◎「ハーモニー」
総合評価3点(5点満点)
2015年11月13日から劇場公開。監督・なかむらたかし、マイケル・アリアス、 原作・伊藤計劃、120分。
「虐殺器官」の制作会社が経営破綻して別会社で制作継続中、代わりに、12月4日公開予定の「ハーモニー」を早めたもの。
「ハーモニー」で前提として出てくる「大災禍」は「虐殺器官」で起きたことらしいので、原作未読の私には分かっていないところがあるのかも知れません。
(→リンク「屍者の帝国 感想。悪くはないが、気持ちの描写が不十分で分かりにくい」)
「私の心が、幸福を拒絶した。」
「行こう、向こう側へ」

同じノイタミナ作品の「PSYCHO-PASS サイコパス」に似たところがある、ディストピアの世界の物語。
物語は比較的いいので、ユートピアかディストピアかという物語に抵抗が無ければ楽しめるかと。
それでも、設定の説明セリフが多いところと、そのときの見せ方が普通なので、少し退屈でした。2度見た方がいいかも。
全体として絵は綺麗、「屍者の帝国」よりはソフトな表情。
PG12なのは、自○シーンや血が多く出てきたり、自○者目線で自○までが描かれたり、1シーンだけだったと思いますがトァンの胸の先が少し見えたり、といった点からでしょうか。
ミァハの声が、15歳のときは冷たい感じのときの中原麻衣さんみたくて、大人になってからは中原麻衣さんと茅野愛衣さんの間くらいみたくて、誰の声かと思いながら見ていましたが、他のアニメでもそうですが上田さんはイロイロな声が出せますね。
公式HPから。
「「大災禍」と呼ばれる世界規模の混沌から復興した世界。かつて起きた「大災禍」の反動で、世界は極端な健康志向と社会の調和を重んじた、超高度医療社会へと移行していた。そんな優しさと慈愛に満ちたまがい物の世界に、立ち向かう術を日々考えている少女がいた。少女の名前は御冷ミァハ。世界への抵抗を示すため、彼女は、自らのカリスマ性に惹かれた二人の少女とともに、ある日自殺を果たす。
13年後、霧慧トァンは優しすぎる日本社会を嫌い、戦場の平和維持活動の最前線にいた。霧慧トァンは、かつての自殺事件で生き残った少女。
平和に慣れ過ぎた世界に対して、ある犯行グループが数千人規模の命を奪う事件を起こす。犯行グループからの世界に向けて出された「宣言」によって、世界は再び恐怖へと叩き落される。霧慧トァンは、その宣言から、死んだはずの御冷ミァハの息遣いを感じる。トァンは、かつてともに死のうとしたミァハの存在を確かめるため立ち上がる。」
生府(大災禍によって無くなった政府に代わる統治機構。)のWHO螺旋監察事務局の上級監察官の霧慧(きりえ)トァン(cv沢城みゆき)、御冷(みひえ)ミァハ(cv上田麗奈)、零下堂(れいかどう)キアン(cv洲崎綾)の、15歳のときに「仲の良い」かつ「一緒に自○を企てた」同級生3人、
トァンの上司で首席監察官のオスカー・シュタウフェンベルク(cv榊原良子)、砂漠の民のリーダーのアサフ(cv大塚明夫)、インターポールの捜査官だがミァハらの企みに加担しているエリヤ・ヴァシロフ(cv三木眞一郎)、WatchMe(恒久的な健康社会を目指す生命至上主義を支える高度医療システム、体内監視システム。)を開発した冴紀(さえき)ケイタ(cvチョー)、トァンの父でWatchMeを開発した霧慧ヌァザ(cv森田順平)など。

○ 日本の都市のビルが、高く、角が丸っこいだけではなく、ビルの外壁に太い血管のようなものが血管のように巻き付いていました。
見た目の柔らかさからしてアニメ世界の「優しい」ものの象徴でしょうし、同時に、人を「優しく」縛っているものの象徴でしょう。
少し不気味な柔らかさでした。
○ 他人が具合が悪くなっても自分のせい、見ず知らずの赤の他人が死んでも悲しんだり、そんな「優しい世界」はまがいものだし、WatchMeに全てを監視されるのは嫌だから、WatchMeが稼働する成人前に自○する15歳の3人というのは、良し悪しは抜きにして、何ら不思議のない行動です。
アニメ内では、その後、同じ理由により10代の自○が増えているとのことでした。
キアンの密告でキアンとトァンだけが助かり、13年後、自責の念を持ち続けたキアンはミァハ(実は助かっていた。)による脳への干渉によってトァンと食事中に集団自殺の1人として食事用のナイフで自○し(先が丸いから、あんなに簡単に刺さるものかとは思いましたが。)、そこから物語が動いていきますが、それでも、抑揚が少ないこと、設定の説明セリフが多いこと、その見せ方に今一つ工夫が足りないので少し退屈でした。
ところで、久しぶりに会ったのに、キアンは食事、トァンは飲み物だけだったと思いますすが(先に食べ終えたのかなあ?。)、WatchMeを拒否(どういう仕組みで拒否できたのかは、説明がなかったのか、あったとしても覚えていない。)したトァンがミァハのことを引きずっていて、受け入れて優しい国民として生きているキアンに違和感を感じているからでしょうが、それが強い違和感であることを表しているのでしょうが、そこまでするトァンというのも子供だなあ、と。
○ 1週間以内に誰か1人を殺さないと自○するようにすると宣言されて混乱する各国の国民。
誰かを殺したり、自○したり、それでもそれは、それぞれの「意思」による選択です。
そんなときにどうするかは、実際に直面しないと分からない部分があります。
ただ、見方の違いというだけで、どちらも間違っているというわけではありませんから、自分の意思で選ぶことは必要ですね。
○ ハーモニー・プログラムの副作用として、プログラムを実施すると人の意識が消滅してしまうということで、プログラムを実施せざるを得ない状況に持っていこうとするミァハら。
意識がなくなっても、それはそれで本人は幸せなのでしょう。
前にも何回か書きましたが、どんなに物質的・精神的に恵まれていても、周囲の人が何を言っても、本人が幸せと感じていなければ幸せではありませんから。
まあ、そんな世の中は嫌ですけどね。
(→リンク「サイコパス感想。「人間」の脳の集合体であるシビュラシステムに支配されることに疑問を感じる「人間」と感じない「人間」」)
○ トァンの行動原理は、最初から最後までミァハへの愛になっていて、15歳時に口付けもあったりして ゆり。
だから、15歳の時のミァハでいてほしいからとともに、ミァハのせいで死んだキアンと父の復讐をしたいから、ミァハを銃で撃つラスト。
ミァハが目指したハーモニー・プログラムによる世界にミァハが生きることが出来ないようにしたトァン。多くの自○から人類を救い、ミァハにも復讐したというトァン。
ただ、ミァハは生まれながら意識がない民族だったけれど、生まれ故郷のチェチェンでの戦争のときに、無理矢理に軍隊の慰安婦にさせられて地獄を見ている内に意識が芽生えたとのこと(確か、小学生に相当する年齢のとき。)。
ということは、ハーモニー・プログラムにより無くなった意識も、いつの日か戻るのかも知れません。
○ 朝日新聞の全面広告、2回、デジタル版から。


アニメジャパン2015にて。とても評価の高い原作。

【shin】