前回は今回の東北関東地震によりなぜ浦安市の大規模な液状化が発生したかについて
考察した。
今回は震度5強を観測した久喜市が造成して、分譲した戸建て住宅が浦安市と同様の
液状化現象が発生して住宅の傾斜・沈下や下水管の被害が多く発生していると最近
報道で知った。
この結果、現在は分譲地を購入した市民と土地を造成・分譲した市との間で補償問題に
ついて議論されているが、市の見解としては今回の大地震による液状化による住宅被害は
不可抗力であり、住宅の復旧については「個人で対応してもらう」との発表である。
この市の発表に対し、不可抗力、つまり市側に全く責任はありませんとの態度に対して
私の意見を述べさせていただく。
今回の分譲地は昔、湿地帯であった所を盛土造成した所なのである。湿地帯と言う事は
地下水位が非常に浅い事は誰もが理解できるであろう。
次に、盛土造成に使用した土は一般的には粘性土を使用しない為、砂質土を使用した事が
想像できる。
この2つの条件がそろえば、明らかに液状化しやすい地盤と地盤専門としては判断できる
のである。
これに対し市側は地盤として十分な地耐力があると説明しているが、そもそも地耐力とは
静的な支持力の事であり、砂材料を盛土材として使用すれば地耐力は確かに(戸建て住宅
の重量はそれほど大きくない為)確保できるであろう。
しかしながら、地盤の強度には静的支持力の他に動的支持力である液状化に対する抵抗力
に対しては何も触れていないのです。
ここに一つ大きな問題があるのです。もうすでに何年か前から「宅地建物取引」に於いて
情報の開示が義務付けられたのです。具体的には土地に関しては土壌汚染の有無は
勿論の事、地盤状況、つまりは昔は対象の土地が何に利用されていたか。
●地層構成と地下水位はどうなっているか?
●地盤の強度はどれくらいあるのか?
等の売り手側の知り得た情報を売り手(市)が買い手(購入した市民)対して
十分説明する必要があったのです。これらの情報が今回購入された市民の方々に
正確に伝わっていれば何割かの方々は購入していなかったと思われる。
購入しようとする土地がいくら周辺環境が良くても昔湿地帯であったと聞いたら
個人的にはその土地は購入しません。
このような問題を何度も経験しているからです。具体的な話をしましょう。
20年ほど前、某大手の住宅メーカーが昔、田んぼであった所を大規模開発をして
分譲住宅を販売したのですが、販売してから5年くらいして各住宅が沈下や傾きが
生じました。その後住宅を購入した住民と住宅を販売したメーカーとの間にトラブルが
起きました。
住宅メーカーとしては、この開発地に超軟弱地盤が存在している事が分かっているにも
係わらず、なにも地盤改良等の対策もせずに、販売したのですから、最終的には
住民に対して無償で修復しました。その当時の情報開示の義務については不明ですが
このような例がある事を知って頂きたいと思います。
最後に最近あるブログを見て液状化を起こした所は地盤が沈下して地盤が締まり
もう液状化しないとの大変誤りのある記事を見ました。
これはまったくの誤りで、液状化を起こした場所はまったく締まる訳も無く逆に再液状化を
起こす危険性を含んでいるのです。
このような事象は今まで何度も起こっています。従って今回液状化により傾斜した住宅を
単なるジャッキアップで住宅を水平にしても抜本的な修復になっていない事を
敢えて書かせて頂きました。
PS,液状化現象に大変ご興味をお持ちの方が多いと実感しております。この一両日で
アクセスが大変多くなっております。地震に関したことで何かお困りの方がいらしたら
(技術的な事で)コメント欄にご質問頂ければ私の知りうる範囲で出来る限りお役に
立ちたいと思いますのでご遠慮なさらずご質問下さい。