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ステンレス鋼の発明史(4)

2008-02-23 09:54:09 | ステンレス
§4.2クロム鋼の研究に進む
高マンガン鋼の発明に成功したハドフィールドは引き続いて鉄べ一スニ元合金の研究を進め、1889年に「鉄とシリコンの合金について」、1890年に「アルミニウム鋼」を、さらに1892年には「鉄とクロムの合金」の研究論文を矢継ぎ早に発表した。
「鉄とクロムの合金」の論文は60ぺ一ジを超す長編であるが、前半はクロム鋼の歴史とフェロクロムの解説に割かれている。主題のクロム鋼の研究は前報までの実験方法を踏襲し、低炭素鋼に添加量ゼロから最高20%にわたってクロム量を段階的に変化させた15種の試料を調製した。

原料として良質の錬鉄を選び、フェロクロムは純分66%のものを用いたが、これは約6%の炭素を伴っていた。これらを耐火粘土製ルツボに装入して溶解したが、フェロクロムは融けにくいので、できるだけ高温で長時間保持しなければならなかった。
試験片番号としてNo.1176を付けられた試料の化学成分を表4.1に示す。

酸化ロスのために最高クロム分析値は16%台に下がり、またほとんどがクロム量の1/10以上の炭素を含むことになってしまった。
64mm角の鋼塊を29mm径の丸棒に鍛造し、一部はさらに平鋼や線に加工した。試料Mまではなんのトラブルもなく鍛造できた。試料Nは慎重に扱った結果、どうにか試験片を作ることができたが、鋼塊Oは加熱温度をいろいろ変えてもどうしても鍛造できなかった。
得られた棒と線の試料について物理的、機械的および熱的性質などを詳細に調査し、クロム量との関係を調べたり、珪素鋼やアルミニウム鋼と比較した。

主な試験項目は次のとおり。
機械的性質:硬度,引張り,曲げ,圧縮,ねじり
物理的性質:比重,磁性,比抵抗
熱的性質:変態点,融点,熱処理,溶接
その他:腐食,顕微鏡組織

これら試験のうち、変態点と融点の測定および顕微鏡組織の観察は、鉄鋼の同素変態の発見者として高名なパリの親友、オスモン[F1oris.Osmond]の全面的な協力を仰いだのであった。


出典:鈴木隆志 ステンレス鋼発明史 アグネ技術センター