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新米親父土木建築コンサル社長のつぶやき

50代にして会社を起業した
土木建築コンサルタントの社長。
専門分野である環境・プラント調査等
会社経営の苦労等。

東北関東地震に於ける埼玉県久喜市の液状化現象による住宅被害についての考察

2011-03-29 18:58:19 | 日記

前回は今回の東北関東地震によりなぜ浦安市の大規模な液状化が発生したかについて
考察した。
今回は震度5強を観測した久喜市が造成して、分譲した戸建て住宅が浦安市と同様の
液状化現象が発生して住宅の傾斜・沈下や下水管の被害が多く発生していると最近
報道で知った。
この結果、現在は分譲地を購入した市民と土地を造成・分譲した市との間で補償問題に
ついて議論されているが、市の見解としては今回の大地震による液状化による住宅被害は
不可抗力であり、住宅の復旧については「個人で対応してもらう」との発表である。
この市の発表に対し、不可抗力、つまり市側に全く責任はありませんとの態度に対して
私の意見を述べさせていただく。

今回の分譲地は昔、湿地帯であった所を盛土造成した所なのである。湿地帯と言う事は
地下水位が非常に浅い事は誰もが理解できるであろう。
次に、盛土造成に使用した土は一般的には粘性土を使用しない為、砂質土を使用した事が
想像できる。
この2つの条件がそろえば、明らかに液状化しやすい地盤と地盤専門としては判断できる
のである。

これに対し市側は地盤として十分な地耐力があると説明しているが、そもそも地耐力とは
静的な支持力の事であり、砂材料を盛土材として使用すれば地耐力は確かに(戸建て住宅
の重量はそれほど大きくない為)確保できるであろう。
しかしながら、地盤の強度には静的支持力の他に動的支持力である液状化に対する抵抗力
に対しては何も触れていないのです。

ここに一つ大きな問題があるのです。もうすでに何年か前から「宅地建物取引」に於いて
情報の開示が義務付けられたのです。具体的には土地に関しては土壌汚染の有無は
勿論の事、地盤状況、つまりは昔は対象の土地が何に利用されていたか。
●地層構成と地下水位はどうなっているか?
●地盤の強度はどれくらいあるのか?
等の売り手側の知り得た情報を売り手(市)が買い手(購入した市民)対して
十分説明する必要があったのです。これらの情報が今回購入された市民の方々に
正確に伝わっていれば何割かの方々は購入していなかったと思われる。

購入しようとする土地がいくら周辺環境が良くても昔湿地帯であったと聞いたら
個人的にはその土地は購入しません。
このような問題を何度も経験しているからです。具体的な話をしましょう。

20年ほど前、某大手の住宅メーカーが昔、田んぼであった所を大規模開発をして
分譲住宅を販売したのですが、販売してから5年くらいして各住宅が沈下や傾きが
生じました。その後住宅を購入した住民と住宅を販売したメーカーとの間にトラブルが
起きました。

住宅メーカーとしては、この開発地に超軟弱地盤が存在している事が分かっているにも
係わらず、なにも地盤改良等の対策もせずに、販売したのですから、最終的には
住民に対して無償で修復しました。その当時の情報開示の義務については不明ですが
このような例がある事を知って頂きたいと思います。

最後に最近あるブログを見て液状化を起こした所は地盤が沈下して地盤が締まり
もう液状化しないとの大変誤りのある記事を見ました。
これはまったくの誤りで、液状化を起こした場所はまったく締まる訳も無く逆に再液状化を
起こす危険性を含んでいるのです。

このような事象は今まで何度も起こっています。従って今回液状化により傾斜した住宅を
単なるジャッキアップで住宅を水平にしても抜本的な修復になっていない事を
敢えて書かせて頂きました。

 

