shiro-diary

シロフィルム通信

芦原ー雄島ー敦賀

2011-11-17 00:25:27 | Weblog
 ミュージックは1回目だけ観劇した。仕事も詰まっているし、このまま夜通し走って帰ろうか。でも海も見たいしな‥
まあ、とりあえずは晩ご飯を食べて考えようと赤提灯の暖簾をくぐった。ママに魚をたのんで、初めて芦原に来た時のことをぼんやり思い出していた。
 「あたしのボトルだから。飲みな」
たまたま横にいた、おばさ・・いや、お姐さんがグラスに焼酎を注いでくれた。夏から休みなくで動いてきて煮詰まっていたので、ここいらで飲んだくれて頭をクリアにするのも良いだろう。明日、海を見てから帰ろう。それじゃいただきます、と久しぶりにアルコールを体に流し込んだ。ストリップ見た後に赤提灯、いやー庶民に生まれて良かったよ。
 「あんたホストだろ?顔、整形してるでしょ」
 違うと言ってるのに、さんざんちょっかい出されてまいった。気が強くてにぎやかなひとだ。
 「あのひとは芸者やコンパニオンを仕切っているのよ。私も昔は随分稼がせてもらったよ」
 トイレに立ったすきに店のママが教えてくれた。長年、温泉客の接待をしてきた彼女たちから聞かされる男性群像はなかなか興味深いものがある。ママは携帯で初老の男を店に呼んだ。「いい男でしょ。昔は恋人だけど今は戦友みたいなもんよ」と紹介してくれて、気の強い女に押され、肩身を寄せ合いながら酌を交わした。
 姐さんはみんなの飲み代を払って、さらに僕のポケットにチップをねじこんで、いや、さすがにそれは悪いからと言ったら、「だまれ!!ホストだろうが!!!」と一喝して帰ってしまった。ホストじゃないんだけど、お姐さんごちそうさまでした。
 気がつけば日付も変わっている。ママが紹介してくれた旅館は「御同伴」という言葉がぴったりのきそうな、古びた連れ込み宿だ。内装もレトロで不思議な色気と趣がある。連れ込む相手がいないのが残念なところだが、とにもかくにも久しぶりにたくさん眠れそうだ。

 翌日は雄島を散策した。岩場に寝転んでぼんやり海を眺めた。昨夜のストリップも赤提灯も夢の中の出来事みたいに思える。そういえば写真集の踊り子の引退興行も始まっている。そうか、もうすぐいなくなってしまうんだ。本の制作に必死だったけれど、今になって引退の実感がわき上がり、なんともさみしい気分になった。香盤表の名前も10年もたったらほとんど入れ替わってしまう、そう考えると、とても儚い世界だ。

 敦賀までのんびり海岸線を走って、帰途についた。