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好きなものが好き

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続鬼の神髄26

2025年04月20日 21時52分14秒 | 小説(パラレル)
ノア=ガイルズが階段を上ると、寝間着姿の訓練生が数人、廊下をうろついているのが目に入った。見たところ、全員が二階の階の住人、予科生のようだ。
 
「何してるんだ。消灯時間は過ぎただろう」
「でも、ガイルズせんせい。隣がうるさくて眠れません」
 
「そうです。みんな迷惑しています」
 
「何とかしてください、せんせい」
 
少年たちが口々に異議を唱える。そうこうしている間に騒ぎは大きくなり、たちまち廊下は人で溢れた。
 
「とにかく消灯時間だ。ベッドに戻れ」
 
教官が叱責する間も、廊下にはバタバタと不穏な音が響いた。
 
「おいそこ、いい加減にしろ!」
 
ノアは苛立ちまじりに、騒ぎの元である居室を開けた。
 
「何だ、お前らまだやってたのか?!」
 
刹那、目に飛び込んできた光景に、ノアは思わず驚きの声をあげた。つい先程、喧嘩の仲裁をしたばかりの二人が今もって取っ組み合いの喧嘩をしていたからだ。
 
「ガイルズせんせい!寝ていたら、突然襲いかかられました」
 
「違います。たまたま身体が当たっただけです」
 
「そんなわけないだろ!!」
 
「うるせえよ!!」
 
ナントがオニールの顔面をクッションで殴打したのを皮切りに、すぐさま掴み合いの喧嘩が再開された。彼らの怒りは留まることを知らず、益々ヒートアップした。
 
「だから、やめろって。いい加減に…」
 
教官が二人を無理やり引き離そうとしたときだ。
 
「遅い!!」
 
ひときわ通る怒声に、二階にいた全員が息を呑んだ。クッションから飛び出した水鳥の羽がハラハラと空を舞う。静寂の中、教官の長靴の音だけが一際大きく響いた。
 
「予科生ごとき御すのに、一体いつまで掛かっている」
 
「申し訳ございません!!」
 
階下から現れた上官に、ノアは直立不動で謝罪を返した。
 
「全くディラン教官がいないと、寝る時間ひとつ守れないのか」
 
吐き捨てるようにして言うと、タリウスはじろりと少年たちを見回した。まさかの人物の登場に、少年たちは皆、茫然自失で立ち尽くすばかりだ。
 
「別段疲れていないのなら、無理に休まずとも良い。全員、腕立て百回。始め!!」
 
教官の号令に、少年たちは競うようにして床に膝をついた。疲れていようがいまいが関係ない。出る杭は打たれる。それが、今日までに彼らが学んだことだった。
 
「ガイルズ教官!何だこのふざけた奴等は」
 
主任教官の視線の先には、先ほどのふたりがいた。彼らは乱れた形(なり)で頭から羽毛をかぶっている。
 
「その二人が喧嘩騒ぎを。これで二回目です」
 
一方、ノア=ガイルズは、うっかり自分も命令に従いそうになるのをどうにか堪え、主任教官を仰ぎ見た。そこで、ようやく我に返ったのか、喧嘩中の二人も慌てて床に這いつくばった。
 
「お前たちはそんなことをせずとも良い。ガイルズ教官、鞭を持て」
 
「はっ!」
 
ノアは壁際から素早くパドルを取った。オニールとナントは不承不承立ち上がり、並んでベッドに手を付いた。
 
「待ってください、主任!」
 
とそこへ、ディランが息も絶え絶えやって来る。
 
「ディラン教官?!そんな身体でよく階段を…」
 
「悪かったな、こんな身体で」
 
慌てて差しのべられたノアの手をディランが無情に振り払う。
 
「ディラン教官、ここへ」
 
タリウスは空いているベッドに腰を下ろし、その隣をポンポンと叩いた。
 
「まずはガイルズ教官のお手並み拝見だ」
 
「しかし、ガイルズ教官では…」
 
「良いから座れ。指示出しはお前がしろ」
 
「はっ!失礼します」
 
そこでディランは上官の手を借り、しぶしぶ腰かけた。
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またしても故郷を追われる😖

2025年04月14日 22時28分29秒 | そらごと

teacupから引っ越して三年弱、こちらのブログサービスも終了するとのことです。もう時代じゃないってことですよね、わかっていますが、、、

とりあえずどこかに引っ越します。落ち着き先が決まりましたら、またご連絡します。

心がね、すーすーします。

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怒濤の一週間

2025年04月04日 22時29分50秒 | そらごと

この4月から、家中全員の生活スタイルが変わりました。ひさしぶりのフルタイム勤務は、とにかくやることが多いし、加えて今週は初めましての気疲れもあったりして、結構ハードモードです。日に日にお弁当が貧相になっていくリアル…。

でもって、新職場は大アタリでした。なんせこの三年間が酷すぎたこともあり、いろんな人に、良かったね良かったねと言ってもらい、私自身、内示が出た日は笑いが止まりませんでした。

