ああ

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乳癌

2008-11-08 18:19:38 | 臨床医の基礎知識
乳癌

●:乳癌取扱い規約、第15版、日本乳癌学会(編)金原出版、東京、2004

【乳癌の理解に必要な解剖】
●腋窩動脈 A. axillaris
○最上胸動脈 A. thoracica suprema 大胸筋と小胸筋の間に入る。小胸筋と前鋸筋に分布
○胸肩峰動脈 A. thoracoacrominalis
   -鎖骨枝 R. clavicularis
   -胸筋枝 R. pectorales
   -三角筋枝 R. deltoideus
   -肩峰枝 R. acrominalis
○外側胸動脈 A. thoracica lateralis 前鋸筋の上を垂直にさがりこの筋に分布。長胸筋とは無関係に走ることも多い
   -外側乳腺枝 R. mammarii laterales
○肩甲下動脈 A. subscapularis
   -胸腹壁静脈 Vv. thoracoepigastricae
   -肩甲回旋動脈 A. circumflexa scapulae
   -胸背動脈 A. thoracodorsalis 肩甲骨外側縁に沿って走り、広背筋と前鋸筋に分布。
○前上腕回旋動脈 A.circumflexa humeri anterior
○後上腕回旋動脈 A.circumflexa humeri posterior

●腕神経叢 Plexus brachialis
○鎖骨上部 Pars supraclavicularis
1.肩甲背神経 N. dorsalis scapulae
2.長胸神経 N.thoracicus longus 外側胸動脈に沿って前鋸筋に分布
3.鎖骨下筋神経 N. subclavius
4.肩甲上神経 N. suprascapularis
5.肩甲下神経 N. subrascapularis
6.胸背神経 N. thoracodorsalis 広背筋へ分布
○鎖骨下部 Pars infraclavicularis
1.内側胸筋神経 N. pectoralis medialis 大、小胸筋に分布
2.外側胸筋神経 N. pectoralis lateralis 大胸筋に分布
3.筋皮神経 N. musculocutaneus
4.内側上腕皮神経 N. cutaneus brachi medialis
5.肋間上腕神経 Nn. intercostobrachiales



●浸潤性乳管癌 infiltrating ductal carcinoma / invasive ductal carcinoma
●非浸潤性乳管癌 ductal carcinoma in situ; DCIS

●乳管内進展巣 extensive intraductal component; EIC
●EICの中でもcomedoタイプは広範囲に広がりやすく再発しやすい
●乳管内癌の局所再発の予測 Van Nuys Prognostic Index; VNPI

●MMGのEIC検出感度は40~80%
●USではEICは主腫瘤の周囲に低エコーの管状構造物として描出されることもある
●乳がん診断能として造影CTとMRIとは施設で違う

●乳頭分泌液擦過細胞診
●穿刺吸引細胞診 Fine needle aspiration cytology; FNAC
●Core needle biopsy; CNB
●vacuum-assisted large core needle biopsy; Mammotome TM

●胸筋合併(定型)乳房切除術 Halsted-Meyer法 =乳房+大胸筋+小胸筋+腋窩リンパ節  適応:大胸筋広範囲浸潤
●胸筋温存(非定型)乳房切除術(Patey法) =乳房+小胸筋+腋窩リンパ節 適応:腋窩リンパ節転移が著しい
●胸筋温存(非定型)乳房切除術(Auchincloss法)=乳房+腋窩リンパ節
●乳房扇状部分切除術 quadrantectomy =Bq+Ax
●乳房円状部分切除術 wide excision =Bp+Ax
●腫瘤摘出術 tumorectomy, local excision, lumpectomy =Tm+Ax

●腋窩リンパ節Level I:小胸筋外側縁より外側(brachial, subscapular,central,pectral)
●腋窩リンパ節Level II:小胸筋背側(Subpectoral)、および胸筋間(Interpectoral; Rotter)
●腋窩リンパ節Level III:小胸筋内側縁より内側
●鎖骨下リンパ節:最上部鎖骨下リンパ節(Halsted)を含む
●胸骨傍リンパ節
●鎖骨上リンパ節


●乳房温存療法の適応 :日本乳癌学会「乳房温存療法のガイドライン1999」
1. 腫瘍の大きさが3.0cm以下であること
2. マンモグラフィーなど画像上、広範な乳管内進展を示す所見がないこと
3. 多発病巣がないこと
4. 放射線照射が可能であること(重篤な膠原病、放射線照射の既往、患者が放射線を希望しない場合などは適応外)
5. 患者が乳房温存療法を希望していること