PS,液状化現象に大変ご興味をお持ちの方が多いと実感しております。この一両日で
  アクセスが大変多くなっております。地震に関したことで何かお困りの方がいらしたら
  (技術的な事で)コメント欄にご質問頂ければ私の知りうる範囲で出来る限りお役に
  立ちたいと思いますのでご遠慮なさらずご質問下さい。

 


東北関東大震災における浦安市の液状化現象の考察

2011-03-28 19:09:25 | 日記

平成23年3月11日に東北関東大震災がが発生し2週間以上が経過し、発生以来東北地方の
被害状況が連日報道されている。しかしながら千葉県浦安市のほぼ4分の3の地域が大規模液状化現象が発生し、ライフラインである上下水道、ガス、電気が大打撃を受け、戸建住宅は傾斜し
マンションは基礎にかなりの隙間を生じて今なお、市民生活に
大きな影響を及ぼしていることについては、最近になってようやく報道され始めた。

このような被害はどうして起こるのか考えて見ましょう。
地盤が液状化するということは、つまり地盤が液体状になるということです。
液体状になった土砂の比重は水の比重より大きく、比重1.3から1.5程度になっているのです。
地中に埋設されたガス導管や下水道管の見かけ比重は液状化した地盤の比重より小さいため
浮き上がってしまうのです。逆に戸建住宅等、重いものは沈下してしまうのです。
また、ビル等の基礎は杭基礎が多いため建物は沈下せず、液状化により地盤が沈下することに
より地盤と建物の間に隙間が生じるのです。

今回の浦安市の液状化が発生したところは昭和40,50年代に埋め立てされてできた地域で
あり、地盤の年代としては最も若く液状化しやすい地盤なのである。
その根拠として、1987年12月17日に千葉県東方沖地震(震源は千葉県九十九里付近)
が発生し震度5を記録し、九十九里沿岸、東京湾沿岸、利根川流域で液状化による被害が
発生しているのだ。余談だが千葉県東峰沖地震が起きるまで液状化を起こす地盤とは均一な
砂でしたが、細かい粒子のシルトまでも液状化を起こしたということで地盤関係者では相当話題
になり液状化改判定基準が改定されました。

当時、浦安市も今回ほどではないが、液状化が発生し、住宅などで被害を受けているのである。
今回の浦安市の震度は、震度5程度にも関わらずなぜ前回の地震による被害が全く異なるのか
考えてみた。
今回と前回の地震による揺れの大きさを表す震度は共に震度5であるが、その違いは地震の
継続時間である。前回の千葉県東方沖地震の地震の継続時間はせいぜい30秒程度であった。
しかしながら今回の地震継続時間は5~6分と非常に長かったことが起因している。
今回の地震で浦安の震度が4程度であっても地震の継続時間が長ければ今回の液状化現象ほどではないにしても、相当の被害が生じたであろう。

一般的に液状化強度を測定する室内試験では地震継続時間は20秒なのである。
明らかに今回の地震継続時間がいかに長かったかがわかると思います。

結論としまして、多少の揺れの小さい地震でも地震継続時間が長ければ液状化現象が起きるということです。次回は埼玉県久喜市の液状化現象を考えてみたいと思います。

 

 

 


設計値とは何か?どんどんでてくる疑問。

2011-03-20 18:51:14 | 日記

昨日は、福島第一原発の想定津波高があまりにも低い想定高で大変驚かされた。
本日(平成23年3月20日)の報道によると、3号機で観測された最大加速度は507ガルであり
設計で想定していた最大加速度は441~449ガルで想定を上回ったと東電は発表している。
この441~449ガルという想定は経済産業省原子力院が定めた基準とある。

一方、6号機は観測された最大加速度は434ガルであり、設計想定加速度は448ガルであり
想定内と発表された。
私が実際に着手した原発の地盤調査で原子炉建屋直下での基礎地盤の安定解析では、
想定加速度を750ガルで検討していたにもかかわらずである。これは原子力建屋耐震基準
に則っている。

