ぷやんぷやんの噛みどころ

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イージス艦衝突で報道されていないことについて

2008-02-21 01:00:59 | Weblog
イージス艦「あたご」が漁船と衝突したことのニュースが大きく報じられ、マスコミの報道は漁船側を擁護する内容になっている。
果たして、これは正しいのだろうか?
私はそうは思えない。
マスコミでは報じていない背景事情が数点あるので、少し書いてみたい。


まず、現実的な認識を行いたいと思う。
漁船は真っ二つになっていることから、イージス艦の正面を横切るときにぶつかったと言うことだ。これは明らかなる事実である。
漁船は相当機動性が良く、無茶をしない限り避けることは十分可能である。10ノットのイージス艦が来るのを確認できていれば、衝突を避けるのは容易だ。これは私が漁船に乗った経験からだ。
また、イージス艦は護衛艦の中では最新設備を持っているが、あくまでもそれは防空レーダとその信号処理、リンクの話であって、水上警戒のレーダは他の護衛艦や大型船とさほど変わりない。最新鋭のイージス艦だから全て回避できるはずだという思いこみは間違えている。ましてやエンジン等は他の船と同じだ。

東京湾の漁船には、航行中の護衛艦のギリギリ前を通り過ぎると豊漁になると言う迷信があり、無謀、無茶をしても護衛艦の前を通り過ぎようとする現実がある。
これも、私が実際に見てきたことなので断言できる。
つまり、いくら護衛艦が回避しようとしても、漁船があえて危険を冒してまで突進してくると言うことが現実にあるのだ。もう対処しきれない。
非常に危険なのだが、漁船側はそれを日課としているので、危険という意識はないであろうし、やめる気もない。いわば験担ぎ程度の認識なのだ。

次に、海自側。(以下、機器のバージョンは省略する)
イージス艦には海の上を見るためのレーダとして、OPS-20航海用レーダとOPS-28対水上レーダがある。OPS-20は通常航行用、OPS-28は水上目標の探知・捕捉用である。
CICにレーダ指示器OPA-3があるが、艦橋にも指示器が存在し、少なくともレーダでの海上確認がCICと艦橋の2カ所、さらに目視による監視が行われていた。
つまり3重に警戒が行われていたのだ。

ここから導き出される答えは一つ。
イージス艦の前方に漁船があり、イージス艦はそれを認識しつつも、このような広い大海原でニアミスすることを予期していなかった。
そこへ、漁船が突進してきて、予想外のことに対処しきれず衝突した。


双方の証言に矛盾があるが、明らかに事実ではないと断言できる点がある。
数分前までイージス艦が漁船を見つけられなかったと言うことはおかしい。
3重の警戒網の中、見つけられないわけがない。少なくともレーダで数十マイルの距離から探知が出来ており、ずっと警戒捕捉していたはずだ。
当時波もなく、クラッタが無かったはずであるので、見えないはずがない。漁船は小さいが、RCSから言っても十分に確認できる。
レーダはすぐそばは見えないという評論家の意見があるが、実際そこまで近づく前に捕捉は出来ている。必ず。しかも、かなり近接まで見えるのだ。

漁船は数隻おり、気付いて回避運動した船があったことからも、漁船からイージス艦が見えていた。
つまり、ぶつかった漁船も、イージス艦を把握していた。そして、直進するイージス艦の前にわざわざ進んでいる。
漁船が「イージス艦が減速せず回避をしなかった」と言っているが、減速しても、イージス艦のように巨大な船は、すぐにはその効果が出ない。当時、数隻の船がいたことから、どこに回避運動を起こしても、必ずその先に漁船がいたと考えられる。実際、曲がるべき右舷側に漁船が集中していたようであるからなおさらだ。
この状況では、操船としては、法で定められた右への回頭より後進の方が効果的だと判断したのだろう。私もそのように思う。この速度では、回頭してもRが数百メートル以上になり、速度そのまま直進するのとほとんど変わらないからだ。

広範囲に漁船が広がる海域を通過するイージス艦が、漁船を認識しつつも突っ込んでくることを予期せずに航行したところ、漁船が豊漁祈願のためイージス艦の前を通過しようと突っ込んできて事故にあったというのが現状だと思う。
これでいくと、漁船側にも相当の責任がある。
東京湾での現状を見ると、今まで事故が起きなかったことの方が不思議なぐらい、無謀な漁船が多いのだ。



そこで、今回の双方で私が気に入らないところと言うと。
まず漁船側は、普段の護衛艦に対する行動を反省することもなく、一方的に護衛艦や大型船を非難しまくり、日頃の行いの反省をする気配すらないこと。行方不明者は気の毒だと思うが、あの罵倒の仕方はどうか。
海自側は、真実を言えばよい。目視では直前でも、レーダで早くに確認しているはずだ。いきなり来られてぶつかられたのだとすれば、日頃からの漁船の行為を公表すればよいだけのことだ。それを誤魔化すようなことをしていれば、批判を受けるのは当然のことだ。
これからのことを考えても、徐々に事実を明らかにしていくと言う方針は、海自への疑問を抱かせ、世間の支持を得られなくなる。
また、油断していたのは事実であろう。警笛を鳴らしまくるぐらいのことも行っていなかったようであるのは問題だ。

日常の漁船と海自の関係を考えると、このようなストーリーに自然と組み上がる。
本当の真実はどうなのかはこれから明らかになるのであろうが、私から見ると双方に問題があるように思えてならない。
マスコミも、もっと事実を深く掘り下げた報道をすべきで、漁船側を擁護しその人柄を褒め称えるかのような報道はすべきではない。