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ファミリーストーリー

平凡な一庶民のファミリーヒストリーを架空の私小説として紹介し、昭和を生きた青春の回想です。

私小説 続・ファミリーストーリー

2025-05-03 10:46:20 | 小説

私小説  続・ファミリーストーリー(青春自衛隊)
(登場人物・場所などはすべて架空です)

画像はCopilot による架空の合成イメージ)

 

あらすじ(ファミリーストーリーから):

 向田久美(むこうだ くみ、75歳)の孫(向田淳平:むこうだ じゅんぺい、19歳)は、ふと立ち寄った金座古書店(きんざ こしょてん)で何気なく買った古い統計学の本の著者(三名金作:さんな きんさく)が、お祖母ちゃん(久美)の父であり、淳平の曽祖父(ひいじいちゃん)であることを知った。
そして、
淳平は自分のヒストリーに興味を覚え、久美お祖母ちゃんの語る曽祖父が生きた昭和の平凡な一庶民の青春を知ることになった。久美お祖母ちゃんがアトリエと呼ぶ台所の食器棚兼書棚には“永久保存”の札の貼ってある父の著書が数冊あった。

ある休日に奈々子が、
 “お義母さんの永久保存の札が貼ってある本の中に、こんな革張りの手帳があったよ・・”と言って、久美の前に差し出した。
いきなり、久美がその手帳をひったくった・・、

奈々子

 あっ・・!

と驚いたような奈々子の表情に、久美はハットしたように、

 あっ・・ごめんね・・、お父さんの秘蔵版なんよ・・。

奈々子
 お義母さんにも秘密があるんじゃね?

久美
 そりゃ~、お互いにあるじゃろう・・

奈々子
 私には秘密なんか・・ないけんね・・

 

久美
 良彦(奈々子の夫)に知られたくないこともあるじゃろう・・?

奈々子
 そりゃ・・

そこへ、2階から淳平が降りてきて、“なにゆうとん・・”、

久美
 ひいじいちゃんの“手帳”が出てきたんよ・・、

淳平
 大学の図書館で調べたら、“三名金作”の本が何冊かあったで・・、パラパラと見ただけじゃけど・・「統計で最も美しい分布はNormal Distribution(正規分布)」だと強調しとったわ。

久美
 統計学に、ちょっとは興味あるん?

淳平
 まだ先のことは、ようわからんわ・・

と言って、2階の自分の部屋に上がっていった。

入れ替わるように、父である良彦が2階から降りてきて、
 夏休みが長くとれそうじゃわ

奈々子
 じゃ~、奈良の大峰山に行かない・・?

良彦
 俺の車で行くか・・、

奈々子
 私は登れんのじゃろ・・?

良彦
 降りてくるまで、洞川(どろがわ)を観光しときんさい・・

奈々子
 え~、一人になるん・・、

良彦
 2~3時間で降りてくるから・・ええじゃろ・・?

奈々子
 わかったわ・・

と言って、奈々子は少しむくれたが、“お義母さんも行けばいいのに・・”

久美
 何言うとんね・・私にそんな元気があるわけないじゃろ・・

奈々子
 仕方ないな・・、淳平達が登っている間・・お土産さがしでもするわ。

そこで、久美の父がのこした日記をもとに、「昭和という名の青春」を生きた“三名金作”の人生を「私小説 青春自衛隊」として紹介しよう。

次回に続く(青春自衛隊)

 

 


ファミリーストーリー 終章

2025-04-13 10:21:21 | 小説

終章

 向田久美は話し終え、食器棚兼書棚に本を仕舞うと、テーブルの上を片付けだした。そろそろ、息子夫婦が帰って来る頃だ、一人息子は“向田良彦(むこうだ よしひこ)”で、その嫁は“奈々子(ななこ)”、久美の夫は亡くなっているので、向田家のファミリーは4人である。夕刻、息子夫婦が帰って来た。台所から香ばしいカレーの匂いがしている。
 奈々子が、お義母さん・・、夕食はカレーライス・・?
と言いながら、台所にやって来た。息子夫婦は共働きなので、夕飯は久美が用意することが多かった。

久美
 カキフライのカレーライスにしたよ・・

奈々子
 お義母さんのカキカレーはおいしいけんね・・

久美
 そりゃ~専門店で買ったカキじゃけんね・・

そして、家族4人のささやかな夕食がはじまって、
淳平が、 
 お父さん・・、“三名金作“ってゆう人・・知っとる・・?

良彦
 お祖母ちゃんのお父さんじゃが。

淳平
 どんな人じゃったん・・

良彦
 どんな人って、ゆうてもナ~、そう言えば一緒に奈良の女人禁の大峰山に連れて行ってもろうたわ・・、
 吉野の何とかゆうお寺に金作祖父ちゃんのお父さんの “大先達 明光院 三名象作(だいせんだつ めいこういん さんな ぞうさく)”の銘の入った無垢材の碑版があったな・・

淳平
 へー・・奈良か・・行ってみたいな・・

奈々子
 今時・・女人禁制じゃって・・興味あるわ・・、夏休みに皆でいかん・・?

