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シュタークスミス博士の大発明 23 ―着替え―

2009年03月15日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで着替えで無駄に時間をとられる事はなくなったぞ!」
 博士の発明したものは、博士の首から下全体を正面と背後から挟む二つの大きな面を持った装置だった。それぞれの面は博士の体型通りにへこんでおり、白い布がそのへこみにセットされている。
 連動しているコンピューターを操作して、必要な服の種類を選ぶ。それから、博士が二つの面の間に立つ。装置が作動し、博士を正面と背後から挟み込む。白い布に服の種類の情報が取り込まれ、博士を挟みながら、服が形成される。体型にピッタリに形成された服は特殊な糊で接着される。二つの面が離れれば、そこには新たな服を来た博士が立っていると言うわけだった。
「一人で研究をしている時は、どんな格好でいても迷惑をかけはしない。しかし、最近やたら増えてきた会合やら懇談会やら親睦会やらに、まさか普段着のままでは出られない」博士はコンピューターを操作した。今晩親睦会があるのだ。それも、何とか言う国のお偉いさん主催なので、失礼な格好ははばかられた。「出たくは無いが、発明品を披露できると言うので行く事にした。とは言え、そんな場所に相応しい服など待ってはいないし、はっきり言って分からない。それに、どうせその時しか着ないものだ。わざわざ買うのも無駄だ」
 博士は二つの面の間に立った。装置が作動し正面と背後から挟まれ始める。体型通りなので苦しくはない。布が糊で接着され、きゅっとからだを締め付ける。とは言え、軽いものなので痛みは無い。完成を知らせるチャイムが鳴り、二つの面が離れ始めた。服が形成されたのだ。
 博士は出来上がった服をまとって装置から出てきた。
「よし、これで今日の会は申し分ないぞ!」
 博士は満足そうにうなずきながら親睦会へと出掛けて行った。中世の貴族の格好をして・・・
 博士は様々な知識を有しているが、残念ながら衣服に関しては全くの白紙だった。だからと言って、こんな格好が現在に通じるはずは無い。きっと今晩は笑い者にされてしまうだろう。
 知識と常識、人と接するには、常識が不可欠なものなのだ。


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