物語のお蔵

短編から、長編のオリジナル小説のたまり場。(版権物もちょこちょこ)更新は遅め。

輝きのペルゾーン

2013-05-20 19:07:54 | オリジナル長編
◇プロローグ◇


クレイマ13年   種族の仲違いによる戦乱、エルフとヒューマンの戦争「ラシアル戦争」が勃発する。
クレイマ20年   長きにわたる戦乱はヒューマンの勝利に終わる。敗北したエルフは森へ消えた。

カルキディケ1年  新皇帝ロイアの誕生によりエルフへの迫害を禁じる法令が下される。


 時はカルキディケ3年。この世界ジェシンクで新たな時代が動き出そうとしていた。


***

とある森の中。月光がまばゆく照らす森の中で影が二つ走っている。一つは少女、一つは黒い影。
どうやら少女は追われているらしい。黒い影は追跡者といったところか。
少女は走り続ける。が、不意に視界が開かれる。目の前に道はない。
そう、崖に追い込まれたのだ。

「鬼ごっこは終わりにしましょう。シェール様。」

どこか冷めた印象を受ける声が黒い影から発せられた。
月光が二人を照らす。
少女は長いプラチナブロンドの髪と青い海の様な瞳をしている。影は黒いコートで全身をつつんでいた。声色から男のようだ。

「クラン様が心配しておられます、」

「いいえ、戻らないわ。お願い…邪魔しないで」

風が少女の髪を揺らす。少女は真っ直ぐに男を見据えた。
沈黙が、落ちた。

「…そうですか。」

男が沈黙を破った。

「諦めます。かわりに貴女を、」

一層強く風が吹き抜けた。突風が二人の間を駆け抜けた。

「殺します。」

一瞬だった。
底冷えするような殺気を感じた次の瞬間には少女は宙を舞っていた。それに伴い傷口から鮮血も舞う。
そして何が起こったのか理解する前に暗い闇のような崖下の森へと吸い込まれていった。

「抵抗、もしくは拒否されれば殺せと命じられましたから。悪く思わないでください、シェール様。」

崖から見下ろす男からは感情を読み取ることはできなかった。




◇プロローグ 終◇