今、我々はどんな社会に生きているのか
句郎 今、我々はどんな時代に生きているのかな。
華女 私たちが生まれた時代は第二次世界大戦の傷跡が残っていた頃よね。
句郎 そうそう、上野公園に行くと白い服を着た傷痍軍人がアコーディオンを弾いて募金を求めていたからね。
華女 黒い眼鏡が異様な雰囲気を漂わせていたのを覚えているわ。
句郎 戦争の傷跡だよね。この戦争の傷跡が戦後民主主義社会を作って来たんじゃないのかと思っているんだ。
華女 それは、どういうことなのかしら。
句郎 何年か前だったか。ピケッティ著『21世紀の資本』という本が話題になったでしょ。
華女 若いフランス人が書いた本なんでしょ。
句郎 うん。この本の中で書いてあることの一つに第二次世界大戦で戦勝国も敗戦国もお金持ちがお金を失ってしまったということを書いているんだ。
華女 なるほどね。私の家もそう言えば、貧しくなってしまったようよ。戦前は大地主のお嬢様だったのにみすぼらしいものだったように思うわ。
句郎 戦争するにはお金がたくさんかかるから、お金持ちから戦費を政府は調達した結果、お金持ちは貧しくなってしまった。
華女 皮肉な結果ね。
句郎 そうなんだ。お金持ちはさらにたくさんお金を得ようとして中国や東南アジアに侵出したが、中国では手痛い敗北を喫してしまったからね。
華女 欲張ると良くないのね。
句郎 どうもそうらしい。戦後はお金持ちと貧乏人との格差が縮まった。お金持ちが貧しくなったからね。
華女 その格差が縮まったことが戦後民主主義ということなのね。
句郎 そのようなことをピケッティは言っているらしいんだ。
華女 世の中って、面白いわね。
句郎 そうだよね。誰だって、力の強い人の意見に従いがちだからね。お金持ちの人は強い人だから、政府の人たちも力の強い人の意思に従って政治は行われているからね。
華女 戦争の結果、財閥と言われた人々がお金を失うと政治家たちもそれらの人々の意見を尊重しなくなったのね。
句郎 アメリカは戦後世界中で戦争をしてきた。
華女 朝鮮戦争やベトナム戦争ね。
句郎 その結果、アメリカは貧しくなってきているからね。
華女 馬鹿ね。戦争なんか、どうしてするのかしら。
句郎 理解に苦しむ矛盾だね。その結果、アメリカ政府は貧しくなってしまったが、少数のお金持ちが巨大の富を持つようになっている。
華女 それは日本も同じなんじゃないの。
句郎 そうだね。日本政府は貧しいみたいだけれど、少数の巨大なお金持ちは生まれているみたいだから。
華女 貧富の格差が大きくなるのは危険じゃないの。
句郎 確かにそうだよ。所得格差是正のための戦争が起こる危険性が確かにあるのかもしれない。世界人口の0.1%の超富裕層の人々が世界中の富の20%を持っているというのは凄いよね。まるでフランス革命前の社会みたいだよ。「第三身分とは何か。すべてである。今日まで何であったか。無である。」