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ファミリーストーリー

平凡な一庶民のファミリーヒストリーを架空の私小説として紹介し、昭和を生きた青春の回想です。

新・ファミリーストーリー(4)

2025-07-06 07:45:51 | 小説

私小説 新・ファミリーストーリー(4)
(病気をつきとめよ!)

(登場人物・場所などはすべて架空です)

 

病気をつきとめよ(第3話:検便)

 昭和生まれの人なら経験があると思うが、小学生の頃、定期的に寄生卵検査があって学校にマッチ箱に”便”を入れて持って行った・・その日は教室が臭かった覚えがある。各県に「寄生虫予防協会」があって、児童・生徒の寄生虫卵の検査が行われていた。それほど寄生虫感染が多かったのは、当時の農業肥料として”糞尿”が使われていたからで、寄生虫症として最も多かったのが ”回虫” や ”12指腸虫” などであり、国民病と言われたほどである。もちろん大人だって同じで、川魚(鮎など)を生食する人に多かったのが“横川吸虫”や “肝吸虫” などであった。また、子供では “蟯虫(ぎょう虫)” が多く、最近(2015年まで)“蟯虫卵”検査が学校で行われていた。


(蟯虫卵)

 当時の環境衛生事情は ”不潔” だったけど、”清潔” になるにつれてアトピー性疾患、例えば、スギ花粉症などが増えて来た。すなわち、免疫抗体である血中IgE が高くなっってアレルギー性疾患が寄生虫(回虫)などにとって代わった様だ。

ある時、 
 眼科の医師から僕(三名金作)にすぐ来てほしいとの連絡があった・・、駆けとけると患者の左目の写真を見せられ・・、

眼科医:
 左目の眼球が真っ白で・・、ブドウ膜炎にかかっています。これからステロイドを眼球に注射しようと思いますが、原因が何かを知りたいので血液検査を至急してお願いしたいので、ご相談方々来てもらいました。

三名(僕):
 何かの抗体検査でしょうか・・?

眼科医:
 一応、通常の血液検査に”HIV” や ”梅毒”などの検査に加えて、「トキソプラウマ抗体」を大至急お願いしたいのですが如何でしょうか?

三名(僕):
 一般のルーチン検査や ”HIV、梅毒” なら1時間ほどで結果を出せますが、「トキソプラズマ抗体」は、どんなに急いでも2日はかかります。

眼科医:
 患者には、しばらく通院してもらう必要がありますので、なるべく早く検査結果が分かれば助かります。


 この患者は、数日前に動物園に行ったとき、野良ネコが多くいて砂埃がしていたそうで、翌日、風邪の様な症状があって、夜中に左目に違和感を感じ目を開けたら周りが真っ白だったと言う。 そして、当院の眼科に駆け付けたと言うことらしい。

 翌々日、検査結果が出た、眼科医の診立ての通り「トキソプラズマ抗体」だけが異常に高く、「トキソプラズマによるブドウ膜炎」と診断された。

 ここで、この寄生虫 “トキソプラズ症”の話題のペーパー(論文)を以下に紹介しておこ。
***
Fatal attraction in rats infected with Toxoplasma gondii.(M. Berdoy, etc.)

直訳すると、
「Toxoplasma gondiiに感染したラットの致死的誘引(危険な魅力)」

一部を紹介すると、
 Here we report that, although rats have evolved anti-predator avoidance of areas with signs of cat presen
 T. gondii's manipulation appears to alter the rat's perception of cat predation risk, in some cases turning
    their innate aversion into an imprudent attraction.

