物語のお蔵

短編から、長編のオリジナル小説のたまり場。(版権物もちょこちょこ)更新は遅め。

キサラギの陰陽録 第一章「任務・怪異を調査せよ」

2013-05-21 21:38:40 | あやかし陰陽録

「ふう、今日も良い天気だ」

管狐の銀はキサラギ邸の庭先で洗濯物を干していた。空は快晴、洗濯物をほすには絶好の天気だ。

「だねー、布団もほしたし!今日は太陽のにおいがするお布団でぐっすり眠れそう…」

と、この家の主、陰陽師のキサラギは今日の寝心地を想像して幸せそうに顔を綻ばせた。
しかし、銀は苦い顔をして

「…いつもぐっすり寝ているだろう。全く違いを見受けられんのだが。」

と一括。ごもっとも!とキサラギは銀の方を向き

「でも、銀は私のことよく見てくれてるよね。銀が見ててくれるから私は安心して物事に取り組めるよ。こんな陰陽師なりたての小娘に、本当にありがてぇことですよー(´;ω;`)ぶわぁ」

「ぅ、うるさい!お前が危なっかしいから見ていなくちゃいけなくなるんだろうが!!お前のせいだっ!あと顔文字を顔で表現しようとするな!鬱陶しい!!」

「あのーいい雰囲気のところ悪いんですけど、カガミ、お話したいことがあるんです…」

今までの経緯を見ていた鏡の九十九神、カガミは少し不機嫌そうな声色で銀に抱きつこうとしていたキサラギに声をかけた。

「お前の目は節穴か!?これのどこがいい雰囲気に見えるん」

「えぇ…そんなこと言わないでよ…(´・ω・`)ショボン」

「だ・か・ら・!やめろというのが…」

「ううーずるいです!!カガミもいい雰囲気の中に入れてくださいっ!!」

「話ってそれなのか!?」

「よーし!カガミ隊員も一緒に銀へ抱きつくのだー!!」

「了解しました、キサラギ隊長っ!!」

「よせ、く、来るなあぁぁぁあぁぁぁっ!!!!」

…銀の叫び虚しく、二人に抱きつかれた後尻尾をもふられ、銀は満身創痍となった。


***


「こほん。で、さっきのお話したいことなんですけど…」

と、カガミが話を切り出したのだが…銀の鋭い視線が痛い。キサラギが「ごめん、やりすぎたよー」と必死に謝ってもふくれっ面を直してくれない。

(うう、銀の後ろに般若が見えます…今の銀なら化身を呼び出しそうです…)

銀の視線が怖かったが、がんばって話すことにした。自分がここに来た目的でもあるのだから。

「陰陽院からのお仕事をあるじに伝え、共にこなすことがカガミに課せられた仕事です。それは先日お話しましたよね?」

カガミの問いにキサラギは頷く。

「では、お仕事の内容をお伝えしますね。近年この東京で穢れが増えているのはご存じですよね?」

「うん。あやかしに力を与える霊力に似た、呪いや負の力のことだよね。」

「それに強い穢れにあやかしがさらされ続けるとあやかしが悪い方へと転じてしまうしな。」

銀も落ち着いたのか話に加わってくれた。視線も無くなってとりあえずほっと一息つけます…と、カガミは安心して話を進めた。

「はい、その通りです。それに伴い怪異も増えてきているんです。このまま放置しておけば、人の世に悪影響を及ぼします。」

一息置いてカガミは言葉を続ける

「あるじには街中に存在する穢れを浄化しつつ怪異を鎮めるお仕事をしていただきます。これが陰陽院からあるじへと課せられたお仕事です。」

「つまりパトロールがてら街を歩いて怪異を見つけたら落ち着かせればいいんだよね?」

「はい、それで間違いありません。」

「よーし!じゃあ早速街中を探索しに行こー!」

腕を上げてキサラギは意気揚々と仕度を始めた。

「さっすがあるじ!行動派ですね!カガミもお供します!」

えいえいおーと掛け声をあげる二人を「落ち着け」と銀が牽制チョップで落ち着かせた。


***

まずは手始めに人が多いところで聞き込みとしゃれこもうじゃないか!ということでキサラギ達は渋谷にて聞き込みとしゃれこんでいる。
何人かの人に聞いてみると神宮前付近で不思議な歌声がするという話を入手した。夜眠れなかったりと色々と難儀しているそうだ。

