最近見かけなくなったもののひとつに、蠅とり紙がある。よく魚屋とかに天井から吊るしてある、両面がベタベタしたガムテープのようなものだ。
ぼくの家は、高校の頃までポットントイレだったため、よくトイレからくそ蝿が飛んできた。トイレの中に蛆殺しなどを散布して、元から絶とうとしたのだが、なかなか追いつかない。そのため、しかたなくこの蝿とり紙を仕掛けていた。
食卓の上で揺れている蝿とり紙ほど、汚く感じたものはない。頭の上を、蠅の着いた蠅とり紙が行ったり来たりしているのだ。もし、食事中に蠅とり紙が落ちてきたとしたら・・・。考えただけでも、恐ろしいことである。
それにしても、よくあの状態で食事が出来たものだ。それだけ時代や人間が、野性的だったとも言えるだろう。
今仮にあの頃の生活を強いられるとなると、ちょっと考えものである。
異臭とメタンガスの発生源、ポットントイレ。
食卓の上には、見るからに汚い蠅とり紙。
ひっきりなしに攻めてくる蚊の群れ。
空中をしつこく飛び回る、大型のくそ蠅。
照明器具めがけて飛ぶゴキブリ。
・・・
あな恐ろしや。