『希死念慮』
大切な彼女が
今陥るのは
もしかするとの
希死念慮か
もし
それならば
残念ながら
私にも
当たり前のように
存在してしまう
まして
我々のような
重い障害を
後天的に
負ってしまったのなら
尚更に
守りたい
守りたいのに
守れない
無力な私こそ
消えて
しまいたい
ほら
こうしてまた口を開く
壊れた思考の
中に住まう魔物たち
※書き下ろ詩。
『あなたは知らない』
あなたは
知らない
例えば
沸き立つ入道雲の
後ろに流れ出した秋の雲も
昨晩から鳴き出した
秋の虫も
あなたは
知らない
なにもかも
※残っていたメモ書きに加筆修正したもの。
『何も持ってはいけません』
人は
逝く時
何も持っては
いけません
私が一度
身を持って体験したこと
人は
逝く時
何も持っては
いけないのです
だからこその
現し世です
さて
何を刻めば
良いのでしょう
きつく
握り締めた筈のものすら
拳を緩めてみたら
何もなかった私が
人は
逝く時
何も持っては
いけないのです
そもそも私は
何も持っては
いなかったのですね
※書き下ろ詩。