●Bqの適応
1. 腫瘍-乳頭間が2cm以上ある
2. 術後照射しないつもりで手術的に根治する(美容的側面を犠牲にしない)
3. 乳管内進展による切除断端陽性を回避するために円状部分切除では不十分な場合

●乳癌のTNM分類
T0:原発巣を認めないもの
T1:しこりの大きさが2cm以下
T2:しこりの大きさが2cmより大きく5cm以下
T3:しこりの大きさが5cmより大きい
T4:しこりの大きさに関わらず、胸壁が固定されたり、皮膚の浮腫や潰瘍、衛星皮膚結節を生じているような場合。炎症性乳がんも含む
N0:リンパ節転移が無い
N1:乳がんが見つかった乳房と同じ側(同側)のわきの下のリンパ節に転移を認めるが、可動性良好
N2:わきの下のリンパ節に転移があり、かつリンパ節ががっちりと互いに癒着したり、周辺の組織に固定している状態
N3:わきの下のリンパ節に転移があり、また/もしくは胸骨の近くのリンパ節に転移がある
M0:遠隔転移がない
M1:遠隔転移がある
●ステージ分類: http://www.csp.or.jp/network/kisoChisiki/nw_Kensa_L1.html
●早期乳癌とは腫瘤の大きさが触診上2.0cm以下で、転移を思わせるリンパ節を触れず、遠隔転移のないもの
●リンパ節転移 0個: 5生率=90%以上 10生率=80%以上 再発なしの10生率=70%以上
●リンパ節転移 1-3個: 5生率=60-70% 10生率=40-50% 再発なしの10生率=25-40%
●リンパ節転移 4個以上: 5生率=40-50% 10生率=25-40% 再発なしの10生率=15-35%


●術後薬物治療のストラテジー
ER(+) PR(+) → ホルモン療法 : 閉経前 (1)LH-RH アゴニスト (2)抗エストロゲン (3)黄体ホルモン剤
                     : 閉経後 (1)抗エストロゲン剤 (2)アロマターゼ阻害薬
HER2(+) →分子標的療法: トラスツマブ(ハーセプチン)・・・(1/W 1.5hr 単独またはタキソールと)


【ホルモン薬】
●抗エストロゲン剤
TAM タモキシフェン(ノルバテックス):10年後の生存率20%増加、骨粗鬆症リスク減、子宮体癌リスク増
TORトレミフェン(フェアストン)
●LH-RHアゴニスト
ブセレリン(ゾラデックス)
リューブロレリン(リュープリン)
●アロマターゼ阻害薬
ファドロゾール(アフェマ)
ANZアナストロゾール(アリミデックス)
EXEエキセメスタン(アロマシン)
●黄体ホルモン剤
MPAメドロキシプロゲストテロン(ヒスロンH)

【分子標的薬】
●トラスツマブ(ハーセプチン)には心筋抑制作用がある

かきかけ


鼠径部のヘルニア

2008-10-08 15:18:44 | 外科医の基礎知識
外鼠径ヘルニア(indirect type):下腹壁動静脈の外側
内鼠径ヘルニア(direct type):下腹壁動静脈の内側
大腿ヘルニア:大腿輪(外腸骨静脈内縁・cooper靱帯・iliopubic tractで構成)

●Myopectineal orifice (3ヘルニアの脱出部位:by Fruchaud)
上縁:内腹斜筋、腹横筋腱膜弓
内縁:腹直筋外縁
外縁:腸腰筋
下縁:Cooper靱帯
●Hasselbach三角(内鼠径ヘルニアが脱出する部位)
上縁:腹横筋腱膜弓
内縁:腹直筋外縁
外縁:下腹壁動静脈
下縁:鼠径靱帯(1814Hasselbachが示したのはCooper靱帯)
●Trapezoid of disaster(mesh固定する際にタッカーを打ってはいけない部位)
上縁:iliopubic tract  内縁:精管   
神経・血管損傷を起こす恐れがある。

○横筋筋膜→内精筋膜、
○内腹斜筋→精巣挙筋

●従来法の適応
  ①後壁は正常、内鼠径輪の開大がない(1.5cm内、1横指大以内)
  ②若年者(20歳以下)
  ③腸管切除などで不潔になりメッシュを避けたい場合
  ④感染でメッシュを除去する際
●従来法による修復
a) Marcy法(内鼠径輪の縫縮):
b)iliopubic tract法:
  c)McVay法:横筋筋膜を切開。横筋腱膜弓とCooper靱帯を非吸収糸で縫合

