好きなものが好き

多忙により、当ブログにて縮小活動中。

現実逃避発動1

2022年03月29日 22時04分28秒 | 小説

「ああ、それから。今度の四校会議だが、久しぶりに私が出席するから、そのつもりで」

 
朝礼の後、一通り部下の報告を聞き終わったところで、ゼイン=ミルズはそう切り出した。
 
「西部士官へ行かれるのですか。今年は何か特別な決め事でもありましたか」
 
ここ数年、この手の会議は部下であるタリウスに任せきりだった。会議の主な目的は情報交換だが、このところ毎回同じようなに議題に終始し、経験の浅い教官ならともかく、殊更出席する意義を見出だせなかったからだ。
 
「いや。だが、西部士官には少しばかり気掛かりなことがある」
 
ゼインは両手を組み合わせ、部下を見上げた。
 
「西部は、昔から血統を重んじる風習がある。そう聞くと聞こえは良いが、要はコネだ。毎年、士官候補生の半数が二世ないしは三世だ」
 
「噂には聞いていますが、それが事実なら、随分とやりにくいように思いますが」
 
「幸か不幸か、教官たちも二世崩れか、さもなくば息の掛かった者が多い。一般の志願者にしてみれば、ただでさえ狭き門が益々狭まるばかりか、めでたく入校した後も、地獄の日々が待っているというわけだ」
 
「地獄ですか」
 
「予科生が地獄をみるのはどこも同じだが、西部のそれは他とは一線を画す。出来ることなら、やりたくはなかったのだが」
 
台詞の後半は、半ば独り言だ。無意識に漏れた溜め息は、いつになく深かった。

 

タイトルは後程。とりま引き継がれるほうは終わって、今度は自分が引き継ぐ番。もう不安しかない。けど、考えても何一つ解決しないから、もう考えない

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というわけで

2022年03月27日 22時53分33秒 | 小説

改めまして、引っ越しました。

引っ越し記念にどうでも良い短編を置いておきます。例によって、元は拍手SSのつもりでしたが、長くなったのでこちらへ。ちなみに、拍手SSには更にどうでも良いネタをあげておきましたので、何かのときにでも寄ってみてください。

 

「ねえ、ゼイン。それ、捨てるの?」
 
久々に訪れた夫の執務室で、ミゼット=ミルズは遠慮がちに声を発した。視線の先には黒い布が数枚折り畳んで置いてあり、その上には黒塗りの仮面が無造作に折り重なっていた。
 
「こうなった以上、致し方ないだろう」
 
「何だか気の毒ね。勝手に悪者にされた挙げ句、捨てられるなんて」
 
ミゼットはその場にしゃがむと、仮面のひとつを手に取った。前に見たときには不気味だとしか思わなかった鬼の仮面も、今は何だか淋しそうに見える。
 
「何を今更。オニなんてものは、元来嫌われてなんぼだろう」
 
「あはは、流石に含蓄があるわね。あなたが言うと、本っ当」
 
「喧嘩を売っているのかい?」
 
「まさか、そこまで暇じゃないわよ。やあね、ふはは…」
 
ツボにはまったのか、ミゼットは笑いを堪えるのに必死だ。
 
「笑い事で済まされる話ではないことくらい、君にもわかるだろう」
 
「ごめんって。あ…ねえ、どうせ捨てるなら、もらっても良い?」
 
「かまわないよ、妙なことに使わない限りは。宴会の余興かい?」
 
「ええ、そんなところよ」
 
ゼインが力なく笑い、ミゼットの瞳がキラリと輝いた。
 
 
それからしばらく経った、ある休日のことだ。真っ黒い顔に、つり上がった目、口からは二本の牙が飛び出している。言わずと知れた、雪割り祭の鬼たちである。彼らは今、ひとかたまりになって街中を疾走していた。
 