つまり、
  ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。

要するに、
  ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。どう言う事かって・・、ネズミに寄生したトキソプラズマはシストのまま・・・、成虫になるには猫に感染しなければならない。そこで、トキソプラズマは猫を恐れなくコントロールするって訳だ。そう・・、トキソプラズマに支配されたネズミは猫に恋して、その身を捧げる危険な情事に落ち入るのだ。

  多くの人間もトキソプラズマ抗体を持っているようで、特に、"あおり運転"など、ハンドルを握ると人格が変わってヤバクなる人にトキソプラズマ感染者が多いと言う「潜在性トキソプラズマ症の被験者における交通事故のリスク増加:遡及的症例対照試験」がある。

「注意」:あくまでも一論文の知見でり、この患者の場合、砂埃の中に野良猫の糞便が混じっていて、偶然、この患者の左目に入ったのかも知れない、多くのブドウ膜炎は原因不明のようである。ペットとして飼っている猫のすべてが危険と言うわけではない。

次回に続く(第4話:LE 細胞)


新・ファミリーストーリー(3)

2025-06-28 09:35:41 | 小説

私小説 新・ファミリーストーリー(3)
病気をつきとめよ!)

登場人物・場所などはすべて架空です)

 

病気をつきとめよ(第  2話:尿沈査)

 尿検査ににおいて、異常が出たら尿沈渣(尿中に含まれる成分、白血球や赤血球など)の検査をおこなうことが推奨される。しかし、検査は医師の指示のもとでしか行うことが出来ないなで、尿沈査の指示がなければ定性検査(pH、尿たんぱく、尿糖など)の結果だけを医師に報告し、その結果を見て医師が必要と思ったら、あらためて尿沈査の追加検査がでるので、その間、外来患者は待たされることになる。患者のことを考えたら、尿検査で異常が出たら、医師の指示をまたず尿沈査の検査をやったらどうかと思った。

 そこで、医局会議の場で検査スタッフの判断で尿沈査の検査が出来るように諮ったら、“それは良いことだ・・”との了解が得られた。

 こんな事があった、

 スタッフ:

 この女性患者の尿沈渣のですが、白血球が沢山見られます・・・、尿路感染症でしょうか・・?

三名(僕):
ちょっと見せて下さい。

・・と言って、顕微鏡を覗くと、確かに白血球らしきものが沢山みられた、前から尿路感染症として抗生剤を飲んでいたが、一向に良くならないらしい・・とのことであった。

三名(僕):
 これは白血球ではないようですね・・、”膣トリコモナス” ですので、この患者さんは婦人科で診てもらうよう、看護婦(師)に伝えて下さい。

 “膣トリコモナス” が顕微鏡下で活発に動いていれば、白血球と簡単に区別出来るが、動いていなければ、白血球とほとんど区別出来ない。しかし、経験を積むと、白血球との区別がつくようになるが難しい場合も多い。抗生剤が聞かないで女性なら“膣トリコモナス”を疑ってみるべきだと思った。


(膣トリコモナスのイメージ画像、Web site より引用)

次回に続く(第3話:検便)

 

 


新・ファミリーストーリー(2)

2025-06-26 09:37:01 | 小説

私小説 新・ファミリーストーリー(2)
(病気をつきとめよ!)
(登場人物・場所などはすべて架空です)


(Web site より引用:免疫細胞)

病気をつきとめよ(第1話:検尿)
 僕(三名金作)が自衛隊を卒業(退官)し、初めて務めた民間病院には衛生検査技師の資格者は数人であり、その有資格者も医師の証明による申請だけでの免許であり、検査は「臨床検査提要(金原出版)」(臨床検査技師のバイブル的な名著である)を見ながら検査をおこなっていた。自衛隊の衛生学校や地区病院などで臨床検査を本格的に学び経験したきた僕は、検査室のスタッフの指導から始める必要があった。また、病院長からも検査スタッフの教育を依頼されていた。

その一例だが、
 今でも外来・入院患者の多くは、受診時に採尿して尿検査を行うが、それほど検尿は健康のバロメータでもある。ある時、僕は検査スタッフが行う検尿検査を見ていた。

 当時の検尿(pH、尿たんぱく、尿糖など)は採尿した検体(尿)を試験管に採るり、例えば、”尿たんぱく” なら試薬(ズルフォサリチルサン)を入れて尿の混濁の強さから「-, +, ++, +++」として報告する。

担当のスタッフも尿検査をルーチン通りに行い、なんの疑いもなく「+++」と記した。

それを見ていた僕はスタッフに言った、「その試験管の尿をブンゼンで温めてみて・・」、スタッフは僕の言う通り試験管を火にかざし、温めると白濁が”さあ~” と消えた。

三名(僕):
 尿蛋白が陽性の場合は、必ず、今のように火であぶって確認して下さい。

スタッフ:
 どうして強陽性の白濁が消えたのでしょうか・・?

