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シュタークスミス博士の大発明 21 ―過去、直します―

2009年01月03日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで過去を直す事ができるぞ!」
 博士の発明したものは、研究室の一画に大きく場所をとって設けた、モニターやらマイクやらデジタルカウンターやらが付いている通信機だった。
「人は今現在の境遇を振り返る時に、『あの時、別の考えをしていればよかった』とか『あの時、別の行動をしていればよかった』などと思うものだ」
 博士は通信機の前の椅子に座った。
「この機械は、今現在に至る決定を下した時の自分を探し、脳内へ直接語りかけて、さも本能や勘と言ったものが働いたように思わせ、その時の考えや行動を直し、より良い今現在を生み出す装置なのだ!」
 博士自身数十年前に、取り付かれたように試作の励んだ発明品が、全くの失敗作であり、そのために費やした膨大な時間をとても後悔していたのだ。
「この通信機で、当時の自分に語りかけ、無駄な事をやめさせよう。そうすれば、もっと良い発明に取り掛かれると言うものだ。結果として、今現在はずっと良いものになっているはずなのだ!」
 通信機を作動させる。デジタルカウンタ-で入力を繰り返しながら、失敗発明に取り組んでいた時代を探す。やがて、モニターに、失敗発明に必死に取り組んでいる若い博士が映った。
「やっと見つけたぞ」博士はマイクに向かって話し始めた。「『そんな無意味な発明には手を出すな! もっと別の発明をするのだ!』」
 モニターの若い博士は手を止め、別の発明に取り掛かった。
「よしよし、これで無駄な時間が無くなったぞ」博士は嬉しそうに手を叩いた。しかし、手は互いの手を通り抜けてしまった。「どう言う訳なんだ?」
 からだが透き通っていた。今にも消えて無くなりそうだ。
「そうか! 過去が変わったのだから、当然、今現在も変わってしまう。今いる自分は失敗発明をしていた世界のものだ。それが無いんだから、消えてしまって当然か・・・」
 失敗発明のあった世界は、博士もろとも消えてしまった。


博士の発明に温かい拍手をお願い致しまするぅ


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