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新米親父土木建築コンサル社長のつぶやき

50代にして会社を起業した
土木建築コンサルタントの社長。
専門分野である環境・プラント調査等
会社経営の苦労等。

地震時以外の一般的な住宅の沈下現象について。

2011-04-07 22:00:01 | 日記

前回に引き続き、今回は地震による液状化による沈下以外の、一般的な沈下について考えてみたいと思います。
地盤の沈下は、地盤中に存在する地下水が上からの荷重により絞り出される地下水が排出され
地下水の排水された容積分が地表面の沈下を引き起こします。土質によって土粒子間に含まれる
水の量(含水量)や透しやすさ(透水性)によって、地盤沈下のスピードや沈下量が大きく異なります。

特に、沈下は砂質土や粘性土では、まったく沈下性状が異なります。砂質土は透水性が粘性土に比べて、大変高いので、荷重をかけた途端に地盤中の水が移動して沈下がすぐに終了します。
この沈下を専門的には即時沈下と言います。この砂質土の上に住宅を建設しても建設中に沈下が終了してしまうので、建設後にはまったく沈下は起こりません。

一方、粘性土の場合は、透水性が低くかつ含水比が高いので、このような土地に住宅を建設した場合、地盤中に力がかかり、地下水がゆっくりと移動する為、沈下も大変長い時間(数年から数十年)
をかけ、進行していきます。この沈下現象を圧密沈下と言います。

住宅建設後、年数を経過して顕在化する地盤沈下問題の殆どがこの圧密沈下によるものです。
また粘性土層の厚さの違いや、透水性の違い等により均一に沈下してくれないので、圧密沈下は
不同沈下を引き起こす事が多いのです。

次に、粘性土地盤のところに住宅を建設した場合、すべての住宅が沈下・傾斜が起こるのか?を
考えてみましょう。

まずは、粘性土が圧密沈下に至る状況について考える必要があります。
多少専門的になりますが、分かり易く説明すると、昔、物理の材料学で学んだと思いますが
材料特性を考える時、応力ー歪曲線に着目して応力(外力)がそれほど、増加しないにもかかわらず
歪度が増大する点の事を降伏点と言います。

降伏点前までを弾性域。降伏点後を塑性域と言います。これと同じ事が圧密沈下を考える場合でも
利用されます。
地盤の場合は応力と間隙比(土の体積に対する土粒子間の空隙の比)の関係になります。
間隙比が小さくなる事によって、沈下が発生する事になる訳です。
間隙比が急激に変化した時地盤が塑性域に入る応力の事を圧密降伏応力と言います。

この圧密降伏応力を知る事が、住宅を建設した場合、対象の粘性土が沈下するか否かの
鍵を握っています。
多少専門的になりますが、現在ある粘性土の圧密状況によりつぎの3つに区分されます。

①未圧密粘性土地盤
  現在地盤にかかっているいる荷重の方が圧密降伏応力より大きい状態の事。
  海・沼・池・湿地帯、等を埋め立てして造成された大変若い地盤がこれに相当します。
  この状態ですと住宅を建設しなくても沈下し続けます。このような地盤に住宅等を
  建設して地盤沈下、不同沈下を起こして社会問題を起こしています。この地盤が
  要注意地盤と言えます。

②正規圧密粘性土
  比較的古い地盤に相当します。現在地盤にかかっている加重と、圧密降伏応力が
  等しい状態の事です。これは、この粘性土地盤に住宅等を建設しなければまったく
  沈下しない落ち着いた地盤と言えます。しかしながら、この地盤上に住宅を建設した
  場合、その住宅の加重に応じる分沈下が起こります。
  住宅の蚊重はそれほど大きくない為、沈下量は少ないと思われます。

③過圧密粘性土
  この粘性土はかなり古い地盤と考えて下さい。現在粘性土地盤にかかっている荷重が
  圧密降伏応力より小さい状態つまり、間隙比が大変低下している状態と言えます。
  これは過去に今以上の荷重があった事を示しています。過去の載荷によって締まった
  状態と言えるので住宅を建設して、地盤に荷重がかかっても殆ど地盤は沈下しません。
  安定した粘性土地盤といえるでしょう。

このように、粘性土地盤と言っても全てが沈下するという事ではありません。
次回、それを判別する為の方法について説明したいと思います。

 


液状化被害住宅についてのお知らせ。

2011-04-06 08:37:44 | 日記

「東北関東地震に於ける埼玉県久喜市の液状化現象による住宅被害の考察」を3月29日に
アップしたところ、大変反響を頂きました。
まだまだ、情報が足りない為、被害を受けられ、私のブログを見て頂いた方々には十分ニーズ
を満たすには至っておりません事をお詫び申し上げます。

しかしながらコメント欄にも私の専門外である法律的な部分、また過去の事例等大変
有益なコメントも寄せられておりますので、是非コメント欄もお読み頂く事をお願い致します。

将来的により具体的な情報を得られましたら、住宅被害の新たな考察をアップしたいと
考えております。

 


液状化による地盤沈下と一般的な地盤沈下の相違点。

2011-04-03 10:03:05 | 日記

地震時における液状化による沈下と、地震時以外の一般的な沈下の違いについて考えてみたいと思う。

この両者に共通の要因がある。それは地盤中に存在する地下水です。
地下水は我々人間にとって必要不可欠な貴重な存在だが、その反面地下水の存在により上記の沈下の問題や地下水汚染の拡散の問題も引き起こしている事をまず理解して下さい。

