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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 19

2022年07月22日 | 霊感少女 さとみ 2 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪
「やあ、お待たせしましたね」
 校長室に入ってきたさとみたちを見て、スーツ姿の片岡は立ち上がり、笑顔を見せた。つられて末松校長と坂本教頭も立ち上がった。しかし、二人ともばつの悪そうな顔をしてすぐに座り直した。
「片岡さん、ありがとうございます」
 さとみはぺこりと頭を下げた。
 それを見たアイと朱音としのぶたちは、直角にからだを曲げた。麗子は一歩下がって、無関係の風を装った。
「ありがとうございますぅぅぅ!」
 あまりの大きな声に、坂本教頭が立ち上がり、アイたちを睨む。
「こら! ここは校長室だ! しかも、お客様がいるのだぞ! 我が校の品位を下げるつもりかね!」
「……はあ?」アイがからだを起こして坂本教頭を睨み返す。「会長が頭を下げているのに、舎弟がふんぞり返っていられるわけねぇだろうが! 教頭だって、校長がぺこぺこしたら、それに合わせてんじゃねぇかよう!」
「なっ……」
 坂本教頭は末松校長を見る。しかし、末松校長は見放してしまったかのように無表情だ。坂本教頭は困惑の表情のまま立っている。
「いえいえ、とても礼儀正しいお嬢さん方じゃありませんか」片岡は笑む。「立派な学校だと思いますよ」
「そうですか、そう言って頂けるのは嬉しいですな!」末松校長が満面の笑みで片岡を見る。「教頭は、頭が硬くていかんのですよ。何時も、時代に合わせた指導をと言っておるのですけどねぇ…… なあ、坂本教頭?」
「……はい、左様です」
 嘘つけ、と言った表情のアイを、さとみは目で制する。
「……それで、片岡さん。封印の手段が出来たんですね」さとみが片岡を見る。片岡はうなずく。「良かったです。さゆりの力が強くなっていると言う話なんです」
「そのようですね」片岡はさとみでは無くトロフィーの並んだ壁を見て言う。「皆さんが教えてくれましたよ」
 さとみが片岡の視線を追うと、トロフィーの前に珠子たちが立っていた。片岡は皆さんと言ってはいるが、静一人が盛んに熱弁を振るっていた。富はやれやれと言った顔でさとみを見る。どうやら、静は片岡に猛アピールも兼ねているのだろう。
「今は気配が無いんだそうです……」一通り静の話が終わった所で、さとみが言う。「だから、今、封印をしても捕まらないかも知れません……」
「そのようですね」片岡は豆蔵がうなずくのを見て言う。「となると、待つしかありませんね」
「……あのう」しのぶがおずおずと右手を上げて割って入って来た。「封印って、どうやるんですか?」
「こら、しのぶ!」アイが一喝する。「今は会長がお話し中だろうが!」
「ははは、良いのですよ」片岡はアイを見ながら笑む。「あなたはさとみさん第一なのですね。立派です。さとみさんも心強い事でしょうね」
「え? いや、その……」アイは口籠った。面と向かって褒められる経験の少ないアイは、どうして良いのか分からなかった。「とにかく、あんまりでしゃばるんじゃねぇぞ……」
「は~い……」
 しのぶはアイに頭を下げる。頭を上げると、瞳をきらきらさせて片岡を見つめる。「心霊モード」になっているのだ。
「それで、どうやるんですか?」しのぶは片岡に訊ねる。「そこの所、詳しく!」
「これですよ……」
 片岡は上着の内ポケットから幅1センチ程で長さ10センチ程の銀色に光る金属製の棒を取り出した。取り出すと、それをしのぶに差し出す。しのぶはさとみを見る。さとみはうなずく。そして、しのぶは右手で棒を受け取った。ずしりとした手応えがあった。
「……意外と重たいんですね」
「そうですね」片岡はうなずく。「それは筒になっているのですよ。上部がはめ込みの蓋になっています」
 しのぶは筒を顔の前に持ってくる。確かに、上部から三センチほどの所でぐるりと切れ目が入っている。この部分が蓋なのだろう。しのぶは筒を左手に持ち替え、蓋の部分を右手でつかんで引っ張ってみた。だが、びくともしない。
「のぶ! ちょっと、わたしにも貸して!」
 朱音も瞳をきらきらさせながら言う。朱音も「心霊モード」だ。しのぶから受け取って、同じように蓋の部分を引っ張ってみる。やはり、びくともしない。
「アイ先輩、やってみます?」
 朱音がアイに振り返り、筒を差し出す。
「お前たち、それはおもちゃじゃねぇんだぞ」アイが二人を叱る。「お返しするんだ」
「いえ、大丈夫ですよ」片岡は穏やかに笑んでいる。「アイさんも試してみてください」
「そう、ですか……」アイは答えると朱音から筒を受け取る。二人と同じようにして試す。びくともしない。「……ダメだ。これは力で開けるものじゃないな……」
「そうです。良くお気付きになりましたね」片岡が言う。「……そちらのお嬢さんもお試しください」
 片岡は麗子に向かって言う。麗子は無言で頭を左右に振る。
「麗子先輩は、ちょっと臆病なんです」しのぶが言う。「そして、会長の幼馴染なんです」
 みつが片岡の所に進み出て、何やら話をしている。片岡は驚いた顔で麗子とアイを見たが、すぐに笑みを浮かべてうなずいた。……きっと、みつさんは二人が憑きやすいって話をしたのね。より憑きやすいのは麗子の方だけど。さとみは思った。
「麗子、やってみたら?」さとみが促す。「それとも、みんなの前で言われたい(さとみは口を動かす。『弱虫麗子』と口は動いた)?」
「何よう!」麗子はさとみを睨み返す。心霊的なものは苦手だが、さとみに小馬鹿にされるのは許せない。「やるわよ、アイ、貸してみて!」
 麗子はアイから筒を受け取る。左手で持って、右の指先で蓋を引っ張る。
「あらっ!」
 麗子は思わず声を出す。蓋がするっと外れたのだ。左手に筒、右手に蓋を持ち、おろおろしている。
「ほう……」片岡は感心したようだ。「これは相当の霊力が無いと開かないのですよ」
「麗子先輩! 凄いじゃないですかぁ!」
 しのぶが叫ぶ。
「麗子先輩、本当は凄い霊力の持ち主だったんですね!」
 朱音が叫ぶ。
 しのぶと朱音は「霊力! 霊力!」と言いながら、校長室で跳ね回る。アイも感心したような顔で麗子を見ている。


つづく

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