もちろん新職場もいろいろありますけど、そこはこれまでの蓄積で乗り越えていけるのではと思っています。ということで、ひとまずご報告でした。

「鬼の神髄」のほうは、ようやくノアのパートまで来ました。彼の優柔不断な面が炸裂していますが、、、この後もう一騒動起きそうです。

そして、なんだかんだでディランせんせいがいとおしい今日この頃、タリウス的にもほっておけない存在になりつつあるようです。アドリーが右腕、ディランが左腕となって、ジョージア先生を支えてくれる日が来たら、中央も安泰かな?などと考えています。

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続鬼の神髄25.5

2025年03月18日 14時47分24秒 | 小説(パラレル)
 
「そもそも自分は、人の上に立つのが向いていません」
 
「ならば、何に向いていると?」
 
教え子の独白を聞くなり、タリウスはピクリと眉をひそめた。全身から立ち上る不愉快極まりないといったさまに、ノア=ガイルズは絶句する。
 
「士官が上に立てなくてどうする」
 
訓練生の頃ならいざ知らず、この期に及んで何を言うか。そう思ったら、無性に腹が立った。
 
「それは…」
 
「ろくに努力もせず、簡単に向いていないで片付ける奴が俺は大嫌いだ」
 
タリウスがおもむろに立ち上がる。
 
「え………?」
 
反射的に机の脇から籐鞭を取り上げると、困惑する若き教官目掛けて思い切り振り下ろした。
 
「痛っ!?」
 
暴れたら押さえこんでやろうと思ったが、ノア=ガイルズは極めて従順に罰を享受した。目の前に机があれば縁を掴み、自然と尻を高くあげてしまうのは元訓練生の性(さが)かも知れない。
 
「すみません。ジョージア先生、失言でした。取り消します」
 
「すみませんですまないことが世の中にはある。お前も重々わかっただろう」
 
「申し訳ありません」
 
乱暴に鞭を戻すと、ノア=ガイルズは下を向いて唇を噛んだ。それから程なくして、ぽつりと話し出した。
 
「きっかけは些細なことでした。部隊内の、ごく小さな違反を見逃したことが発端だったんだと思います。徐々に問題が大きくなり、そのうち少額の金がなくなるように」
 
「何の手立ても打たなかったのか」
 
「聞き取りはしましたが、もちろん金は出てこずで、仕方なく自分で補填しました。何度かそうしたことを繰り返した後、被害は隊費にも及んで、たまたま自分の財布を出しているところを見られ、告発されました」
 
ノア=ガイルズ自身にまるで悪意がないのはわかるが、突っ込み所が満載過ぎて、同情の余地がない。それが、ことのあらましを聞いたタリウスの素直な感想である。
 
「そこまでいく前に、誰かを頼れなかったのか」
 
「隊長も副長も忙しそうで、他の班の班長たちも自分より上の人ばかりで、言い出せませんでした」
 
言うまでもなく、今回の窃盗、横領事件は、部隊内の風紀の乱れ、更に言えば上の管理不足が原因だろう。そう考えると、隊長であるレックス=トラヴァースによるノアへの鉄壁な護りにも頷ける。
 
「で、お前の言うところの犯人の目星は、どうやって付けた?」
 
「一度だけ金を盗っているところを目撃したことがあります」
 
「まさかそいつを庇ったのか」
 
「病気の親族がいると言っていました。そのときが初めてだと言っていましたし、金も元通り返したので」
 
「どこまでおめでたいんだ。お前は…」
 
教え子相手に怒鳴ろうとして、はっとなる。頭上からドタンバタンと耳障りな音が聞こえたからだ。
 
「何の音だ」
 
「二階からのようです」
 
「それはわかっている」
 
そうしている間も音は鳴り続け、更に今度は部屋の外から、カツンカツンという重い音が聞こえてきた。
 
「お前は後だ、ガイルズ教官」
 
タリウスが勢い良く扉を開けると、信じがたいことにディランが杖につかまりながら廊下を歩いているのが見えた。
 
「主任?!いらっしゃったんですか」
 
「お前のほうこそここで何をしている。未だ歩ける状態ではないだろう」
 
「歩行訓練です。何やら二階が騒がしいので、様子を見てこようかと。ガイルズ教官が当直では、心もとなく思ったのですが、主任がいらっしゃるなら無用な心配でした」
 
「今のお前にも手に余るだろう。ガイルズ!」
 
「はっ!」
 
ひとまず当直を二階にやり、タリウスは負傷した部下に手を貸した。
 
「仕事熱心なのは良いが、今はきちんと休め。大人しく寝ていられないのなら、拘束するぞ」
 
子供にするように叱り付けると、ディランはすみませんと言って素直に詫びた。
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続鬼の神髄25

2025年03月17日 01時16分22秒 | 小説(パラレル)
その晩、ノア=ガイルズは自ら当直に志願した。身の潔白が証明された以上、もはやここにとどまらせる理由はないが、本人のたっての希望もあり、最後の任務として任せることにした。
 
実は、以前にも同様の申し出を受けたことがあるが、そのときには正式な教官ではないという理由で却下した。本人にしてみれば、普段聴取等で留守がちにしていることへの埋め合わせの意味合いもあったようで、随分と落胆していた。
 
