋がって、再び死霊の騎士は立ち上がった。
だが、死霊の騎士はすっかり戦意を無くしていた。彼は、悔しそうに、だが弱々しい声で言った。
「骨の頑丈さのせいではなかったか・・・。無念ではあるが、騎士に二言は無い、おとなしく逝くとしよう」
それがいい、とミミとイザヤールは頷いた。
「貴様たちには敵とはいえ世話になったな。礼代わりに、我が自慢の帯と靴をくれてやろう」そう言って死霊の騎士はまず衣装のベルトを外そうとしたが、途端に叫んだ。「ぐはあっ、何だこの臭いは!」
衣装の布地に染み込んだミルクが、元々ゾンビ系なモンスターであることも相まって、強烈な臭気を放っているらしい。牛乳を拭いた雑巾と同じようなことになってしまったようだ。
「ぐむむむ・・・耐えられん、さっさと地上とはおさらばだ!」
そう言い残すと、死霊の騎士は再び崩れ落ちた。そして、今度は骨も衣装も全て灰となっていき、風に吹き散らされて消えた。後には、プラチナソードだけが残された。
こんな理由で怨念から解放されるのでいいのかなあ・・・とミミは思ったが、まあどんな形でも死霊が一人あの世に旅立ったのはいいことだと思い直した。
「やれやれ、人騒がせだったな。ミミ、すっかり遅くなってしまったが、帰って夕食にしようか」
「はい。リッカが、今日は暑いからスパイシーなチキン料理にするって言ってたの♪」
ミミは、先ほどモーモンに分けてもらったおいしいミルク入りの瓶を袋の上からそっと触れた。これは死霊の騎士に渡していなかったのでまだ残っていたのだ。お風呂上がりにイザヤール様と半分こしようかな?そう内心呟いて彼女は微笑み、セントシュタインに向けてルーラを唱えた。〈了〉
いやいや〜ブラッドアーゴンってマポレーナに見下されているらしいので案外気にしているのかもしれませんよ。で、ブラッドはマポが羨ましいらしいです。
マポ「僕は色んな作品に出てるけど、君は9しか出てないモン♪」
ブラッド「うわ〜ん!気にしてるのに」
腐敗臭と牛乳の匂いが混じり合ったベルトと靴…死霊の騎士に嗅覚が残っていて良かった…そんなもの渡されたら嫌すぎる!
ククール「牛乳飲んでもすぐに効果は出ないなんて少し考えりゃ分かるだろ。」
リリン「ていうか飲めてすらいないし」
クク「飲むんじゃなくって浸かればすぐに効果出たかもな、牛乳風呂みたいに」
リリ「なんだか温泉行きたくなっちゃった」
クク「一緒に入ろうか?」
リリ「もう、えっち!///」
クク「ダメ?」
リリ「…ま、まぁ水着なら良いけど?///」
バッシャーン!
エイト「牛乳こぼしちゃった☆てへっ」
イザやん「折角掃除したのに〜
クク「エイト、今から温泉行かないか?」
エイ「温泉!良いね〜行こ行こ」
イザやん「エイト君⁉︎先にこれ片付け…
リッカ「きゃー⁉︎床が牛乳塗れじゃない!イザやん!どういうつもり⁉︎(怒」
イザやん「私じゃありませーん(泣
いらっしゃいませおはようございます☆傲慢と短絡的発想は良くないよ〜という教訓・・・って、そんなたいそうな話じゃないですね(笑)
えっ、マポレーナ、自分たちがカワイイことを自覚して優越感持ってるんですか?そんないけずな(汗)でも仲間にするならやはりブラッドアーゴンよりマポレーナだよな・・・結局見た目か・・・。ごめんブラッドアーゴン。
おいしいミルクは浴びても骨は丈夫になりませんが美肌にはなりそうです(笑)
大人のムードな温泉デートと思いきや、みんなで賑やかに行くんですね、ひと安心☆(何が?)
8主人公さん、大切なチーズの材料をムダにしちゃいけません!(ツッコミ間違い)こぼした牛乳が豆乳で、白木の床だったらつや出しワックス代わりになると当サイトイザヤール様が(以下略)