今回の福島第一原発の建屋の想定加速度がたかだか441~449ガルと低いというのは
どういうことなのだろうか?
因みにここ最近の巨大地震の最大加速度は下記の様になる。

阪神淡路大震災・・・891ガル
新潟中越地震  ・・・1750~2515ガル
新潟中越沖地震… 812ガル

確かに、新潟中越地震により東電柏崎原発が事故を起こし原発耐震基準が平成18年に
変更された事により福島第一原発の耐震対策は実行されていなかったのか非常に疑問だ。

原子力設計では各構造物によって設計上の想定加速度は重要度によって変わる。
原子炉建屋が最も高く設定されている。配管その他の構造物は設定加速度は低いのである。

今回の福島第一原発事故を経験して本当にこのような各構造物によって想定加速度が
異なって良いのかと改めて考えさせられる。
原子力発電の機能・危険性を考えて全てが一体であり、全ての構造物が重要なのだと
認識して頂きたい。

私が実際に解析したおりには1万年後までの解析を要求された。これは意味をなさない事
なのだ。そのような実際には無意味な(技術的に不可能)事よりも最も重要な事を
忘れているのだと思う。しかし、あの時の想定加速度はいったいなんだったのか?
今回出て来た想定加速度は本当の事なのか?ただ、ただ疑問が残る。


東北関東大震災における福島第一原発事故において思う事。

2011-03-19 20:17:20 | 日記

今回は活断層について報告しようと思いましたが、3月11日に発生した東北関東大震災により
急きょ変更して今回の巨大地震と津波の被害がなぜ起こったのかを考えてみたい。
その前に、今回の大地震において沢山の尊い生命を亡くされた方々に心よりお悔やみを申し上げると共に避難生活を余儀なくされている皆様におかれましてもご健勝であられます事をお祈り申し上げます。

私は、地震当時、日本橋の歩道を歩いていて目の前の信号が大きく揺れているのに気がつきましたが
その時点ではまだ巨大地震とは思ってもいませんでした。
その直後に周辺のビルが左右、前後に大きく揺れるのを見て巨大地震と悟り一瞬、死を覚悟しました。
そしてとっさに道路中央部に移動した事を今も忘れられません。

今回の巨大地震に於いて、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉など広範囲にわたる大規模被害を
知るにつれ、土質工学のエンジニアとして土木建築に携わってきた私としては大変なショックを受けて
虚無感を感じていた一週間でした。

特にショックは今まで安全神話である原子力発電である福島原発が大被害を受けて放射能漏れを
生じた事である。
私は今まで原発の建設の為に地盤調査を担当してきた。始めて携わった時、今回の大被害を受けた原子力建設の水平設計震度が750galと知ってびっくりしたものである。
これに対して一般の建設構造物の水平震度は最大で200galなのであり、原発の設計震度がいかに
大きいかが、分かると思う。
この結果確かに地震により建屋は破壊はしなかった。しかしながら設計津波高さについては、
なんと7mとしか考えていなかった事には大変な驚きである。
なぜなら今までの東北地方んの地震による津波高を調べると、明治三陸地震(1896年)では
津波の高さは38.2m。また昭和三陸地震(1933年)では28.7mの津波高を記録している。

なぜ福島第一原発の設計津波高さが7mと低いのか大きな疑問である。
原子力発電はCO2の排出がまったく少ないクリーンなエネルギーとして国を挙げて
推進しようとしている原発が地震による揺れだけでなく想定を超えた津波により被害を受けたとの
報道であるが、たかだか100年前に38.2mの津波高を経験しているのになぜそんなに低い
津波高にしたのか?
国民の一人としてまた技術者として国および東京電力に対し問いたいものだ。
あまりにも海洋構造物である防波堤および護岸等建設思想に対して軽く見ていた結果ではないだろうか?

