森 水晶 〈君はピーターパン…〉

君はピーターパンわたしは魔女猫は猫又夜しか泳げない

（森　水晶　歌誌「響」）

森 水晶 〈白い羽根…〉

　　写真：糸田ともよ

白い羽根一枚いちまい灰色の空にひろがる降るものとして

（森　水晶）

森 水晶 〈行かないで・・・〉

行かないで…同じ夢より目覚むればいつも同じ薄荷の匂い

（森　水晶）

森 水晶 〈あふるる光の・・・〉

あふるる光のなかで回転す八月の噴水につかまりし蝶

（森　水晶『星の夜』）

森 水晶 〈電波塔へ…〉〈青空よ…〉

電波塔へ螺旋を描きあつまる電波見えないものがみえるは辛い

青空よぬけるような冬のそら感じることをかんじるは辛い

（森　水晶）

森 水晶 〈魅入られて・・・〉

魅入られて地に墜ちし鳥の闇のなかコトリと音立てからだを開く

（森　水晶「短歌往来」）

森 水晶 〈銃を置き・・・〉

銃を置き仔猫を拾い抱きしむ兵士の背中を狙う銃口

（森　水晶「ＮＯＢＩＲＵ」）

森 水晶 〈青年の・・・〉

青年の腰の鎖のジーンズのポケットに続くさびしさの行方

（森　水晶「ＮＯＢＩＲＵ」）

森 水晶 〈ああ未だ・・・〉

ああ未だわたしの前に降りしきる火の粉のようなきさらぎの雪

（森　水晶『羽』）

森 水晶 〈雪の降る・・・〉

雪の降る前ぶれならんしずまりてけむる空より青林檎の香

（森　水晶『星の夜』）

森 水晶 〈真夜中の・・・〉

真夜中の羽音のごとく君が泣くわたしの胸の寂しさのなか

（森　水晶『羽』）

森 水晶 〈青空に・・・〉

青空にパラソル振ってさようならはじめから冗談だったと笑い

（森　水晶『羽』）

森 水晶〈ツリーの灯・・・〉

ツリーの灯うつせる窓の外は雨なぜ幸福は苦しく切ない

（森　水晶『羽』）

森 水晶 〈一生泥棒…〉

一生泥棒　一生罪人　一生泥沼　一生咲かない

（森　水晶『羽』）

森 水晶 〈満月の・・・〉

満月の夜更けに帰宅せしわれの髪よりこぼるる罪の草の実

（森　水晶『羽』）