「え? 此奴、普段と云っている事が全く違う」
と云う事が在った。
吾も大概は口から出任せが多いが、此れ程ではない。
職場で傍若無人に振る舞う上司が居る。
此れは以前の記事でも書いた。
実は吾の直属の上司の事であるが、何やらSNSを徘徊して職場の悪口が書かれていないかを探る気配を感じた為、関する記事を下書きに落とした。
と云うか、普段から社員が職場の悪口を書いていないかを探している。
ならば此の記事も特定される危険が在るが、身近に危険を感じたら下書きに潜らせる積もりである。
此の危険な上司に同調する者は皆無で、皆が排除する側……。
の筈だった…。
此の先鋒として躍起になっていたXが居る。
Xは、吾にこう話を持ち掛けていた。
「此の儘、彼奴に好き勝手はさせない。設備導入も独断で決め、数千万も経費を使っている。他部署への相談も無い。俺の部署も導入して欲しい説場が有るし、他部署も現行の設備が古くなり劣化していて、其の入替えも検討している。どうも決済を決めている取締役が、何故か此奴に肩入れしているのが問題だ」
等と鼻息荒く語っていた。
昨年、此の数千万もの設備を入れたばかりで、又今年も新しい設備を入れる様である。
新しい設備を入れようとした経緯が香ばしい…。
「会社の資金に未だ余裕が有るから、何か欲しい物が有れば買ってもいい」
なんと、取締役が優先的に使って良いと云ったと云うのである。
普通は、他部署の長を集めて会議にかける。
依怙贔屓的にこんな事をすれば、そんな事は他の部署が許さない。
当然、此の件が皆の知れる処となり、非難轟々である。
「又、彼奴の暴走が始まった」
其処で緊急にリーダーの招集が在り此の件に待ったを掛けた。
緊急会議が終わり、奴が現場に戻って来たのだが、半ギレ状態で業者に電話を掛けた。
周りに聞こえるような大声で…
「もしもし、今お電話宜しかったでしょうか。実は話を進めて購入しようとしていた件ですが、余りにも金額が大きいと云う事で却下されまして、其処でもう少し金額が低くて性能が近いものは在りますでしょうか」
現場の中を、電話で話をしながら行ったり来たりと落ち着かない様子だった。
吾は、招集会議で此の件は却下されたのだと思っていたが、金額がもう少し低ければ購入しても良いと云う事らしいのだ。
結局は、奴が設備を導入するのは変わらない。
其れでは、緊急招集した意味が無い。
そうこうしていると、冒頭に紹介したXがやって来た。
現場の事務所に入り、何やら話し込んでいる。
中々出て来ない。
時間にして1時間位経った頃にやっとXが退出した。
目が合い会釈をしたら…
「お疲れっす」
と何やら上気した顔をしていた。
何かに感動すると顔が上気するが、少し興奮状態の顔だった。
Xは常に、奴には腹が煮えくり返る思いだと云っていたので、1時間此処ぞとばかりに諫またのだと思っていた。
翌日、他のリーダーから聞いたのだが、Xは奴に励ましの言葉をかけ続けていたと云うのである。
・お前の凡てを否定する積りはない
・とても優れた能力も在るし、良い処も在る
・此れからも協力してやって行きたい
・此れ迄一緒にやって来た仲間だし、協力して会社を良くして行きたいし、仲良くやって行きたい
と云った事を話し続けていたと云うのである。
其れも1時間も…。
Xよ、お前普段からええ勢いでディスっとったんちゃうんかい。
アホちゃうか。
此のダブルスタンダードには呆れる。
1時間、歯の浮く言葉を吐き続け、其の言葉に独り酔いしれているのである。
Xがなにゆえ方向転換したのか解らぬ。
Xが幾ら奴に如何なる言葉を掛けようが、何等響いていない。
云うだけ無駄である。
そんな事は初めから解っていた筈である。
社内の改革でもしようとしたのだろうが、たかがリーダー風情が変えられる筈も無い。
吾は其れを知って、独り善がりの正義感だけは御免蒙りたい。
まぁ、Xの今回の言動は正義感から出た言葉ではなく、
己のナルシシズムを確認し満足する為のものだったのである。
吾は此奴に振り回されそうになったのである。
未だ間に合う、此奴への同調を解除する。
他人や身内が信用信頼出来ると云える人はほんの一握りである。
そう云う関係を築けている例は僅かである。
吾個人の人間関係の基本的な考えとして、信用し信頼するのは自分自身であり、他人と云う生き物は裏切るものであると云うのがベースに在る。
其れをベースとして吾は他人を見て、お互いが高め合えるかどうかを吟味しているので、吾には友人、家族と呼べる者が極僅かである。
現在では、友人では1人だけで家族は祖母のみである。
愛社精神?
無い。
仕事を楽しく感じた事は無いのか?
無い。
唯一の楽しみと云えば、薄給の支給である。
吾は職場では、作り笑顔をし、おべんちゃらを云い、当たり障りの無い様に振る舞っている。
職場では心を開き許せる者は居ない。
職場は、日々の生活を途切れさせない為に通っている場所であり、其の手段でしかない。