結局、見かねたアドリーの取りなしによって、そのときには補佐として当直業務に当たることを許した。実際、モリーとオニールに掛かりきりになっていたときには、アドリーと共に他の予科生を締め上げるのに一役かった。
 
「失礼します。消灯点呼及び消灯完了しました」
 
「何か報告することが?」
 
タリウスは、執務机に座ったまま視線を上げた。
 
「申し訳ありません。予科生が諍いを起こし、喧嘩騒ぎに発展しました」
 
消灯点呼が済んだ後も、なにやら上階が騒がしいと思ったが、当直を任せた以上は、敢えて放っておいた。どうにも収拾がつかなければ、そのときは教官もろともこの手で地獄に送れば良い。訓練生、とりわけ予科生は、当直がもうひとりいるとは夢にも思っていないだろう。
 
「またあのふたりか」
 
「あ、いえ、確かにオニールが絡んでいますが、喧嘩の相手はナントです。些細なことで言い合いになり、ナントが罵詈雑言を浴びせ、オニールのほうは、初めは無視していたようですが、耐えきれなくなり手が出たとのことです」
 
「ナントが何を言おうが、先に手を出した時点でオニールに同情の余地はない。二人をどう始末した」
 
「規則に従い、両者共に居室で罰を与えました」
 
「オニールに手心を加えたりしていないだろうな」
 
「し、していません。なぜそのようなことを…」
 
「お前自身が納得していないようだからだ」
 
喧嘩両成敗、この鉄の掟をノア=ガイルズも熟知しているはずだが、己の心情となれば話はまた別だ。現に、先程から教え子の目は、左右に忙しく揺れている。
 
「そういうわけでは……あ、いえ。実はそうです」
 
「何が言いたい」
 
「ジョージア先生、折り入って伺いたいことがあります」
 
そこで、ノア=ガイルズは正面からこちらを見据えた。
 
「だから何だ」
 
「モリーの件です。狼事件のとき、モリーはディラン教官の指示で助けを呼びに行ったと言っていましたが、もし仮にそれが本当ではないとしたら、先生はどうしますか?」
 
「今更そんなことを蒸し返して何になる。それとも、何か知っているのか」
 
「いいえ、あくまでも仮定の話です」
 
「仮にお前が言っていることが事実なら、モリーは退校一択だ」
 
「で、でも、モリーのお陰で警護部の方に助けてもらえたわけですよね」
 
「関係ない」
 
「でも…」
 
「あの場で罪を認めたのならともかく、教官と共謀してこの俺を欺いたとなれば、当然だ」
 
「人命が懸かっていたとしても、ですか」
 
「モリーが逃亡した事実に何ら変わりはない」
 
にべもなく切り捨てると、ノア=ガイルズは、ハッとして押し黙った。
 
「だいたい、モリーが逃げ出さなくとも、馬の様子がおかしくなった時点で、例の将校二人が森へ様子を見に行った筈だ」
 
そして、どうにかして事態の収拾を図っただろう。若干、希望的観測も入っているが、今のダルトンとエヴァンズのコンビならそれが可能だろう。
 
「いいか、ガイルズ。誰が、いつ何時、どんな理由であろうと、違反者は等しく罰する」
 
「事情は一切考慮しないということですか」
 
「そういうことだ。いちいち個人の事情を汲んでみろ。結果的に平等には扱えず、かえって不満が溜まるだけだ」
 
「そうですか…。いえ、そう、ですよね」
 
ノアはこちらから視線を外すと、まるで独り言のように呟いた。
 
「ガイルズ、お前は一体何を隠している。治安部の調査と関係が………まさか、本当のところは」
 
「違います。下賜金を、隊費を横領したのは、自分ではありません」
 
本当です、と食い下がる教え子に、タリウスは更に畳み掛けた。
 
「ならば、嫌疑が晴れたというのに、何故浮かない顔をしている。こんなところで油を売っている暇があったら、自分の隊に戻れば良い」
 
「もちろんそのつもりですが、少しでもお役に立てればと思いました。それに、訴追されなかったのは良いですが、それはあくまで証拠不十分だからで、無罪が証明されたわけでは…」
 
「やっていないことの証明など出来るわけがない」
 
昼間、ディランにも同じようなことを言っていたようだが、何故そこにこだわるのかまるで理解できない。タリウスは苛立ちをあらわにした。
 
「ですが、自分は犯人に心当たりが」
 
「何?」
 
思いがけない展開に、タリウスは思わず声を荒げた。しかし、当のノア=ガイルズは静かにこちらを見ているだけだ。
 
「法官殿に訴えたのか」
 
「いいえ」
 
「ならば、トラヴァース殿には?」
 
「話していません。確証がなかったので」
 
「ガイルズ、これまで俺は、あえてこの件には介入しなかった。お前の上官ではないからだ。だが、こうなった以上は聞かせろ。何故こんなことになった」
 
教え子であるノア=ガイルズが、自分が本来の当直の日に、わざわざ当直を願い出たのは、決して偶然ではないのだろう。タリウスは意を決して、ノアに向き合った。
 
 
中途半端ですみません😣💦⤵️ニが月近くこねくりまわしました。
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