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コーイチ物語 2 「秘密の消しゴム」 160

2019年04月07日 | コーイチ物語 2(全161話完結)
 洋子が戻ったのはパーティ会場だった。
 エンピツは消しゴムを使った場所に戻るようだった。
 コーイチと座っていた「ガンジス寿司」の椅子には、鞍馬商事の谷畑准一が座っていて、時折「芳川さ~ん……」つぶやきながらおいおい泣いていた。戻ってきた時間も行く時とさほど変わっていないようだ。
 洋子は事情を知っている綿垣社長を探し出し、事の顛末を話した。
「ほー、そうかね」酔ってご機嫌になっている社長は洋子の肩をポンポンと叩いた。「解決したのならお祝いだ。今日は徹底的に飲みなさい。詳しい話は明日にしようか」
 呆れた洋子はやけになってがぶ飲みをした。そのせいで翌日は二日酔いだった。やっと社長に報告できたのはさらにその翌日だった。
 社長は解散した海外支社の元メンバーたちに招集をかけた。
「集合場所は支社のあった某国だから、YOU、直ちに向かってね」
 社長は洋子に言った。
 洋子は空路で丸二日かけて某国に着いたが、政情不安があり、入国が許可されるまでさらに丸一日税関で止められた。やっと入国し、元メンバーたちと再会した。そして、エンピツと消しゴムを見せた。元メンバーたちは大いに喜んだ。その日は宴会になった。洋子は疲れと仲間の強引な酌とで翌日は二日酔いになってしまい、終日ベッドの上だった。
 何とか回復して元メンバーを集め直し、大王以下四人を連れ戻すので収監先となる刑務所を手配してもらった。手配が済んでまた宴会になった。洋子は気を付けながら飲んでいたが、最後の一杯が元メンバーの家で醸造した酒で、それが強烈だったせいで、丸三日、前後不覚のまま過ごしてしまった。
 そこから何とか回復して、消しゴムを使って花子たちのところへ戻ってきたと言う訳だった。

「へ~っ、大変だったんだね……」
「そうよ、洋子ちゃん、大変だったのよ」花子は真面目な顔で言う。「洋子ちゃんはベリーヌ、マスター、ショーグン、大王って順番であっちに送り返したのよ。ちゃんと確認しなきゃって言って、一人ずつに洋子ちゃんが付き添って……」
「そうなんだ…… ぼくが気を失っている間に、そんなことが……」
「でも、おもしろかったわよ」花子が思いだし笑いをする。「あっちへ行ったと思ったら、すぐに帰ってきて。でも、あっちじゃ何日も経っていたんだそうよ。往復するたびに『二日酔いです!』とか『お肌のお手入れもできません!』とか文句言ってたわ」
「大変だったんだね……」
「それらが終わった時に、六郎が起き出してきて、『よくもやりやがったな! 喰らえ六田流大王拳!』って叫んだけど、洋子ちゃんがさらさらと名前を書いてあっちに戻したわ」
「付き添わなかったのかい?」
「当たり前でしょ!」
「そうか……」コーイチは「わああああぁぁぁぁ!」と叫びながら消えていく六郎を思い描いていた「そうだ、逸子さんは?」
「さっき戻ったわ。洋子ちゃんの付き添いでね。……洋子ちゃん、そろそろ戻って来るんじゃないかしら?」
「逸子さん、ぼくが気がつくの待っていてくれてもいいだろうに……」
「心配ないわ、次に戻るのはコーイチさんなんだから」
「え? だって……」
 うっすらとした人影が現れ、それが次第にはっきりとしてきた。洋子が自前のカンフー着を着て立っていた。


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