久美
 そうじゃね・・、皆で行ってきんさい・・


(画像は女人禁制の山上ヶ岳 登山口)

向田久美は、これからも向田家のファミリー・ヒストリーが続くと思った。“奈々子”が言った。
 次のゴミの日に古新聞や読まない雑誌をゴミで出すけんね・・
久美は食器棚兼書棚の左奥に目をやって、その本を確かめると・・、
 そうじゃね・・、けど、永久保存の札の貼ってある本は捨てんといてよ。

と言った。
春近しといえど未だ外気は冷え冷えとしていたが、夜空には冷たく輝く星空が向田家の温かい食卓を見下ろしているかのようであった、向田久美は心の中で小さく“おとうさん・・”と言った(完)。

 


ファミリーストーリー 第7章

2025-04-10 10:13:03 | 小説

第7章 昭和と言う名の青春(自衛隊卒業編)

 僕は防衛庁(当時)の技官になるか・・、あるいは、民間病院の招聘に応じるか・・、自衛隊を卒業する日の近いことを感じていた。もう自衛隊を卒業し、自衛隊で得た数々の知識や技術や技能をもって社会に貢献すべき時が来たのではないかと思うようになった。

 すでに、自衛隊を退職し民間病院の経営に携わっている先輩に相談すると、すぐに来いと言うので、訪ねてみると、先輩が”〇〇病院の臨床検査科長をやってくれないか・・”と言い、既に、病院理事長や病院長や医局長などが集まっており、医師と同等の待遇での招聘だと言う・・、年収は自衛隊の2倍以上である。僕にはこの他にもいくつかの医療機関からの誘いもあった。

 この時代になって、医療における臨床検査による生化学的・理科学的な検査の重要性が高まりつつあり、特に、心電図や脳波など医用電子工学が先端的な技術として注目されるようになっていた。在隊中はいくら望んでも通信隊への配属希望は叶えられず、高校の同窓生で1年早く入隊した無線通信・技術士の有資格者達は、陸上自衛隊だけでなく航空自衛隊や海上自衛隊や管区警察からもスカウトされ、自衛隊や警察の重要な無線通信・技術の幹部自衛官(警察官)として重要な要職にあった。 

 天(運命)は何故に僕を医学・医療の道を用意したのか・・、某国立大学公衆衛生学教室の客員となり、医学統計手法及びその技術としてのコンピュータ・プログラミングの開発に取組んだ。
 そして、統計手法・技術に関する著書を上梓するなど・・、不遇の時代から一転して運が開けだしたような感じだった。

 宇宙開発の時代に入り、日本は地球観測のために“もも1号” を打ち上げた。宇宙衛星から送られてくる画像データを解析するコンピュータ・プラグラムを開発し、大気や海洋汚染の調査に当たったり、臨床検査の自動化やコンピューター・システムの開発など・・・、僕にとって仕事は趣味の一部のようであった。

  人生は「運」のような気がしてならない・・、「運」は突然やって来るので、用意しておかないと、その「運」に気が付かないかも知れない・・、幸い、僕は長い下済み生活の中で「運」を掴む用意が出来ていたのだろうか? 平凡な名もなき一庶民にも「運」は、それなりに訪れるのだろうと最晩年の今・・僕はそう思っている。

次回(終章)に続く!


ファミリーストーリー 第6章

2025-04-06 09:39:52 | 小説

第6章 昭和と言う名の青春(恋愛編)

 本隊である駐屯地に帰隊すると、すぐに次の地区病院への派遣が待っていた。しかし、時代は高度成長時代を迎えようとしていた。そう~、情報化時代の幕開けで、当時の医学・医療の現場では生化学的な検査が主流であったが、ここにきて医用電子機器による診断・治療の目覚ましい発展が見られる様になった。

例えば、心電図や脳波検査であるが、これらの電子機器に精通した技術者は少なく、心電図の判読でさえ限られた専門医によってなされていた。電気・無線技術と衛生・臨床検査に精通した僕は、自衛隊地区病院を転々してさ迷っていたが、時代のほうから僕を迎えに来たのだ。

 ある海上自衛隊の基地内にある赤レンガの瀟洒な旧海軍の将校会館でレーダ探知による判別方法(ROC:Receiver Operating Characteristic)の研修会があった。飛行機を発見するレーダー・システムの性能評価分析である。本来、低空飛行をしている飛行機が認識できるかどうかを評価するために開発されたもので、無線技術的には信号処理の一つで「雑音」のなかに埋もれている「信号」を検出する能力や性能を評価する方法で、第2次大戦中にアメリカで開発された信号処理の一つであった。

 1週間の研究中、基地内に宿泊して、旧将校会館で研修を受け、1階のレストランで食事していたら、隊員の一人が”三名班長さん・・、班長さんの食事だけがチョット違いますよ、気づいてますか?”と言う、そう・・僕の食事にだけに小皿が一つ多いのだ、ラーメンはチャーシュが一枚多い時もあったりしたようだ。それから、ウエイトレスの視線が気になり出すと、気のせいか何か熱いような視線を意識するようになりソワソワしだした僕を見て、”・・・、思い切って声を掛けたら”・・などと冷やかされたので、ある日、会計の時に、思い切って”お茶でもいかがですか・・?”と聞いたら、小さく頷いてくれた彼女の頬が少し赤くなったようで、それよりも僕の心拍のほうが高鳴っていた。

