クロマチック・ハーモニカ

2011-09-30 23:59:59 | Weblog
とあるデイサービスにて。

みんなでワイワイ盛り上がってる一群から少し離れて、
ひとりテーブルに腰掛ける男性。

誰も振り向くことないタイミングで
彼はポケットに手を入れた。

それが聴こえないほどの喧騒ではないにしろ、
彼の息吹は、少なくとも僕の目には誰にも気付かれていないように見えたし、
また自ら誰にも構って欲しくないオーラを
瞬かせているようにも見えたのだが。

ポケットからだしたクロマチックハーモニカからは
『分かる人だけ判って』と訴える、
初めて聴くのに懐かしい感じの音符が流れ出した。

もし音符が目に見えるなら。
工場の煙突から勢い良く上がる白煙ではなく、
業務用冷蔵庫の扉を開けたら優しく斜め下に流れる冷気のような
優しい柔らかい奥ゆかしい音色。

その、「引き」のブレスに気づけたことは
ラッキーだった。
それは価値のある音だったから。

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