吹く風ネット

立春

 今日は立春ということで、立春にちなんだ記事を書こうと思い、かつてこの日は何を書いたんだろうと調べてみた。しかし、これといったものが見当たらない。
 と、一つだけ目を引く記事があった。

 前にいた会社での話だが、2006年2月で所属していた店舗が閉鎖されることになっていた。それを受けて店舗担当の課長が、その店舗にいる社員一人一人に、その後どの部署の配属を希望するかということを日別に面談していた。
 その年の今日がぼくの番だった。その話し合いのことを記事にしていたのだ。

2006年2月4日
 昼食中に呼び出しがかかった。行ってみると、そこに店舗担当の課長がいた。

「何か欲しいものがあるんですか?」
「いや、その件で来たんじゃない」
「そうですか」
「実は、今後のことなんやけどね」
「ああ、そっちのほうですか・・」

 前に部長と話をしたことを書いたが、課長はその話の続きにきたようだ。部長は招集をかけると言っていたが、どうやら今日はその前段階の個人面談らしい。

「今度家電の売場がなくなるわけなんやけど、今後どこか行きたい部署とかある?」
「行きたい部署ですか・・」
「本音で言ってもらいたいんだけどね」
「どうせ生鮮とかでしょ?」
「生鮮はだめなん?」
「ええ。いくらこの会社で花形の仕事とはいっても、家電で25年やってきた人間が、今更包丁片手に立ち回れるわけないじゃないですか」
「そうやねえ・・。でも、そこしかないとしたらどうする?」
「家族には『もし生鮮になるなら辞めるかもしれん』と言っているんです」
「そうか・・。じゃあ、他に希望とかあるんね?」
「これと言ってないから困ってるんです」
「他の事業部はどう?」
「前の店長が行ったところならいいです。そこには行けませんか?」
「ああ、あそこね。あそこは難しいよ。他にないんかねえ?」
「うーん。でも販売はもうしたくないし・・。それ以外で何かありませんか?」
「販売以外?」
「ええ、販売だと、どうしても家電のほうがよかったという気持ちになるでしょ?そうなると、仕事に身が入らなくなると思うんです」
「ああ、そうか」
「急にどこがいいかと言ってこられても、こちらは何も準備してないですよ。もう少し時間をもらえませんか?」
「もう少しと言ったって、もう時間がないんよねえ・・」

 煮え切らないぼくと、これと言った提案の出来ない課長の会話は、その後しばらく続いた。だが、答は見えてこない。結局、結論は見送りとなった。

 課長が帰った後に、先輩社員が「何と言われたんか?」と聞いてきた。ぼくがその内容を語ると、その人は
「おまえ、辞めるとか言ったんか?」と聞いた。
「ええ」
「何で『どこでもいいです』と言わんとか。辞めるとか言ったら、相手の思うつぼやないか。ただでさえ、おれたちは余剰人員なんやけ」
「『本音で言え』と言うから、辞めることも選択肢としてあると言ったんですよ」
「そうか・・。でも、ああいう時は『どこでもいい』と言ったほうがいいぞ」
「自分の場合、どこでもよくないから、『どこでもいい』とか言えませんよ」
「ああ、そうやのう。おまえは家電以外やったことないけのう」

 さて、第三弾はいつになるのだろうか。そしてぼくは、どうなるのだろうか。先輩氏の話では、今日本音を言ったことで、ぼくはろくな部署に回されないだろうということだ。


 それから四ヶ月後に、ぼくはこの会社を去ることになった。そのきっかけになったのが配属先で、会社がぼくを必要としていないことがよくわかる人事だった。
 その人事を受けた当初は、生活のこともあったので、馬鹿になって耐えることも考えた。が、やはり必要とされてない会社にとどまる気にはならなかった。

 結果的にはそれがよかった。その後ぼくは一年間の充電期間ののち、今の職場にたどり着くのだが、実にやりがいのある仕事をやっている。
 収入面もそうだ。今の仕事をしだした当初は、かなり減ったのだが、もし前の会社に定年までいて、その後嘱託で残ったとする。その16年間の収入合計と、今の仕事を始めてから15年間の収入合計を比べると、すでにトントン以上になっているはずだ。しかも今の仕事には定年がないから、最終的にははるかに上回る。

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