三名(僕): 
 「BJP (ベンスジョーンズ蛋白)」だと思うので「多発性骨髄腫」の疑いがあります、その様に担当医師に報告して下さい。

 この様に、僕は検査スタッフのルーチンを確認することから始めた。スタッフには「医師と共同で「病気をつきとめる」のが ”コ・メディカルである検査技師の役割だ・・」 と言った・・が、それは自衛隊の衛生学校で教わったことにすぎない。

***
現在は尿試験紙法だから、BJPは見つけにくいが、試薬(ズルフォサリチルサン)で陰性なら「尿たんぱく陰性」と言える。
***

次回に続く(第2話:尿沈査)

 


新・ファミリーストーリー

2025-06-25 09:35:26 | 小説

私小説 新・ファミリーストーリー
(病気をつきとめよ!)

(登場人物・場所などはすべて架空です)


(Web site より引用:免疫細胞)

 

あらすじ(ファミリーストーリーから):

 向田久美(むこうだ くみ、75歳)の孫(向田淳平:むこうだ じゅんぺい、19歳)は、ふと立ち寄った金座古書店(きんざ こしょてん)で何気なく買った古い統計学の本の著者(三名金作:さんな きんさく)が、お祖母ちゃん(久美)の父であり、淳平の曽祖父(ひいじいちゃん)であることを知った。

(イメージした合成画像)

 そして、淳平は自分のヒストリーに興味を覚え、久美お祖母ちゃんの語る曽祖父が生きた昭和の平凡な一庶民の青春を知ることになった。久美お祖母ちゃんがアトリエと呼ぶ台所の食器棚兼書棚には“永久保存”の札の貼ってある父の著書が数冊あり、その中に父の日記である革張りの手帳があった。そこには、はからずも臨床検査技師として生きた父の生(本音)が書かれていた。

 昭和30年ころには、各県の衛生検査研究所で衛生検査を教えており、衛生検査技師(えいせいけんさぎし、英: Public Health Laboratory Technologist)という国家資格ではなく、病院などの医療機関などにおいて医師の指示と指導のもとで種々の検査を行っていた。衛生検査の資質など関係なく、誰れも衛生検査が出来たのである。
 向田久美の父である三名金作は自衛隊の衛生学校で衛生・臨床検査を学び、各地の自衛隊地区病院で研鑽と経験をつんでいた。
 自衛隊衛生学校は明治時代から続く歴史ある衛生学校であり、三名金作の在学時には「金原 節三(きんばら せつぞう、1901年11月3日~1976年10月29日」が日本陸軍軍医から陸上自衛隊医官となり第三代陸上幕僚監部衛生監陸将がいた。
 

***
2005年5月2日、「臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)」が公布され(平成18年4月1日施行)、新規の衛生検査技師免許は廃止されることとなり、法律名称は「臨床検査技師等に関する法律」に変更された。臨床検査技師(以下、MTと略す)は、病院などの医療機関において種々の臨床検査を行う技術者である。日本においては、臨床検査技師等に関する法律により規定される国家資格である。
***

 次回以降にに紹介する、「病気をつきとめよ」は、向田久美の父である”三名金作”の残した日記を私小説風に編集したものである。

次回に続く(病気をつきおめよ 第1話)


 

 


青春自衛隊 その12

2025-06-14 10:12:37 | 小説

続・ファミリーストーリー(青春自衛隊 その12)
(登場人物・場所などはすべて架空です)


(Web site より引用)

青春時自衛隊(終わり)
 向田久美は父の革張りの日記から、父が無線通信士・技術士、電気技術者、情報処理技術者などの国家資格を持ちながら、自衛隊では衛生・臨床検査、食品検査などに携わっていたことを知った。

  久美が父の日記から、母との馴れ初めを読み終えたとき、玄関先が騒々しくなった。孫の”淳平” らが奈良の大峰山から帰って来たのだろう・・、父の日記を閉じ、食器棚兼書棚の奥にしまった。

 リビングのドアが勢いよく開いて、孫の”淳平”が入って来た。

淳平:
 おばあちゃん、ただいま・・・、

久美
 お帰り・・、楽しかったかい・・?

