前回に引き続き、今回は地震による液状化による沈下以外の、一般的な沈下について考えてみたいと思います。
地盤の沈下は、地盤中に存在する地下水が上からの荷重により絞り出される地下水が排出され
地下水の排水された容積分が地表面の沈下を引き起こします。土質によって土粒子間に含まれる
水の量(含水量)や透しやすさ(透水性)によって、地盤沈下のスピードや沈下量が大きく異なります。
特に、沈下は砂質土や粘性土では、まったく沈下性状が異なります。砂質土は透水性が粘性土に比べて、大変高いので、荷重をかけた途端に地盤中の水が移動して沈下がすぐに終了します。
この沈下を専門的には即時沈下と言います。この砂質土の上に住宅を建設しても建設中に沈下が終了してしまうので、建設後にはまったく沈下は起こりません。
一方、粘性土の場合は、透水性が低くかつ含水比が高いので、このような土地に住宅を建設した場合、地盤中に力がかかり、地下水がゆっくりと移動する為、沈下も大変長い時間(数年から数十年)
をかけ、進行していきます。この沈下現象を圧密沈下と言います。
住宅建設後、年数を経過して顕在化する地盤沈下問題の殆どがこの圧密沈下によるものです。
また粘性土層の厚さの違いや、透水性の違い等により均一に沈下してくれないので、圧密沈下は
不同沈下を引き起こす事が多いのです。
次に、粘性土地盤のところに住宅を建設した場合、すべての住宅が沈下・傾斜が起こるのか?を
考えてみましょう。
まずは、粘性土が圧密沈下に至る状況について考える必要があります。
多少専門的になりますが、分かり易く説明すると、昔、物理の材料学で学んだと思いますが
材料特性を考える時、応力ー歪曲線に着目して応力(外力)がそれほど、増加しないにもかかわらず
歪度が増大する点の事を降伏点と言います。
降伏点前までを弾性域。降伏点後を塑性域と言います。これと同じ事が圧密沈下を考える場合でも
利用されます。
地盤の場合は応力と間隙比(土の体積に対する土粒子間の空隙の比)の関係になります。
間隙比が小さくなる事によって、沈下が発生する事になる訳です。
間隙比が急激に変化した時地盤が塑性域に入る応力の事を圧密降伏応力と言います。
この圧密降伏応力を知る事が、住宅を建設した場合、対象の粘性土が沈下するか否かの
鍵を握っています。
多少専門的になりますが、現在ある粘性土の圧密状況によりつぎの3つに区分されます。
①未圧密粘性土地盤
現在地盤にかかっているいる荷重の方が圧密降伏応力より大きい状態の事。
海・沼・池・湿地帯、等を埋め立てして造成された大変若い地盤がこれに相当します。
この状態ですと住宅を建設しなくても沈下し続けます。このような地盤に住宅等を
建設して地盤沈下、不同沈下を起こして社会問題を起こしています。この地盤が
要注意地盤と言えます。
②正規圧密粘性土
比較的古い地盤に相当します。現在地盤にかかっている加重と、圧密降伏応力が
等しい状態の事です。これは、この粘性土地盤に住宅等を建設しなければまったく
沈下しない落ち着いた地盤と言えます。しかしながら、この地盤上に住宅を建設した
場合、その住宅の加重に応じる分沈下が起こります。
住宅の蚊重はそれほど大きくない為、沈下量は少ないと思われます。
③過圧密粘性土
この粘性土はかなり古い地盤と考えて下さい。現在粘性土地盤にかかっている荷重が
圧密降伏応力より小さい状態つまり、間隙比が大変低下している状態と言えます。
これは過去に今以上の荷重があった事を示しています。過去の載荷によって締まった
状態と言えるので住宅を建設して、地盤に荷重がかかっても殆ど地盤は沈下しません。
安定した粘性土地盤といえるでしょう。
このように、粘性土地盤と言っても全てが沈下するという事ではありません。
次回、それを判別する為の方法について説明したいと思います。