「あ!オニだ!!」
 
「まてー!!」
 
そんな鬼たちを見るや否や、子供たちが一斉に走り出した。子供たちの手には、めいめい真っ赤に熟れたトマトが握られている。
 
「うわっ!痛った!ていうか、汚な!」
 
追われているのは子供たちではない。オニ役その一、キール=ダルトンは、にわかに痛む肩をどろどろになったマントの上からさすった。
 
「痛ってえ!マジかよ、半端ないな」
 
そしてすぐ隣では、オニ役その二、テイラー=エヴァンズがオニの面の隙間から入ったトマトを拭おうと必死だ。
 
「二人とも声が大きい」
 
そんな二人を小声で諌めるのは、オニ役その三、アルベリック=バルマーである。
 
「なんだよ、優等生」
 
「ゆ…!別にそんなんじゃないよ」
 
「優等生だろ?監督生にまでなったんだ」
 
「そうそう、ジョージア先生のお気に入り」
 
三人が囁き合う間も、子供たちは次々とトマトを投げてくる。ひたすら逃げ惑っているうちに、どうにか躱せるようになったが、それでも油断すると何発か食らった。
 
「二人には言われたくない!!だいたい、何だって今更オニをやらなきゃならないんだよ。しかも、設定おかしいし…」
 
「よくわかんないけど、何か不祥事を起こしたみたいで、いつもどおりには出来ないみたい」
 
「不祥事って、オニが?」
 
「みたいだよ。それでミルズ先生に捨てられそうになったのを、うちの上官が拾ってきて、今ココ」
 
「話が違うよ!子供たちのための慈善活動っていうから来たんだ」
 
「慈善活動?俺はスゲー美人の頼みだって聞いたぞ」
 
「どっちも事実だよ…って、うわあぁっ!?」
 
突然、足元に何かを引っ掛け、キールは大きくバランスを崩した。幸い転倒することはなかったが、体勢を立て直す間にトマトの集中砲火を受けた。
 
「みんな、オニはここよ!今のうちにじゃんじゃん狙いなさい」
 
「ちょ…何を?!」
 
甲高い声に、顔を見るまでもなく上官だと確信する。
 
「ってか、人を盾にするなよ。おいテイラー!もう、アルまで!」
 
気づけば、仲間の鬼たちがキールの背後にまわり、巧みにトマトから身を守っている。お陰でこちらはやられ放題だ。
 
「ちょっとあんたたち、何本気で逃げてるのよ。当たらなければ意味がないでしょう」
 
「んなむちゃくちゃな…って、うそだろうっ!」
 
そのとき、視界の端に映ったのは、子供たちにせっせとトマトを補給している教官たちの姿だ。流石にばつが悪いのか、目を合わそうとはしなかった。
 
「ほら、みんなあと少しよ。悪いオニを懲らしめて頂戴」
 
「はーい!!」
 
茫然自失の中、子供たちの無邪気な返事が遠く聞こえた。
 
おしまい
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深夜のつぶやき2022

2022年03月24日 02時30分00秒 | そらごと
「あのねぇ、生きている限り容赦なく明日は来るんだから。どんなに最悪な日でも、明日のために寝るの。あなたは先生の弟子、もう無為に生きていた頃とは違うんでしょう」


いつぞや、ミゼットがレイドに言ったセリフですが、今まさに自分に向けて言われた気がしています。

久しぶりに、本っっ当に受け入れがたいことがありまして。どれほどあがいてあがいてあがき倒しても、もう結果が覆ることはなくて。

納得なんて到底出来ないけど、こうなった以上はもう前に進むしかなくて。

いや、もう本当に青天の霹靂なんですけども。眠れない夜、昔の自分にちょっとだけ元気をもらったのです。


そんなわけで、しばらくはめちゃくちゃ忙しくなりますが、逆境が人をつくるという言葉もありますし、暇を見付けて、いや、ないけど、レイドと鬼せんせいの続編でも書こうと思います。

いつか笑い話になるといいな…
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ついにそのときが

2022年03月06日 22時45分00秒 | そらごと
昨日、ネットニュースで知ったのですが、今年の夏をもって、teacupがサービスの提供を終了するとのことです。

気持ち的には、うっそー?と言うより、ついにきたかという感じです。旧メイドブログから通算して、恐らくは15年前後、お世話になった計算になります。本当にもう、よくもまあこんなに長く続けてくれたなと、感謝でいっぱいです。

サイト閉鎖後、一時期休眠ブログだった間も、消えないで存続してくれていたお陰で、もう一度書きたいと思ったタイミングですんなり再開することが出来、大切なお客様とも再会?を果たすことが出来ました。

今後のことはまだ決めていませんが、記事のエクスポートは出来るようなので、またどこかにお引っ越しするかもしれません。

でもでも、行くあてなんてないんですけども。teacupのブログはとにかく使い勝手が良くて、そこそこ自由度も高くて、でもって下品な広告が出ることもなくて。とにかくめっちゃ気に入って使ってたんだもん。

さしあたって、ブログにだけ掲載している作品をサイトに転載する作業が待っています…。いやはや、これは結構憂鬱です。

そして、仕方ないことなのですが、これまで皆様からいただいたありがたいコメントの数々が消えてしまう😖💧💨

いやだって、私にとって本当に本当に大事なものなのです。なもんで、時間があったら、チマチマダウンロード大会しようと思います。


コメント (1)
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