 研修最後の日、僕は彼女と人生で初めてのデートをしたが、かなりギコチなかっただろうネ・・、一人で洋映画のシドチャーリッシやフレッドアステアのミュージカル映画の話ばかりしていたが、彼女はニコニコと聞いており、そんな楽しいデートはアットいうまで、彼女は九州から出てきて海上自衛官の幹部である兄夫婦のもとにいることなどが分かった。帰隊後、僕はせっせとラブレターを書いた・・、

 「僕は自然の風と澄んだ空と海と太陽が降り注ぐ光のもとでオレンジ色の柔らかな香り漂わせている貴女が忘れられません・・」

・・などと。

 ある日の彼女からの手紙には「お祖母さんの介護で九州に帰らなくてはなりません・・」とあった。別れの日、見送る夜汽車は白い蒸気を吐きながら夜霧の中に赤いランプの残影と共に消えっていった・・遠い汽笛に薄れる影に僕は一人プラットホームに佇み、さようなら・・さようなら・・彼女は瞼の奥に 悲しく消えていった・・永遠に。

 そのころ、 航空医学、スポーツ体育医学などでの研究で心電図・脳波計測が必要とされ、その検査と判読技術者の養成が急務であり、僕が最適任候補とされた。長い長い下積みの暗闇に一条の光が差し込んだ様だった。
 東京のTV技術者養成所時代に知り会ったメーカーの人脈や各地区病院の医官などの推挙を得て、医科系大学やメーカーなどで心電図・脳波機器の開発や自動診断の研究などに携わることになった。水を得た魚の様に僕は生き生きと研究に没頭した。身体体表面上における電位分布を明らかにすると共に、心電図のベクトル的解析などを行い、心電図自動診断への足掛かりとし、コンピュータによる計量診断学へ挑戦するなど、やりたいことは一杯あったが、自衛隊員としての訓練を疎かには出来ず、国家公務員試験を受け防衛庁(当時)の技官になったらどうかと言うアドバイスもあったが、運命(天)は僕にずいぶんと大きな遠回りをさせながら別の道を用意していた。

次回に続く!


ファミリーストーリー 第5章

2025-03-30 09:09:39 | 小説

第5章 昭和と言う名の青春(東北編)

 その寒漁村の家にはトイレがなかった。用足しは目の前の海辺で済ますのが普通であった。僕達(保健所の職員達)は、公衆トイレを作ったりして、漁村民の衛生意識の向上改善に取り組んだり、理学的検査(血圧など)を行ったり、また、保健婦(師)は栄養指導などを行ったりして、生活環境の改善に取り組んだ。

 ある夏の日、海浜での水難救助訓練で僕達は救助テントを張り訓練に参加していた。夕暮れに僕の救護テントに17歳の少女が来た、少女の足に深く刺さったウニの棘を小切開して抜いてやったお礼に、その土地のおもてなしの風習で風呂(五右衛門)に入りに来いと言う・・、満天の星空と潮騒を聞きながら甲斐甲斐しく薪をくべる少女が湯上りの僕の裸体を拭きながら、開けた浴衣の紐を解くと健康的な小麦色の肌と未だ固そうな形の良い乳房とよく引き締まったヒップから太もものキレイなラインが露わになり、ジーと僕を見つめる野性的な黒い瞳がとても魅力的だった。

(画像は三島由紀夫原作の映画「潮騒」(主演:青山京子)の一シーンを引用)

***
三島由紀夫原作の映画「潮騒」(主演:青山京子)を彷彿とさせる昔日の青春の実体験で、ただ、それだけだったけど・・。
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  寒漁村での予定の業務も終えたある夏の日・・友達とこの地方で秘湯と言われている温泉地に出かけた。友人と露天温泉に浸かっていると清流からカジカの鳴き声、月明かりに村娘達の白い裸体が次々に湯煙の先にうごめき僕たちの方に近づいて来る。


(画像はイメージです)

 慌てる僕たち、娘らのカラカウ笑い声を背に聞きながら、近くの土産店に入り若いお姉さんにエロ写真を見たいと言うと、”あなた達興奮しても知らないから・・”と言って畳敷きの上がり縁にエロ写真を広げて呉れた。品定めをしていると”はあ・・はあ” とお姉さんの息遣いが荒く畳にペッタンコ・・・??

 翌朝、友達が帰り一人で昨日のお店に入ると、お姉さんがダムを案内すると言って・・、ダムの遊歩道から外れた小屋に入ると僕を藁の中に沈めた。お姉さんの仄かに甘い桃の匂いの中で・・”キット又来てね・・約束”と言って別れたがお姉さんとの約束を果すことはなかった。

次回に続く!