「本当にそれは怪異なのか?歌なんて人間だって歌ったりするだろう?」

「まあまあ、とりあえず行ってみようよ。」


***

「不思議な歌声がするのは、こちらの方角と聞きましたが…」

神宮前まで来たその時、突然歌声が聞こえてきた。…心地よい歌声ではあるが…こう聞き続けているとあまりにも…

「あるじ~、大丈夫ですか?カガミは耳がおかしくなりそうです!」

「うーん、これじゃみんな夜眠れなくなっちゃうよね。」

歌声に耳を傾けてみた。人ごみの中聞き取りづらかったが

「あ、向こうの方から聞こえてこない!?こっちに近づくたび声が大きくなってる気がするよ!」

とキサラギが指した方向は―――――



南青山


「あ、あるじ!あそこ!」

声をたどり、裏路地に入る。そこにいたのは背中から白い羽を生やした女性が立っていた。

「おい、そこのあやかし。今すぐに歌うのをやめてもらいたいのだが、」

と銀が問うと

「?あなたたち、一体何の用ですか。私は今忙しいんです。用事なら後にしていただけます?」

とそっけない返事を返しあやかしは再び歌い始めた。

「えーとですね、この周辺の人達があなたの歌声が気になって夜眠れなくて困っているんだよ。だから…」

「うるさいですよ。」

言葉を続けようとしたキサラギの声はあやかしの声にかき消された。三人は気づいた。あやかしの周りに黒いもやが集まっていることに。

「いけません!穢れです!!」

突然あやかしがキサラギ達に向かってきた。攻撃をかわしたが向こうは止める気配がない。

「銀!」

「言われずともわかっている。」

あやかしの声による振動の攻撃が襲ってくる。
その前に銀が立ちはだかり狐火で相殺していく。

「あわわ!あるじ、耳がビリビリします~!」

「カガミは私の後ろに!銀、少しの間抑えていて!」

「承知した」

キサラギは懐から呪符を取り出し呪(まじない)を唱え始めた。
あやかしの方は攻撃を続けていたが段々疲れが見え始める。銀は狐火を防御ではなく攻撃へと転じさせた。不意を突かれたあやかしはひるんだ。そこへキサラギの呪が完成した

「……急急如律令呪符退穢!」

呪符があやかしを取り囲み光を放った。呪符が消える頃にはあやかしに憑いていた穢れは綺麗さっぱり消えていた。
キサラギは小走りであやかしに近づいた。

「きみ、大丈夫?どこか痛いところ無い?」

声をかけるとあやかしは目蓋をあげキサラギを見据えた。

「あれ、私…?」

どうやらまだ意識がはっきりしていないようで、目をパチクリさせている。
とりあえず、あやかしが落ち着くまで待つことにした。



***

「私は白天使です。どうやら助けられたようで、感謝します。」

白天使は佇まいを正し、キサラギを向き直った。

「白天使はなんでここにいたの?で、なんで歌ってたの?」

キサラギが気になっていたことを質問すると白天使は思い出したようにはっと顔を上げた。

「私はボスを探しに来ていたのです。探さなければ、」

「ボスですか?」

「私達の上司にあたる御方です。東京の異変に気づき、東京へと赴いていたのですが帰りが遅くて…。私の歌声に気づいてくれればと思って歌っていたのですが…気がつけば穢れに憑かれていたようですね…。天使として失格です…」

