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お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

妖魔始末人 朧 妖介  1

2007年12月23日 | 朧 妖介(全87話完結)
 ・・・なんか嫌な感じ・・・
 中村葉子はいつも近道に使っている「あけぼの児童公園」に一歩足を踏み込んだ途端にそう感じた。
 今日も残業が長引き、終電でやっと帰って来た。とにかく疲れ果てていた。会社がかなり厳しい状況で、あれこれと難題が山積みのため、ここの所毎日がこんな状態だった。
 駅から歩いて二十分ほどの所にあるアパートは、この公園を突き抜けて行けば十分もの節約になる。最初は人気の無い暗いこの公園を抜けることには抵抗があったが、くたくたの体には抗し難い魅力だった。何度も抜けているうちにここが当たり前の通い道になっていた。出勤時にも利用するようになった。
 その当たり前になった通い道が、今夜はいつもと違った感じがする。
 何が違うんだろう・・・ 空気がなんか生臭い? それだけじゃない、誰かいるみたい・・・
 ハンカチを取り出し、口と鼻を押さえ、足音を立てないようにして公園の端をそろりそろりと歩く。まだ肌寒さの残る春だと言うのに、じっとりとした汗が全身に吹き出した。
 公園は中央に子供たちが走り回れるようにグラウンドがあり、その周りにわずかだが遊具が設置されていた。遊具とグラウンドの境目に街頭が一つ立っていて、グラウンド側をうっすらとした灯りが照らしていた。
 なに? まさか喧嘩? 
 葉子は咄嗟に手近かの遊具の陰に身を潜めた。
 街頭の灯りの中に男が浮かび上がっていた。全身が黒ずくめだった。やや前屈みになり、両腕を広げていた。右手に二十センチほどの木の棒の様なものを持っていた。
 男から数メートル離れた所に、街頭が届かず、輪郭だけしか分からなかったが、もう一人が対峙する様に立っていた。落ち着き無く体が揺れている。
 生温かい風が纏わり着くようにゆっくりと起こった。頭上の雲が動き、月が覗いた。薄ぼんやりした月だった。
 淡い月明かりにもう一人の姿が晒された。
「きゃああっ!」
 葉子は思わず悲鳴を上げた。

       つづく




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