二十代の頃、よくぼくは人の結婚式に呼ばれていた。披露宴もたけなわになってくると、必ずぼくの元に回ってくるものがあった。それは寄せ書きである。
ぼくのところに回ってくる頃には、かなり多くの人が書き込んでいる。ひとつひとつ読んでみると、よくまあ、こんな気の利いたことが書けるものだ、と感心したものだ。
そこで、ぼくも何か気の利いたことをと思うのだが、それが出来ない。かなり酔いも回っている、ということは言い訳にならない。書ける人には書けるのだ。現にそこに書いている内容は、どれも素晴らしいものばかりだ。二人の門出を祝っているものもあれば、心強い人生訓などもある。
よしぼくも一つ、と気ばかりが焦ってくる。いろいろ考えていると、周りから「おい、まだか?」と声がかかる。
「ちょっと待って。今考え中」
しかし答えは出てこない。
「しかたない、もうこれにしておこう」と書いたのが、『次はおれの番だ!』だった。
「お前はいつも書くことが同じやのう」と、いつもそれを読んだ人から言われていた。