しゅんとうなだれる白天使。しかし、次には気丈に振舞っていた。

「私はボスの捜索を続けます。陰陽師の子、あらためて感謝を、」

白い羽を羽ばたかせ、白天使は宙に舞い上がった。一度こちらを振り向き、

「東京は思ったより穢れが増えてきているようです。お気をつけなさい。」

そう言葉を残して空の彼方へと飛んでいった。
白天使を見送ったキサラギはうーんと背伸びをし、

「丸くおさまってよかったねー。銀お疲れ様」

と声をかけた。

「神霊だったからどんなものかと思えば、あれは下っ端クラスだな。手応えが全くなかった。」

銀は手をひらひらとふった。そんな銀をカガミは目を輝かせて見ていた。

「銀はすごいですね!!私は戦闘向きではないのでうらやましいです。白天使さんの攻撃をこうズババーってしてドカカーってしてて…」

「…それはほめている表現なのか、」

銀はふとキサラギが大人しく黙っている事に気づいた。

「どうしたキサラギ、」

「穢れが思ったより多いことが分かってなんとかしなきゃなーって思ってさ。」

「落ち着くまでは毎日行ったほうが良いかもしれんな。」

「だね、さーてお腹すいたし帰ろっか!」

くるっ、と家路へと体を向ける。

「さーてと、今日はご飯食べてぐっすり寝るぞー」

「おー!」

「今日の出来事を陰陽院へと報告する報告書を書くのも忘れるなよ」

うぎぎ、とキサラギは苦い顔をして

「今日だけ休むのはだめかな(´>ω∂`)てへぺろ☆」

銀のにこやかな顔と共にキサラギの後頭部に31のアイスがよろしくのっかりました。



◇キサラギの陰陽録 第一章「任務・怪異を調査せよ」 ~終~◇

キサラギの陰陽録

2013-02-15 04:09:39 | あやかし陰陽録
※※※※※ あてんしょん!!!! ※※※※※

この小説はZynga様のアプリケーション『あやかし陰陽録』の二次創作です。
主人公がオリジナルな上に、オリジナル設定、オリジナルの人物が出てきます。一応ストーリーに添った形にしたい所なのですが、万両は何章か進めてしまっていて会話もうろ覚えという有り様です。所々違うかもしれません。

はっきり言いますと、自己満足な小説です。
しかし、周りにプレイしてる人いないし、『あやかし陰陽録』を知ってもらえるきっかけになれたらと思って書くに至りました。


ありえないと思う方はUターンをお勧めします。
まあ、暇つぶしに見てやるよという方はこのままお進みください






◇序章◇

この世には霊力を持つ人間が存在する。彼らは「陰陽師」と呼ばれ、この世の均衡を保つ役割を果たしている。
そもそも何故陰陽師が生まれたか?
この世には人間以外の意志を持つ力が存在する。


壱、妖魔(ようま)

弐、神霊(しんれい)

参、九十九神(つくもがみ)


である。
彼らは強大な力を持ち、この世の理を覆す可能性を秘めている。この三つ力とこの世の均衡を保っているのが陰陽師なのだ。
そんな陰陽師を束ねるは、京都に本拠地を置く「陰陽院」という。