まず、液状化現象によりどうして沈下が生じるのか?さらに液状化が起こってもどうして沈下による被害の程度が違うのか?考えてみたいと思います。
液状化を起こす地盤は、一般的には地下水位以下に堆積している砂質土であり対象地盤は深度20m迄です。(かりに20m以深で液状化が起きても全く地上部に影響を及ぼさない為)
上記の地下水位以下の砂地盤に地震により砂地盤中に存在する地下水に外力が加わり過剰水圧が発生して泥水が地表面に噴出する現象です。

この噴出した容積の分、沈下が生じます。次に液状化が発生してもなぜ沈下及び建物の被害が異なるのかを考えてみたいと思います。

仮にA地区とB地区に於いて共に地表面より深度10mまで同じ強度を持つ砂地盤があるとします。そして、A,B両地区で全く同じ地震による揺れが生じたと仮定します。地下水位はA地区では深度8m、B地区では深度2mとします。その結果、地震によりA,B両地区に於いて液状化が発生しました。
どちらの地区が液状化による被害が大きいでしょう?答えはB地点です。両地区ともに地盤条件および震度は同じですが、地下水位の深度が異なるので、液状化が発生する条件は地下水位以深しか起こりません。

A地区では深度8mから10mの間の厚さ2mの部分しか液状化が起きないのです。
この液状化した土砂と水が地上部に噴出する事は無く建物の被害も殆どありません。

一方B地区では地下水位が地表面より2mと非常に浅い為に層厚8mの砂の部分が液状化を起こすとA地区に比べかなりの過剰な水圧が発生して大量の土砂と水が地上部に噴出し地盤の沈下が生じ住宅の傾斜及び沈下が生じます。因みに、液状化による沈下は液状化した層の5%といわれています。
B地区の沈下は、液状化層の厚さは8mですので、8m×0.05=40cmと言う事になります。
以上、地震による揺れ及び地盤条件がまったく同一であっても地下水位が浅いか、深いかにより如何に液状化による沈下及び住宅被害が異なるかをご理解いただけたと思います。
次回に、地震時以外の一般的な沈下について考えてみたいと思います。


液状化被害住宅記事についてのお知らせ。

2011-04-02 09:52:17 | 日記

この度の地震による浦安市、久喜市液状化について、記事にしましたところ、沢山の反響を頂き
有難うございました。激甚災害地域にばかり目が行きがちですが、今回の災害での被害で悩んで
おられる方が沢山いるのだと推測されます。

また専門家としては、一般の方にも分かり易くと思いこのブログを書いておりますが、私の常識と一般の常識が違うという事も思い知らされました。そこを少しでも埋めるべく勉強したいと思っております。

特に今回は液状化による地盤沈下と粘性土による地盤沈下が同一に考えられている様な気がしますので、早急にその違いについて説明したいと思います。

そのせつはまたご愛読ください。

 

 


東北関東地震に於いて液状化により被災した戸建て住宅の液状化対策工

2011-03-30 23:27:35 | 日記

今まで、東北関東地震により千葉県浦安市と埼玉県久喜市における戸建て住宅の
液状化現象による被害状況について、考察してきました。
前回にも述べましたように液状化により戸建て住宅が傾斜した場合、ジャッキアップにより
建物を水平にしても再液状化を起こす可能性がある為、抜本的な修復にならないと敢えて
書きました。

今回は液状化により沈下、傾斜した戸建て住宅における液状化対策工について考えて
見たいと思います。

先ずは液状化により戸建て住宅はなぜ傾斜するのかを考えてみたいと思います。
地盤を構成する地層が全て水平に堆積しているとすれば、液状化現象を起こせば等沈下に
なります。
しかしながら地層が水平な状態はほとんど存在しません。その為に液状化により不等沈下が
生じるすなわち、戸建て住宅の傾斜が生じるのです。

地震による外力により地盤の中にある地下水に外力が働き過剰な水圧が発生してその圧力を
解放する為に地下水と共に土砂が地表面に噴出することになります。その結果地盤の体積減少
する事により地盤の沈下及び傾斜が生じます。

以上述べ得たような既設の戸建て住宅の液状化対策についてまとめたいと思います。
既設の戸建て住宅の対策に対して簡易的な対策と抜本的な恒久的対策がありますが
まずは費用的な観点から簡易的な対策を考えます。

●液状化した際の過剰な水圧を素早く抜く為のパイプドレーンを設置する。
●液状化を起こしても吹き上げてくる地下水と土砂の吹上防止の為に地表面より2m位
迄の地盤をセメントミルクにより地盤を強固にする。

以上が液状化を100%防止できなくても相当な被害を軽減する対策工である。
この提案は今までの巨大地震の結果に於いて証明されています。

因みに恒久的対策とは住宅地直下における液状化対象層を全てセメントミルク等により
締め固める事である。(セメントミルクによる混合処理)しかしこれには費用が相当かかり
お勧めは出来ません。
またこの対策工は工務店では技術的に難しいので地盤改良専門会社に相談されると
良いでしょう。