「清水さん清水さん清水さん清水さん清水さん清水さん清水さん清水さん清水さん!」
必死で叫ぶコーイチを清水が冷ややかな眼差しで見上げた。
「また何か出たのかしら?」
のん気な声で清水が言う。コーイチは持った受話器を清水に向かって突き出し、口をパクパクさせている。やれやれと言った表情で清水は立ち上がり、コーイチの受話器を取り、耳に当てた。
「もしもし…… あらあら切れちゃってるわ。これじゃ何だか分からないわね」
清水がつまらなさそうに受話器をコーイチに渡した。
「女の人の声が、若い女の人の声が、声が、声が……」
コーイチは落ち着きを失っていた。それを見ていた印旛沼が寄って来て、両手をパンとコーイチの耳元で打ち鳴らした。コーイチは飛び上がった。
「わっ、わっ、わっ、わっ、わ…… あれ?」
正気に戻ったようだ。清水が心配そうな顔をしている。
「何を聞いたのかしら。女の人の声がどうとか、うわ言で言ってたけど」
「あっ、そうなんです! 引き出しの中に女の人の顔が見えたって言ったじゃないですか」
「そう言っていたわね。私の呪いの化学反応らしいって事だったわね」
「実は、その女の人からの電話だったんです。『さっき会ったじゃない。引き出しの中で……』なんて言ってました!」
清水はしばらく腕を組んで考え込んでいたが、不意にコーイチの顔を見つめた。
「コーイチ君、その女の人の見た時とか声を聞いた時とかに、イヤ~な気持ちになった?」
「いえ、驚きはしましたが、イヤ~な気持ちではなかったような……」
「じゃあ、コーイチ君の好みっぽい感じだった?」
「ええ、はあ、まあ、大体……」
なんとなく口元が緩む。
「ははーん」
清水は頷いた。
「これは予言よ」
「予言…… ですか?」
突然の言葉にコーイチはポカンとした顔になった。
「そう、呪いっていうのは、簡単に言うと暗黒面なわけ。その暗黒面同士が反応し合って、全く逆の世界を作り出してしまったんだわ。つまり、ちょっと変な言い方だけど、良い呪いが生まれたのよ」
清水が熱弁を振るった。
「それ、本当なんですか?」
コーイチが疑り深そうな声を出す。
「ええ、きっと、多分、おおよそ……ね。で、コーイチ君に見えたり聞こえたりしたのは、近々、そんな女の人が現われるって事の予言なんじゃないかしら。もしそうなら、良かったじゃない、彼女が出来て」
「何だって、コーイチ君に彼女が出来たって?」
林谷が割って入って来た。清水は「ええ、そうなの」と相槌を打つ。
「よかったねぇ。今日のパーティで紹介して欲しいねぇ」
印旛沼も話に入って来る。清水は「そうよねぇ」と相槌を打つ。
「いえ、そうだと言うわけじゃなくて、あくまでも清水さんの予想でして……」
「予想じゃないわ、予言なのよ!」
清水がきっぱりと言った。清水さん、さっきは「きっと、多分、おおよそ」なんて言っていたのに……
「いやいや、今夜が楽しみだな」
林谷が言った。
「本当にね」
印旛沼が言った。
コーイチは何とも答えようがなく、ただニコニコしているしかなかった。
つづく
必死で叫ぶコーイチを清水が冷ややかな眼差しで見上げた。
「また何か出たのかしら?」
のん気な声で清水が言う。コーイチは持った受話器を清水に向かって突き出し、口をパクパクさせている。やれやれと言った表情で清水は立ち上がり、コーイチの受話器を取り、耳に当てた。
「もしもし…… あらあら切れちゃってるわ。これじゃ何だか分からないわね」
清水がつまらなさそうに受話器をコーイチに渡した。
「女の人の声が、若い女の人の声が、声が、声が……」
コーイチは落ち着きを失っていた。それを見ていた印旛沼が寄って来て、両手をパンとコーイチの耳元で打ち鳴らした。コーイチは飛び上がった。
「わっ、わっ、わっ、わっ、わ…… あれ?」
正気に戻ったようだ。清水が心配そうな顔をしている。
「何を聞いたのかしら。女の人の声がどうとか、うわ言で言ってたけど」
「あっ、そうなんです! 引き出しの中に女の人の顔が見えたって言ったじゃないですか」
「そう言っていたわね。私の呪いの化学反応らしいって事だったわね」
「実は、その女の人からの電話だったんです。『さっき会ったじゃない。引き出しの中で……』なんて言ってました!」
清水はしばらく腕を組んで考え込んでいたが、不意にコーイチの顔を見つめた。
「コーイチ君、その女の人の見た時とか声を聞いた時とかに、イヤ~な気持ちになった?」
「いえ、驚きはしましたが、イヤ~な気持ちではなかったような……」
「じゃあ、コーイチ君の好みっぽい感じだった?」
「ええ、はあ、まあ、大体……」
なんとなく口元が緩む。
「ははーん」
清水は頷いた。
「これは予言よ」
「予言…… ですか?」
突然の言葉にコーイチはポカンとした顔になった。
「そう、呪いっていうのは、簡単に言うと暗黒面なわけ。その暗黒面同士が反応し合って、全く逆の世界を作り出してしまったんだわ。つまり、ちょっと変な言い方だけど、良い呪いが生まれたのよ」
清水が熱弁を振るった。
「それ、本当なんですか?」
コーイチが疑り深そうな声を出す。
「ええ、きっと、多分、おおよそ……ね。で、コーイチ君に見えたり聞こえたりしたのは、近々、そんな女の人が現われるって事の予言なんじゃないかしら。もしそうなら、良かったじゃない、彼女が出来て」
「何だって、コーイチ君に彼女が出来たって?」
林谷が割って入って来た。清水は「ええ、そうなの」と相槌を打つ。
「よかったねぇ。今日のパーティで紹介して欲しいねぇ」
印旛沼も話に入って来る。清水は「そうよねぇ」と相槌を打つ。
「いえ、そうだと言うわけじゃなくて、あくまでも清水さんの予想でして……」
「予想じゃないわ、予言なのよ!」
清水がきっぱりと言った。清水さん、さっきは「きっと、多分、おおよそ」なんて言っていたのに……
「いやいや、今夜が楽しみだな」
林谷が言った。
「本当にね」
印旛沼が言った。
コーイチは何とも答えようがなく、ただニコニコしているしかなかった。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます