花ざかりの廃園

If you celebrate it,  it's art.  if you don't,  it isn't. 

野の道

2017年10月10日 | 思い出すことなど、ほか
 ”単純なるものこそ、止まるもの、偉大なるものの謎を秘蔵している。…すべて自らに生い出たものは、野の道のほとりに憩い止まりつつ、それらすべてのものの遙けさが、世界を惜しみなく與へてくれる。…野の道は、思惟するものの歩みにとって、いつも変わらず身近にあった。…そして野の道は、野の道のほとりで営まれている様々な本質を有つ事柄を取り集め、野の道の上を行く各々の人に、彼ら自身に属するものをば手渡してやるのである。...単純なるものは、その祝福を蔵している。...語って語らざる世界の言葉のうちにおいて、...野の道の呼び聲は、開かれた自由なるものを愛する気質を目覚めさせてくれる、...四季とりどりに轉じ行く野の道の風の中に、知恵の明るさは榮え行く、この知恵の明るさの顔の面には、しばしば憂愁の影が現はれはするけれど、...しかしすべては一つに響き合い、そのこだまを野の道は、默しつつここかしこへと、自ら運び行く。そしてその一つの響きの中に於て、すべては明るく、晴れやかになるのである。...すべては同じ一つのものの中への斷念を語つてゐる。だが斷念は奪ひはしない。斷念は與へるのである。斷念は単純なるものの汲み盡し難き力を與へるのである。野の道の呼び聲は、長き来歴の中に於て、故郷の家に憩い住まはしめる。”(M.Heidegger)

本を片手にどこかに逃げて、匿ってくれる野辺はなかなか遠い気がする今日この頃です。

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