序
句集名の『香田』は、作者が嫁いできて住み慣れた地名であり、
香田という地に住み慣れて木の芽和
の句から採った。美しい名で、その地が田園の広がる農業地帯に違いないであろうと思う。
耕して今日のひと日の確かなる
野菜採る喜びありて夏帽子
作業後の秋水甘し一息に
風吹けば刈田の匂い陽の匂い
鳥の声種々聞き分けて冬耕す
句集『香田』の著者井上治代さんは、愛媛大学卒業後すぐに小学校の教師となり、生涯の多くを学校で過ごしたが、退職後は、ご主人に教わって畑仕事をされている。農作業の句が勝れているのは、ご夫婦でのお仕事が楽しいからであろう。そして、農作業をしている、そのいい環境を見逃していない。「鳥の声」を「種々聞き分けて」いる。せせらぎの水であろうか。「作業後」の「秋水甘し一息に」という喜びがある。
治代さんの農作業は、戸外での生活であって、大空の下、ひろびろとした大空とともにある。
空に月地に脱穀の音しきり
空と地が切り離されていないところに、治代さんの句の良さがあって、治代さんの独自の世界がある。
小学校教師のお仕事を終えた治代さんは、今は農家の主婦なので、主婦の俳句にも多くの佳句がある。
干しものを取り込む時よ笹鳴きす
夏蓬摘み摘み歌を口ずさむ
大根の白を確かめつつ洗う
家族を詠めば、
旅立ちの子に花明かりほしいまま
春キャベツ吾子にもたせてグッドバイ
労いの言葉を夫に秋灯し
冬帽を目深にかぶる亡父遠し
母編みしひざかけ軽く花菜色
といった句があって優しい。ふるさとを詠んでは、
故郷の山の高きに春惜しむ
八幡浜
墓参り海群青に静かなり
といった風景の広がりに作者の故郷を想う抒情がやさしい。
句集『香田』の代表句は、
大洲・肱川
川岸の菜の花明かり水明かり
であろうと思うが、戸外での句がいい。大空に心を向けた句にいい句がある。
夏めくや竹しなやかに空にあり
鳴き交わし夏鳥高き青空へ
一日終え夕焼け雲へ背伸びする
大いなる空に満月浮き立ちぬ
これらの句を読むと、弘法大師の「遊心大空」という言葉を思う。人間界の俗な世界ではなくて、「大空」に心を向けなさい、という教えである。治代さんは、「遊心大空」の教えを実践されている。そういった生活俳句であり、明るくて深いところがあるのを嬉しく思う。
平成二十二年夏
高 橋 信 之
▼花冠同人には無料で著者から贈呈されますので、ご入用の方は、下の<コメント欄>にその旨をお書き込みください。(花冠発行所)
句集名の『香田』は、作者が嫁いできて住み慣れた地名であり、
香田という地に住み慣れて木の芽和
の句から採った。美しい名で、その地が田園の広がる農業地帯に違いないであろうと思う。
耕して今日のひと日の確かなる
野菜採る喜びありて夏帽子
作業後の秋水甘し一息に
風吹けば刈田の匂い陽の匂い
鳥の声種々聞き分けて冬耕す
句集『香田』の著者井上治代さんは、愛媛大学卒業後すぐに小学校の教師となり、生涯の多くを学校で過ごしたが、退職後は、ご主人に教わって畑仕事をされている。農作業の句が勝れているのは、ご夫婦でのお仕事が楽しいからであろう。そして、農作業をしている、そのいい環境を見逃していない。「鳥の声」を「種々聞き分けて」いる。せせらぎの水であろうか。「作業後」の「秋水甘し一息に」という喜びがある。
治代さんの農作業は、戸外での生活であって、大空の下、ひろびろとした大空とともにある。
空に月地に脱穀の音しきり
空と地が切り離されていないところに、治代さんの句の良さがあって、治代さんの独自の世界がある。
小学校教師のお仕事を終えた治代さんは、今は農家の主婦なので、主婦の俳句にも多くの佳句がある。
干しものを取り込む時よ笹鳴きす
夏蓬摘み摘み歌を口ずさむ
大根の白を確かめつつ洗う
家族を詠めば、
旅立ちの子に花明かりほしいまま
春キャベツ吾子にもたせてグッドバイ
労いの言葉を夫に秋灯し
冬帽を目深にかぶる亡父遠し
母編みしひざかけ軽く花菜色
といった句があって優しい。ふるさとを詠んでは、
故郷の山の高きに春惜しむ
八幡浜
墓参り海群青に静かなり
といった風景の広がりに作者の故郷を想う抒情がやさしい。
句集『香田』の代表句は、
大洲・肱川
川岸の菜の花明かり水明かり
であろうと思うが、戸外での句がいい。大空に心を向けた句にいい句がある。
夏めくや竹しなやかに空にあり
鳴き交わし夏鳥高き青空へ
一日終え夕焼け雲へ背伸びする
大いなる空に満月浮き立ちぬ
これらの句を読むと、弘法大師の「遊心大空」という言葉を思う。人間界の俗な世界ではなくて、「大空」に心を向けなさい、という教えである。治代さんは、「遊心大空」の教えを実践されている。そういった生活俳句であり、明るくて深いところがあるのを嬉しく思う。
平成二十二年夏
高 橋 信 之
▼花冠同人には無料で著者から贈呈されますので、ご入用の方は、下の<コメント欄>にその旨をお書き込みください。(花冠発行所)
読ませていただくことを楽しみにしています。
是非読ませていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
ぜひ、読ませていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
この度は、句集「香田」のご上梓おめでとうございます。
ぜひ、読ませていただきたく思います。
よろしくお願い申しあげます。
この度は、句集「香田」のご上梓おめでとう御座います。
ぜひ、勉強したく拝読させて頂きますたく、よろしくお願い申し上げます。
句集「香田」のご上梓おめでとうございます。
拝読致したくご恵送の程お願い申し上げます。
この度は、句集「香田」のご上梓おめでとう御座います。
ぜひ、拝読させて頂きたく、よろしくお願い申し上げます。
この度は 句集「香田」を上梓なさりおめでとうございます。ぜひ拝読させていただいて勉強させてくださいませ。よろしくお願いします。