川の土木

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ダム多め。
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風屋ダム

2018-12-24 | ダム・堰堤・水力発電所
2016年12月27日 訪問

2011年9月の台風12号は、紀伊半島を中心に2000mm以上の雨を降らせ、その結果同時多発的に深層崩壊が起こり多くの天然ダムが形成された。ここ風屋ダムの上流、赤谷地区でも大規模な崩壊が発生した。その直後から天然ダムの決壊によって二次災害が起こることを防ぐべく対策が講じられ、万が一決壊した場合に下流へ洪水が流れ下ることが無いよう、ダムでは一時的に水位を低下させたのだという。
熊野川水系には治水目的のダムがない。というか、利水ダムしかないので、まさか新しいダムを造るわけにもいかないし、今あるダムで少しでも被害軽減のために頑張らなければならない状況となっている。風屋ダムは電源開発が所有する発電専用ダムだが、同台風により熊野川流域に甚大な被害が出てしまったこともあり、流域の他のダムと合わせて大雨時の操作の見直しが進んでいる。国交省の資料「新宮川水系利水11ダムの比較」には、それぞれのダムの諸元がまとめられ、今後のダム操作の考え方などがまとめられている。これを見てもわかるように、風屋ダムはこの水系で池原ダムに続いて貯水量が二番目、1億3000万㎥もの巨大なダム湖を有しているし、この容量を少しでも洪水調節に転用すればかなりの治水効果が出そうに思うのだが。

ダムに向かう道中ところどころに、巨大な崩壊跡があったりして、砂防工事が行われていたり、色々見るものがある。



ダムに到着し、ダム湖を見ると、なんか異様に水位が低い。水も茶色く濁っている。

ダムサイトには、ダムやここから送水している十津川第一発電所の詳しいスペックが記された
立派な石板が。写真下部に写っているのは現在更新工事が行われている取水設備の新たな部品らしい。

これはおそらく建設時のバッチャープラントの土台だと思う。

このダムのダムカードにも書いてあったが、このダムは左右岸の堤体取付部の高さが違っていて、写真のように左岸側が少し高くなっている。平らにできへんかったん?

ダムの銘板。2つあり、一方には例によって達筆な字で「風屋ダム」と書かれているが、もう一方には、アルファベットで「KAZEYA DAM」と表記されている。この時代のダムでアルファベット、というのは珍しい気がする。
 
ダムを真横から見ると、堤体が濡れていることもあってダムの襟部分と勾配部の色の違いが際立っている。実にさっぱりとした、無駄のない美しさ。

このダムは減勢工がスキージャンプ式となっている。おっと、放流している。ここのスキージャンプは、すごく角ばっていて、重厚感を感じる構造。

クレストからではなかったが、コンジットの放流管から豪快に放流していた。水流の広がり方からして、ハウエルバンガーバルブっぽい。

ダム付近の水面、ちょうど放流管吞口のところに流芥が集まっていた。

現在、写真の取水設備を改修し、表面取水設備を設ける工事が行われている。そのため、滅多に使用しない放流管を使用して低水位を維持しているらしい。水位を低くしているため、どうしても上流の貯水池末端で水底が露出し、堆積土砂の浸食、運搬が起こってしまっている。だから、管理者の電発様では長期間続く濁水の対策も行っているのだという。

ダム天端を離れ、ダムの下流の橋から。なかなかのビューポイント。

4門の巨大なクレストローラーゲートのピアは鉄骨で作られていて、これも珍しい。経済性や施工上の観点から見てこのほうが有利だったらしい。

放流のアップ。よく見るまで気づかなかったが、手前のいわばに吊り橋の支柱のような構造物がある。ダムができる前の旧道か?

ダムカードを配布している十津川第一発電所はダムとは結構離れた下流のあるが、そこに行く途中、ダムから来た導水路か川を渡るところがある。太い鉄管が視界を横切るのさまは圧巻。

鉄管が山に入っていく部分が少し上がっている。サイフォンなんやろか。









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