今回の被害を受けて中部電力の浜岡原子力が津波高を12mに変更して防波堤を新設して万全を
期すと報道されているが本当にこの単純な行為で良いのか?それよりも上述した様に過去の地震により
最大津波高がどれくらいあったのかと具体的根拠として津波高を想定して頂きたいものだ。
その後手後手の電力会社の対応が一層の国民の不安を募らせる事を国を含め電力会社も
肝に銘じて考えて行く事ではないかと思う。


クライストチャーチの被害に見る日本の地震対策。その1。

2011-03-05 11:38:17 | 日記

皆さんは、パリ、ロンドン、ニューヨーク等の大都市では、大規模地震が発生しないと
思ってはいませんか?
それは、まったくの誤りなのです。大規模地震とは数千年~数万年間隔で活断層の
ずれによって起こるものなので、今後も大丈夫だとは決して断言できないのが
地震の恐怖なのです。
仮にここ2000年間に大規模地震が起きていなくともパリ、ロンドン等の大都市の
地層深くにはまだ発見されていない活断層が深い眠りに付いているだけかもしれないのです。
地質学的時間とは私達が考える一年は何億年単位になります。
活断層についての詳細は次回、説明いたします。

2011年2月22日PM0:51(日本時間22日AM8:51)にニュージーランド・クライストチャーチ付近でマグニチュード6・3の大規模地震が発生した。
震源の深さが5kmと大変浅い都市直下型地震である。今回のニュージーランド地震が
対岸の火事とは思えないのは、CTVビルの崩壊現場に多数の日本人留学生が未だに
行方不明となっているからである。

今回の地震は、昨年9月に発生したM7.0の地震の最大余震と東大地震研は発表している。
昨年発生した地点はマグニチュードは7.0と大変大きいにも係わらず震源がクライストチャーチより西に40kmと離れていたため、レンガ造りの建物が崩壊し液状化により建物は傾斜
したものの奇跡的にも犠牲者は出なかったのである。

今回の地震は、マグニチュードは小さいもののクライストチャーチの直下であった為
揺れの大きさを表す最大加速度は昨年の地震の3倍以上、阪神大震災の値を超えている
と言う事である。
そのために、観光名所である大聖堂などのレンガ造り等の建物の他に日本人留学生が
学んでいたCTVビル等の鉄筋の建物も崩壊しているのだ。

ニュージーランドは日本と同様地震大国であり耐震設計を実施していると思われる
CTVビルがエレベーターホール部分を残して大部分が一瞬のうちに大崩壊した事に
疑問が残る。

この現象を専門家は強度の強いエレベーターホールを中心に建物が回転しようとする
「ねじれ振動」が起こり各階の書く側面の柱が崩れた為、建物の各階層が折り重なるように
つぶれ「パンケーキ破壊」が起きたのではないかと指摘している。

一部の階が局所的につぶれる「層崩壊」は阪神大震災でも多くみられたが、今回の
「パンケーキ崩壊」が被害をより一層大きくしたのである。

クライストチャーチは河川のそばにありもともと地盤が軟弱な為大規模な液状化も
発生している。ニュージーランドの地震発生率は日本の発生率のおおよそ10分の1程度
である。その中で今回のクライストチャーチはニュージーランド国内で見ると地震の発生頻度
が低く日本の耐震基準の5~6割程度と低く設定されているのである。

ニュージーランドでは1992年と2008年に耐震設計基準が改定されている。
しかしながら今回のCTVビルは1975年に建てられた事を考えると想定地震震度は
かなり低かった事が覗える。
その為建物を支える柱も細かったのではないか?都市直下型地震が以下に怖いものかと
改めて認識した。

地震発生頻度が少ないからと言って、設計時の地震震度を低くして良いかといった疑問が
残る。
日本で最近の都市直下型地震で誰もが思いだすのが1995年1月17日に発生した
M7.3の阪神・淡路大震災であろう。既に16年も経過しているにもかかわらず、死者・行方
不明者が6347人と未曾有の被害の為大変記憶に新しいのである。

次回はこれらの地震被害を通じて日本の地震対策について考えてみたいと思う。