cafe de sou-ryu

ほっと一息
ちょっと休憩しませんか?

月光の聖者達

2011年10月09日 22時28分17秒 | I think so …

こんばんは。
三連休の中日、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?
気候のよい時期ですもの、今日はお出かけの方も多くいらしたのかしら。
今日もお仕事の方、本日もお疲れ様でした。
お休みの方も、明日のお休みもよい一日となりますように!


最近表を歩くと、金木犀の香りが漂よう時期になりました。
穏やかな金色の陽の光が何よりも似合う芳香。
紅葉のように鮮やかな彩りを見せる事も無く
その姿は目にこそ華やかな印象を与えないけれど
ひっそりと花開く事で、いち早く秋の到来を告げる。
私はこの花が香る時期が、一年の中で一番好きです。


さてさて。本日のお話は、前回に引き続きあまり
テンションの高いお話ではありません。
ですから、そうしたお話が苦手だと仰る方は
どうぞスル―してやって下さいね。
本日のお話は、私にとっての備忘録のようなものです。


突然で、なおかつ不謹慎なお話かもしれませんが、
みなさまは大切な方の最期が近いかもしれないとしたら
どんな風にそれまでの日々を過ごされますか?


私は今日、一人の女性と会ってきました。
彼女は、私の大切な人たちの中でもとても近しい間柄で、
いつもいつも、私の事を温かく見守ってくれる女性です。
いつものように、私はささやかなお茶菓子を持って彼女の許へ訪れ
他愛のない世間話を楽しんでいました。


その時ふと、彼女はお茶を飲む手を止め、私もよく知った一人の男性の話を始めました。
男性は数年前にガンを患い、入退院を繰り返しておられます。
その男性とここしばらく連絡が取れずに、彼女は不安だと言葉を洩らしたのです。
私と彼とは仕事を介しての付き合いが数年あったのですが、
最近はほとんど会う事はないものの、彼女を介してその男性の近況を知ったり
お互いの仕事の様子を聞いたりする仲で、その関係性が断たれる事はありませんでした。
ですから、たとえ縁は薄くとも、その病状を知る私も気がかりではあったのです。
一方、彼女はその男性と共に二人で仕事をし、公私とも辛い時はお互いを励まし支え合い
長年とても強い信頼関係を築いてきました。
それは、肉親や同僚とはまた違う種類の信頼関係なのかもしれません。
だからこそ、彼女の言葉は人の口の端に上る噂話の類とは全く違い、
そこに体温や息づきさえも感じるほどのリアルなものに思えたのです。


私は出来るだけ深刻な様子を纏わないような言葉を選ぶ事しかできませんでした。
もちろん色んな事を尋ねたり、容体を慮る言葉をかける事はできたでしょう。
そして、彼女を思いやるような種類の言葉も。
でも、どんな言葉の重さも紙一枚の重さよりも軽く思えてなりませんでした。
彼女はちょっと彼に対して怒ったように、そして同時にどこか遠くを見るような表情で
自らが零した言葉を拾い集めるようにして、その話を閉じかけました。


その時、彼女の携帯に一通のメールが届きました。
彼女はそれをしばらく見つめると、私に無言で手渡しました。
そこには、男性からしばらくの無沙汰を詫びる言葉とともに
彼女への心からの気遣いの言葉と、けして明るくない病状が手短に記されていました。

私の知る限りでは、いつも呑気で飄々とした様子でありながらも、
いざという時には、いかんなく男気を発揮する人、彼はそんな印象でした。
けれど、私は、初めてその男性の打つメールを目にして、
それは単なる一面に過ぎない事を知ったのです。
そして、その中のどんな詫びの言葉より、男性から彼女への「あなた」という呼称に、
深い思いを垣間見た気がしました。
親しみを込めた「お前」でも、彼女の名前でもないその三文字。
その文字はとても高潔に二人を繋いでいる、そんな風に感じたのです。


それきり、彼女は携帯を閉じると、その事に触れないまま
いつもの穏やかな微笑みを唇にたたえながら、何気ない話に終始していました。
私もそれから他愛のない話題に、幾つもの笑い話を交えつつ
自分の時間の許す限り、彼女の口元がほころぶ事を願い続けていました。
私より遥かに年上のその女性を、とても美しく感じながら…。


私は彼女に暇を告げ、自転車での帰り道、宵に漂う金木犀の香りの中で
ずっと以前、二人が働く事務所で些細な事で男性に食ってかかり
泣き喚く私の様子をじっと見つめていた彼に、なぜそんなに生き急ぐのか、
そんな風に静かに諭された事を思い出していました。
生き急ぐ、という意味を私は未だに実感なんてしていません。
けれど不覚にもその言葉を思い出すと涙がこぼれそうになり、
少し慌てて薄闇の空を見上げました。
そして、この日感じた香りは私の中で、
なかなか薄れる事はないだろうと感じました。



ミスタームーンライト




夜明けの首都高走りゆく 車列は異様なムードで
”月光の聖者達”のドラマを盛り上げる

知らずに済めばよかった 聴かずにおけばよかった
「人生(ショー)はまだ始まったばかりだ!!」 胸が張り裂けた

ひとりぼっちの狭いベッドで 夜毎涙に濡れたのは
古いラジオからの切ない”Yeah Yeah の歌”

今はこうして大人同士になって失くした夢もある
ときは移ろう このくにも変わったよ 知らぬ間に

二度とあの日の僕には戻れはしないけど
瞳を閉じりゃ煌めく季節に みんなが笑ってる

ひとりぼっちの狭いベッドで 夜毎涙に濡れたのは
ビルの屋上のステージで おおきな陽が燃え尽きるのを見た

いまがどんなにやるせなくても 明日は今日より素晴らしい
月はいざよう秋の空 ”月光の聖者達”
Come again,please

もう一度 抱きしめたい