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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 18

2022年07月21日 | 霊感少女 さとみ 2 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪
 さとみは松原先生と谷山先生とに挟まれながら歩く。アイたちがその後に続く。
「ちょっとぉ、あなたたちは関係ないでしょぉ?」谷山先生が振り返って、朱音に言う。一番言い負かせそうだと思ったのだろう。「午後の授業もありますからねぇ、お戻りなさぁい!」
「……何だとぉ……」そう低くつぶやいて前に出てきたのはアイだった。「わたしたちに関係が無い、だとぉぉ!」
 アイは殺気を含んだ眼差しを谷山先生に向け、一歩前に出る。谷山先生は短い悲鳴を上げると、松原先生の陰に回った。
「松原先生からも、何かおっしゃってくださいぃ!」谷山先生はきいきい声で言う。「先生が顧問をなさっておいででしょう?」
「まあ、確かにボクは『百合恵会』の顧問です」松原先生はにやりと笑む。「そして、綾部も『百合恵会』ですからね。それに、この生徒たちも『百合恵会』です。つまりは全員が関係者ですよ」
「そうです!」しのぶがむっとした顔を谷山先生に向ける。「関係者って事で言えば、谷山先生こそ、関係が無いじゃありませんか!」
「そうです!」朱音も言う。「それに、どうしてわたしに向かって言ったんですか? わたしなら言い負かせそうだって思ったんですか?」
「え、それはひどい!」しのぶが言う。「それって、差別じゃん! 虐めじゃん! 教師と言う立場を利用したティチャーハラスメントだわ!」
「略して、ティーハラね!」朱音が叫ぶ。「ひどぉい! 谷山先生、ティーハラですよ!」
 朱音としのぶは「ティーハラ、ティーハラ」と繰り返しながら、手を取り合って廊下を跳ね回る。アイは腕組みをしてじっと谷山先生を睨んでいる。麗子は困惑の表情だった(一番まともな反応かも知れない)。
「ここ学校内ですわよぉ!」谷山先生が叫ぶ。「静かになさぁい!」
「あんたの方が静かにしろってんだ!」アイが、谷山先生を睨みながら、低い声で言う。「それに、校長室なら先生二人も引率にいらないぜ。松原先生だけで良いんじゃね?」
「そう思います!」しのぶが右手を上げて発言する。「片岡さんは谷山先生のお知り合いだったとしても、今は会長とお会いするのが目的なら、谷山先生はいらないと思います!」
「それなら、あなたたちだっていらないでしょう!」谷山先生は反論する。「綾部さんだけいれば、事は足りるのよぉ!」
「だから、わたしたちは、会長と同じ『百合恵会』のメンバーだし、松原先生は顧問です!」しのぶは退かない。「それに、今回の出来事に関しては、わたしたちだって関係しているんです。一番関係していないのは、谷山先生です!」
「まあぁぁ……」谷山先生は怒りで震えている。しかし、反論が出来なくなってしまった。「勝手にしなさぁい!」
 谷山先生は言うと、行ってしまった。
「……お前たち、ちょっとやり過ぎだぞ」松原先生が困った顔を皆に向けながら言う。「何だかんだ言って、片岡さんを紹介してくれたのは谷山先生なんだからなぁ」
「それとこれとは別です!」しのぶがきっぱりと言う。「わたしたちを関係ない者としたのが許せません! 一番関係ないのは谷山先生だって言うのに!」
「分かった、分かった」松原先生は苦笑する。「まあ、ボクもそうは思っていたけどね。ほら、向こうは歳も上だし、教師歴も長いし…… まあ、大人の事情だよ」
「松原先生がそんな事言うなんて、情けねぇなぁ……」アイが口を尖らせる。「これだから、大人って嫌いだ」
「そう言うなって」松原先生が言う。「こう言っちゃなんだけど、お前もいずれは大人の仲間入りだ。そうなりゃ、分かるさ」
「百合恵さんもそうだって言うのかい、先生?」
「いや、あの人は、その、特別だ」
「あ~っ! 松原先生、赤くなったぁ!」朱音が目をきらきらさせて言う。しのぶも同じになる。「そこの所、詳しく!」
 わあわあと賑やかな中にあって、さとみはぽうっとしたままで立っている。その事に麗子は気がついていたが、本能が関わらない方が良いと囁いていたので、知らん顔をしていた。実際、さとみは集まっていた霊体の仲間たちと、自分の霊体を抜け出させて話をしていたのだ。
「そうかい、いよいよってわけだねぇ……」珠子がうなずく。「思ったより早く段取りが出来たねぇ」
「そりゃあ、片岡さんだものさ」静が自慢げに言う。「わたしはそろそろだって思っていたよ」
「碌で無しどもが集まり過ぎだわねぇ……」富が周囲を見ながらため息をつく。「さとちゃん、しっかりするんだよ」
「何かあったら、あっしらが居やすんで」豆蔵が真剣な顔で言う。「遠慮なくおっしゃって下せぇ。嬢様のためなら、たとえ火の中水の中でやすから」
「わたしも同じです」みつが言う。「さとみ殿を邪魔する者はわたしが斬り伏せます」
「及ばずながら、わたくしも!」冨美代が薙刀を取り出す。「さとみ様はさゆりのみをお相手なされませ!」
「そうよ」虎之助が笑む。「さっさと終わらせて、わたしの竜二ちゃんを取り返しましょう」
「そうね」さとみは皆を見回して笑む。「任せて、って、偉そうには言えないけど、頑張るわ!」
「……あ、嬢様、皆さんが動きやすぜ」
 豆蔵が言う。さとみが振り返ると、松原先生たちが歩き出していた。さとみはあわてて霊体を戻す。さとみは、ぎくしゃくと動き出す。
「……大丈夫かねぇ?」静がつぶやく。「何だか危なっかしいけど……」
「大丈夫ですわ。あの娘、わたしたち以上ですもの」
 さとみたちが校長室に入って行くのを見届けながら、富が言う。


つづく

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