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冬にわかれて/なんにもいらない

2019年01月16日 | Music


冬にわかれて/なんにもいらない
(2018/P-Vine Records)


寺尾紗穂、伊賀航、あだち麗三郎の3人によるグループ「冬にわかれて」の2018年作品。

寡作の詩人、
尾崎翠の詩「冬にわかれて 私の春を生きなければならない」から付けられたというグループ名が先ず奮っている。

尾崎翠を早速読んだ。
中でもこんな一節に惹かれた。
. 「戸のすきまから音もなく流れてくる黎明の色に染められた障子の紙の、ミルクをながした程のすこし水色がかった色がかるく閉じた彼女の瞳から心へ朝らしい影を投げかける。その影をいつまでも放さないでさきがたの夢の柔らかい快さに浸っていたい今朝の春路の心であった。(「悲しみの頃」より)


本作は、3人各々が作詞作曲した曲を持ち寄ったアルバム。
メンバーは、作詞作曲をするにあたり、事前に尾崎翠を読んだのだろう。曲調はバラエティに富んでいるが、詩の世界は空の向こうで尾崎に繋がっている。


尾崎の詩が持つ
日常と非日常の間の中で
揺らめく様な言葉の連なりと
この3人が放つ
率直でナイーヴな言葉を携え
ゆらゆらと幻想的なサウンドで
立ち昇る様は、隔世遺伝の如き
血脈を想わせる、なんて言い過ぎだろうか。


寺尾紗穂の声とピアノ。
それらを包むアンサンブル。
彼等の音は遠い、美しい世界から聴こえて来る。

このアルバムが湛えている世界そのものが、今では消えてしまった幻の街、幻の録音スタジオで録られた様な。

だからこそ今の心に響くのだろう。
夢を見させてくれる様に。

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冬にわかれて/なんにもいらない(P-Vine Records/日本盤/¥2,800+tax)

1. 君の街
2. 耳を澄まして
3. 白い丘
4. おかしなラストプレイ
5. 月夜の晩に
6. 冬にわかれて
7. 甘露日
8. なんにもいらない
9. 優しさの毛布でわたしは眠る
10. 君が誰でも

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