三つの力と陰陽師は時に協力しあい、時に衝突している。

その事実は歴史の裏側にあり、一般的に知られてはいない…




***

「只今をもってお前が“キサラギ”を襲名する事となる。」

父上は病(やまい)で弱った身体からそう私に告げてきた。

「…御役目、立派に果たして見せます。」

そう私が応えると父上は満足そうに微笑んだ。

***

場所:東京駅前

「ふわあ!ここが東京ですか…。何やら人がごった返していて、にぎやかだなぁ。」

通勤前のラッシュ時なのか、スーツを着た人々が行き交ってゆく。

「カガミ知っていますよ、こういう状態を『ふはは、見ろ!人がゴミのようだ』と言うんですよね。この間の金曜ろーどしょうで観ました!」

ふふん!と少女はつぶやいた後、がっくりと肩を落とした。

「…こんなこと言ってる場合じゃないですね。早く『キサラギ殿』のお住まいに向かわなきゃなのに…。東京、複雑怪奇です…。」

少女は懐から一枚の紙を取り出した。
住所が書いてあるその行き先は…目白。

「うーん…目白駅にはどうやって行けば…?…あ、あの人に聞いてみようかな?」

携帯電話をいじっている女性に声をかけてみた。

「あのーすみません。目白駅にはどうやって行けばいいのでしょうか?」

「……」

「あのーカガミに目白駅への行き方を教えてくれませんか?」

「……」

反応は無し。まるで少女が見えていないかのようだ。

「んー…そうでした。カガミは他の人には見えないんでしたね。うっかりうっかり☆」

聞くことを諦め、少女は地図を片手に歩き出した。


***

場所:目白・キサラギ邸

趣のある日本家屋。庭には沈丁花(じんちょうげ)の花が咲いている。
この家の主、キサラギは縁側で日向ぼっこをしてくつろいでいた。
空は晴天。まさにお昼寝日和…

「キサラギ!昼を食べてから寝ると、身体に悪いとあれほど言ったのに!」

バンッ、と襖を開けてキサラギに牽制チョップを食らわせたのは
猫耳…ではなく、狐の耳を生やした青年だった。
ぐえ、と、うめき声をだし、キサラギは我に返った。

「はっ!みたらし団子!」

「…何の夢を見ていたのか。キサラギ、食っちゃ寝は駄目だと言っただろう!?」

「うー…銀はオカンみたいなこといつも言うよね。」

「だ・れ・が・オ・カ・ン・だ・と」

と、今度はギリギリとキサラギのポニーテールを引っ張った。
痛い痛いハゲる!!とキサラギが悲鳴を上げた所で手を離す。
彼は銀(ぎん)。キサラギの式神である。
本来ならば、あるじに従順なはずなのだが…どうやらこの二人は変わった関係らしい。
そう言えば、とキサラギが銀を振り向いた。

「陰陽院から来る子って確か今日来るんだよね?」

「そうだな。予定ではそのはずだ。…しかし、遅い気がする。」

「ねーねー銀、迷ってるのかもしれないね?迎えに行った方がいいかな?」

「行き違いになるかもしれないからあまり動かぬ方がいいのではないか?」

そっか…と答えたものの、やはり心配でソワソワする。何か自分に出来ることはあるだろうか…?
「あ」とキサラギの頭にアイディアが浮かんだ。

「ねえ、銀。その子の名前って…」


***

場所:東京のどこか


「うう…完璧に迷子です…。ここはどこなんでしょう…」

進めば進ほどゴールに遠ざかっている気がする。日も落ちてきて、気持ちはさらに暗くなる。

「カガミはここで力尽きてしまうのでしょうか…?お腹も空いてきました…」

路地にうずくまりため息をついていると、目の前に小さな花びらが落ちてきた。

「わぁ、きれい、」

そっと手を伸ばすとふわりと手のひらにおさまる。するとかすかに花びらから霊力を感じ取った。

「花びらから…どうして…?」

疑問に思っていると花びらがひとりでに漂い始めた。ふわふわと移動していく。

「あっ!待ってください!」

カガミは慌てて花びらを追いかけた。




細い道を通り、橋を渡って、花びらを追いかけ、歩き続けること約一時間。
カガミは一軒の家へとたどり着いた。花びらはその家の庭へと移動していく。
恐る恐るカガミは足を踏み入れた。
不思議な感覚がカガミを包んだ。今までの東京の町はどこか空気がくすんでいる感覚があったが、この家の敷地内に入った瞬間それが無くなったのだ。

(…ゴクリ)

カガミは庭の方へと進んだ。
人がいた。先ほどの花びらを手にして、カガミの方を向いた。

「君がカガミちゃん?」

「はっ、はい!カガミです!」

「初めまして!私がキサラギだよ。よろしくね!」

夕日が彼女の銀髪を橙色に染めている。不思議な雰囲気のするキサラギからカガミは目が離せなかった。


***

場所:キサラギ邸


「キサラギ殿の術のおかげで無事たどり着くことができました!ありがとうございます!改めまして、陰陽院から来たカガミです。これからキサラギ殿にお仕えする事になります。どうぞよろしくお願いします!」

「よろしくね、カガミちゃん!私は陰陽師のキサラギだよ。そして私の隣にいるのが…」

「銀と名乗っている。妖魔の管狐(くだぎつね)という種族だ。キサラギの式神をつとめている。」

「よ、よろしくお願いします!」

「ねえねえカガミちゃんは妖魔?神霊?九十九神?」

「カガミは鏡の九十九神です。あるじのお役にたてるよう頑張りますね!」

そう言うとキサラギは目を輝かせた。

「銀、聞いた?“あるじ”だって!“あーるーじー”!何ともいえない響きだねぇ…。ねぇ、銀も“あるじ”って言ってみてよ!せーのっ、“あるじ”!ほい、一二の三はいっ、あーるー…」

「言わないからな」

ピシャリと断られた。なんだか仲の良い友達みたいだとカガミは思った。
同時に、仲間に入りたくなった。

「カガミのことはカガミってよんでください!」

「りようかーい!カガミ♪カガミ♪」

「あるじ♪あるじ♪」

「はぁ…、キサラギが二人に増えるなど、今日は厄日か…?」

(新しい所でやっていけるか不安でしたが、心配はいらなかったみたいです。カガミは頑張ります!応援してくださいね、師匠!)

これから始まる毎日にカガミは心を弾ませていた。
誰も予想だにしなかっただろう。この後、東京に起こる異変を……



◇序章・終◇