「人はなぜストーカーになるのか/岩下久美子/文春文庫PLUS」
ストーカーは、とにかく対象物に向かって突き進むことしかできない。いったん引いてみるとか、何もしないでおくということができない。
あらゆる手段を講じて相手と過剰に関わり合いを持ちたがり、相手から反応を得るためには何でもするといっても過言ではない。それが結局は相手に嫌われることになる。
自分の衝動のままに、相手にとってマイナスになるアクションを行動に移してしまうのが、ストーカーの哀しさだろう。
相手に嫌われることばかりを執拗に繰り返し行えば、当然ながら嫌われる。
それでも、嫌われた相手に自分の感情や欲求を押し付けていくことを止めない。そして、相手を自分の意のままに支配できないとわかると、暴挙に出る。相手に愛されたいと心の中で切実に望みながらも、相手につきまい、精神的に追い詰めていくことしかできない。
好きなのに嫌われる行動をとってしまう。このジレンマが、さらにストーカーを負の方向へと駆り立てる原動力となっていく。