将棋王 ツメルモンスターズ

目指せ真の詰キスト!
主に短編詰将棋について書きます

【将棋】「堅さよりバランス」を直感的に理解しよう!

2019-12-01 11:44:59 | 将棋雑学
 上図はそれぞれ矢倉、角換わりの新旧対抗型。
 先手陣は昔からある形ですが、後手陣は近年指されるようになったAI考案の新型です。

 さて、先手と後手、どちらがお好みでしょうか?

 玉の近くに金銀が密集しているのは先手陣。よって玉の型さでは先手が勝ります。
 人間の感覚では、やはり守備駒が集まっている方が安心できるので、従来はこの形が主流でした。

 では、後手陣の長所はというと、金銀が分散している分駒の打ち込みの隙は小さくなっています。
 加えて、終盤に右辺を崩されたとしても、玉が左辺(後手側から見ると右辺)に脱出して粘りが効きやすくなっています。
 広い空間の中、のらりくらりと攻めをかわして粘る感じですね。



 AIは特に詰む詰まないの読みが得意なので、詰まされにくい逃げ方を正確に把握し、「のらりくらり」と嫌らしく粘ることができるのです。
 その様を目の当たりにした人類は、次第に後手陣のようなバランス型を評価するようになり、プロ棋戦でもすっかり定着しました。

 とはいえアマチュア的には、特に初心の方にとっては「のらりくらり」とかわすよりも玉を固める方が勝ちやすいでしょうから、「堅さよりバランス」というのは理解しにくいかもしれません。
 そこで今回は「堅さよりバランス」を例え話で解き明かそうと思います。



例え話① 学校内で鬼ごっこ(鬼から逃げている状況)
 外でやれ!というツッコミはごもっともですが、今回だけ勘弁してくださいw
 さて、鬼に捕まらないためには大きく次の2つの方針があります。

 A:部屋に入り、隠れる。または内側からバリケードを作り防御する。
 B:ひたすら走って逃げる。

 Aが堅さ重視、Bがバランス型⇒のらりくらり の例えです。
 どちらが勝るかは一概には言えませんが、足の速さ(技術)に自信があるならば、下手をすれば逃げ場のなくなるA(実際守備駒が邪魔で玉が脱出できないということはよくある)よりもBの方が勝りそうです。鬼よりも足が速ければまず捕まらないので。



例え話② ボクシングのディフェンス

 相手のパンチを防ぐ方法として、やはり大まかに次の2つの方法があり

 A:ガードを固め、攻撃をかわさずにブロックで受ける。
 B:フットワークを使う、またはスウェーバックなどでヒラリとかわす。

 やはりAが堅さ重視、Bがバランス型⇒のらりくらり の例えです。
これまたどちらが勝るかは一概には言えませんが、ディフェンスの達人で史上最強ボクサーの1人、フロイド・メイウェザー選手の戦い方は間違いなくB寄りです。
また、技術的に難度が高いのもBでしょう。小学校時代の喧嘩を思い返して、相手の攻撃をガードする子はいてもスウェーでかわすような子はいませんでしたから。
俗に言う「殴られ屋」さんも、素人さんのパンチを「かわす」ことで防ぎます。


以上2つの例え話でイメージが湧いたでしょうか?
どちらにしてもBの方が技術的には難しいのですが、マスターしてしまえば、Aより捕まりにくいというケースも多々あると思います。

他に、もっと分かりやすい例え話があれば、コメント欄で教えてくださると幸いです。

【将棋】4手目△3四歩が少ない理由

2019-11-11 22:01:42 | 将棋雑学
後手番。次の1手は?



 A △8五歩     B △3二金      C △3四歩
















正解は・・・どれも有力です。

「問題になってないじゃないか!」と言われそうですが、ABCの内1手だけ、プロの実戦では結構レアなのです。

その一手とは、題にもある通り△3四歩です。

局面ぺディアによると、ABCそれぞれの採用数(採用率)は
A 2221(54.7%) B 1620(39.9%) C 216(5.3%) とCだけ極端に低いですね。

子どもの頃、横歩取り△8五飛戦法が大流行していたのですが、その頃でさえ上図から△3四歩と指されることはめったになく「なんでだろう?」と不思議に思っていました。大人になった今、改めてこの理由について考察し、子どもの自分に答えてやろうと思います。



