歯痛の話

　先週の木曜日あたりから、奥歯がうずいている。何もしなければどうもないのだが、かみ合わせると痛いのだ。
　翌日金曜日が休みだったので、歯科に行ってみようかと思った。しかし、今年は自分のむちうち治療や母親の病気で百回以上も病院に行っているので、病院に行くのはもううんざりしている。いろいろと迷ったが、痛み止めを飲んで様子を見ることにした。

　ところが痛みはなかなか治まらず、さらに痛みは増して、かみ合わせなくてもズキズキするようになった。しかたなく昨日、今日の休みを利用して歯科に行こうと思い、行きつけの歯医者さんに電話してみた。
「明日の午前中は空いてますか？」
「明日の午前中は一杯です。午後からなら空いている時間帯があるのですが」と言う。
「明日の午後はダメなんですよ」実は明日（つまり今日）の午後は、母親をうんざりしている病院に連れて行かなければならないのだ。
「それなら、明後日以降になりますね」
「ああそうですか、わかりました」
　そう言ってぼくは電話を切った。この痛み、明後日まで耐えることはできない。

　そこでぼくは、家の近くの歯科数軒に電話し、明日の午前中が空いてないか聞いてみた。しかし、明日の午前中なんてどこも空いてない。そんな中、一軒だけ「応急処置でいいのなら」と言ってくれる所があった。もちろん応急処置で充分だから、それで手を打った。

　明けて今日、午前中さっそくそこに行き、レントゲンを撮ったりしていろいろ調べてもらった。ところが医師は、
「歯はまったく問題ないですよ」と言う。
「えっ？」
「実はここの部分が白くなっているんですが、何か思い当たることはありませんか？」と、医師はレントゲン写真を指さしながら言った。
「そういえば数年前に・・」
「ああ、なるほどそれですね。それが原因だと思います」
「そうなんですか」
「はい。では抗生物質を出しておきますので、それで様子を見てください」
「はい」
「もしそれでも痛みが治まらなかったら、耳鼻科に行って下さい」
　医師が指摘した白い部分、そこは歯茎の上、そう鼻の横の部分だった。歯痛の原因は、何年か前に治療した副鼻腔炎がぶり返したことにあったのだ。

　生まれてから今まで、何度も何度も歯医者に行ったのだが、今回みたいに一日で、しかも歯には異常なしで終わったことは一度もなかった。しかも、そこで耳鼻科を勧められるなんて、生まれて初めてのことだ。