続いて、嫁の奈々子が入って来た。

奈々子
 お義母さん“今、帰りました・・、留守中 変わりなかった・・?”

最後に、息子の”良彦”が入って来た。

良彦
 ただいま、やれやれ・・疲れたな・・。

久美
 みんな疲れたじゃろう・・、冷たい飲み物を用意するから・・着替えておいで、アイスコーヒーにするかい・・?

奈々子
 私が淹れるけんね・・
久美
 なにゆうとん・・あんたも疲れたじゃろう・・私が淹れるよ・・

 皆が自分たちの2階の部屋に行って、部屋着に着替えてリビングに降りて来た。賑やかになったリビングで、皆がアイスコーヒーを飲みだした。

最初に、孫の”淳平”が、

淳平
 お祖母ちゃんの淹れたコーヒーは、“うめーなー”

良彦も奈々子も“おいしい・・”と言った。

久美
 ところで、山開き早々の大峰山はどうじゃった・・?

淳平
 麓の旅館街は登山客の講の団体で賑わとったよ・・女人禁制だらか男ばかりじゃった・・。

奈々子
 旅館の人や土産店の人達に本音を聞いたけど・・、女人禁制を解いて欲しいって言っとったわ・・、女人禁制を守っているのはお寺だけじゃけん・・。

良彦
 まあ・・そんなところじゃな、それより”淳平”が「西の覗き」を体験した話をしたら・・どうだ。

淳平
 山頂の「表行場」の崖で逆さまに吊るされたんじゃ・・、命綱を体に縛っているけど、先人が“親孝行するか・・?”って問うから、「はい! 」と答えたけど、その瞬間・・ズルっと落とされビックリしたら、先人が崖の観音像? を拝めと言うけど・・怖かったので目を閉じていたのようわからんかったけど手を合わせたら・・引き上げてくれたよ。

良彦
 親孝行するって誓ったんじゃな・・。

奈々子
 さあ~、どうじゃろう・・?

久美
 大阪の商人の息子達は一度は経験させられるらしいけんね?

良彦
 それより、吉野へ向かう途中で立ち寄った “ ( 和歌山県田辺市龍神村殿原 )の慰霊碑" のいわれにジーンと来るものがあったな。

***
その話は次のような内容であった。

昭和20年6月1日、458機のB29が大阪を大空襲し多くの市民が犠牲に、日本軍の高射砲砲撃で被弾した1機が大峰山(山上ヶ岳)に墜落・・、生き延びた3名も捕らえられるも亡くなった。

生存者2名は龍神村で捕虜となり、連行途中で一部村民から石を投げられるなどしたが、戦地の息子を思いお握りを差し出す老婆もいたとか。

敵兵の死者にも関わらず丁寧に埋葬し十字架を建て弔ったのは終戦前の6月9日のことであったと言い、今も米兵の慰霊が毎年5月5日に行われているそうだ。
***


(YouTube:仮置零士作品より引用)

  久美は息子の良彦がこの話で“胸が熱くなった・・”と言うのを聞いて良彦も”歳”をとったんじゃな・・と思った。

  向田久美は、皆の話を聞きながら・・、その様な話を久美が幼いころに父から何度か聞いた覚えがあった。平凡だけど、この小さな庶民の幸せが続くことを願いながら、アイスコーヒーを飲んだ(完)

次回は「新・ファミリーストリー(病気を突き止めよ)編」として、臨床検査で経験した数々の病院での出来事を私小説として紹介する予定です。