上図から△3四歩と突くのは、主に横歩取りを志向した一手です。
 この横歩取りという戦型が曲者でして、序盤から互いに歩を複数枚持合い、且つ大駒の交換がいつでも起こりうるため、非常に複雑で激しく、一手のミスが致命傷になりうるという特徴があります。
 ゆえに、横歩取りを志向するということは、相当な自信・事前研究があるということです。
 その場の気分や思い付きで「今日は横歩でいこっかな~」などと決めるプロはほとんどいないでしょう。

一旦後手が横歩取りを志向した以上は、相当な研究を用意しているはずですから、できるだけ確実に誘導したいと思うもの。
 そのためには、2手目に△3四歩とする方が確実なのです。
 2手目が△8四歩だと、3手目(先手)次第では横歩取りになりえなくなりますからね。
 (例えば▲6八銀なら矢倉模様になります)

「後手が横歩取り志向ならば2手目は△3四歩」ということは「2手目が△3四歩でないならば後手は横歩取り志向ではない」ということになります。(高校数学で習う対偶です)

ゆえに、上図を迎えている=後手は横歩取り志向ではない、というケースがほとんどなため、4手目の△3四歩が少なくなるのです。

なぜAIは振り飛車を評価しないのか?

2019-10-27 15:34:06 | 将棋雑学
振り飛車党で今この記事を読まれている方。あくまでにAIの解析を解釈しているだけで、私個人の意見ではありませんので、どうか気を悪くされませんように・・・



ご存知の方も多いと思いますが、ほとんどの最新将棋AIは基本的に振り飛車を指しません。飛車を振ると100~200点評価値が下がります。
この件について、考察します。


こんな説があります。「振り飛車は飛車の動きで1手損するので、その分評価値が下がる」と

しかし、初手から任意の筋に飛車を振ると評価値は-100台なのに対し、初手でパスをすると(ルール上できませんが、仮にできたとした場合)-2桁で収まります。

したがって手損だけでなく、飛車の位置が変わること自体もマイナス評価になっているのです。


もっと言えば、少なくとも最序盤において「飛車のベストポジションは初期位置(居飛車)である」というのがAIの考えです。


素朴に考えてみましょう。
Q 初形において後手陣の最大の弱点はどこでしょうか?
A 2三の角頭です。
Q では2三を狙うに当たって、飛車はどこにいるのが良いでしょうか?
A 答えは2筋です。


極めつけはこれ。先手で▲7八飛の一手を得できている局面を仮定。



何と候補手の中に▲2六歩や▲2八飛があります。1手得の三間飛車と1手損の居飛車を大体同じに評価するとは・・・
とにかくAI先生は居飛車がお好きなようです。

将棋の初手最悪手が▲8六歩であることの証明

2019-10-27 13:38:30 | 将棋雑学
初手の最悪手は何か?たまに話題になりますよね(ならないか)

AI解析の結果は▲8六歩が最悪手で、評価値は-227でした。

ただこの問題、人によっては▲5八金左(-145)や▲7八銀(-56)、▲9八香(-132)を挙げるかもしれません。*()内は評価値

今回は、評価値以外の方法で、どっちがより悪手か判定する方法をご紹介します!



初手の悪手を、次の2種類に分類します。

①可逆手…手損すれば良形に戻せる。例えば初手▲6八金は後に▲7八金とすれば良形で、この場合損した手数は1。
②不可逆手…手損しても良形に戻せない。▲7八銀や▲9八香、▲1八香など。

②の不可逆手については悪手度の比較は難しいですが、①の可逆手については損した手数に応じて悪手度を比較できます。
よく最悪手候補として上げられる▲5八金左は可逆手で2手損です。(▲6八金~▲7八金の2手で良形に戻せる)

①に分類できる手の大半は1手損か2手損です。



では、本題。初手▲8六歩は可逆でしょうか?不可逆でしょうか?
一見不可逆ですが、自然に手数を進めると部分的に定跡形と合流できることから、可逆とみなすこともできます。ちょっと強引かもしれませんが。

そして可逆とみなしたときの手損数は…なんと3!ホンマかいな?

下の図を見比べてください。



左は初手から▲8六歩△8四歩▲7八金△8五歩▲同歩△同飛▲8七歩
右は初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲3八銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8五飛▲5八玉(相掛かりの一例)

左と右の差、後手は△3二金の1手が入っただけですが、先手は4手も進んでいるので、やはり3手の差があります。

故に3手損の▲8六歩は2手損の▲5八金左よりも悪手なのです。不可逆手との比較は難しいですが、可逆手グループの中では断トツの最悪手と言えます!