●鼠径法(inguinal approach)のMcVay法
1)皮膚切開:鼠径靱帯に平行に大腿動脈拍動部から恥骨結節の外側(7-8cm)
2)鼠径靱帯の足側(卵円窩)にヘルニア嚢があること確認
3)外鼠径輪から外腹斜筋腱膜を切開し鼠径管を開ける。内鼠径輪から恥骨結節まで横筋筋膜を切開するとヘルニア嚢の頸部が出現する。
4)腹壁前脂肪を剥離しCooper靱帯、iliopubic tractを露出する。ヘルニア嚢にテーピングできるように剥離する。ヘルニア嚢が引き出せない場合は、裂孔靭帯に切開をいれる(正中側に向けて)。この時は死冠corona mortis(異常閉鎖動脈)に注意する。
5)ヘルニア嚢の処理
6)後壁補強=正中側(大腿輪内側まで):腹横筋腱膜・横筋筋膜・恥骨結節膜を縫合
7)大腿輪の縫縮+後壁補強=移行縫合(transition suture):腹横筋腱膜・横筋筋膜・Cooper靱帯・iliopubic tract  0PDS使用
8)減張切開

●大腿法(femoral approach)
1)皮膚切開:鼠径靱帯より足側、ヘルニア嚢の膨隆の真上に横切開
2)篩状筋膜を切開しヘルニア頸部まで剥離。サックを開き、内容の絞扼・壊死がないことを確認し腹腔内にもどす。ヘルニア嚢はできるだけ高位で結紮し切除。腸管壊死がある場合は新たな腹部切開を加えて腸切除する。
3)後壁補強:鼠径靱帯とCooper靱帯の縫縮(cooperへの運針が難しく恥骨筋膜への不完全なものになりやすく再発がある)。

●MeshPlugによる大腿法
外腹斜筋腱膜の外側に沿い剥離をすすめて卵円窩に到達する。ヘルニア嚢を開いて内容を確認した後にヘルニア嚢を腹腔内に反転しsmall sizeのplugを挿入する。Mesh辺縁と恥骨筋膜、鼠径靱帯、大腿血管鞘とを固定しその上にonlaypatchをあてる。

●Preperitoneal approach

かきかけ

膵頭十二指腸切除

2008-10-08 15:00:48 | 外科医の基礎知識
膵頭十二指腸切除術 PD: pancreaticoduodenectomy  
幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 PpPD: pylorus preserving PD
亜全胃温存膵頭十二指腸切除術 SSPPD:subtotal stomach preserving PD

【PDに関する報告】
●手術死亡率:1.4~4.9% J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2008;15(3):270-7. PMID: 18535764


【再建による名称】
I型:胆管、膵、胃の順に吻合 Whipple法など
II型:膵、胆管、胃の順に吻合 Child法など
IIIa型:胃、膵、胆管の順に吻合 今永法、Cattel法など
IIIb型:胃、胆管、膵の順に吻合
IV型:その他の吻合 胃膵吻合など

かきかけ

胆汁と胆汁酸

2008-08-10 09:32:40 | 臨床医の基礎知識
1. 胆汁酸
●コレステロールから、胆汁酸が合成される。
●胆汁酸は、体内コレステロール代謝の最終産物であり、肝臓は、胆汁として、胆汁酸やコレステロールを、体外に排出する。
●胆汁酸を含む胆汁には、水の表面張力を低下させ脂肪を乳化させる作用(脂肪の小腸での消化、吸収を促進する)や、アルカリ性なので胃から十二指腸に送り込まれる酸性の乳びを中和する作用や、多くの薬品、毒素、胆汁色素(ビリルビン)、無機物質(銅、亜鉛、水銀など)を、体外に排出する作用がある。
●胆汁酸(胆液酸)は、肝臓の肝細胞で、コレステロールから生成され、胆汁として胆嚢に蓄えられ、脂肪などの食事を摂取すると、十二指腸に分泌される。
●ヒトの胆汁酸には、一次胆汁酸(肝臓で合成される胆汁酸)のコール酸(80%)やケノデオキシコール酸(数%)と、二次胆汁酸(小腸の腸内細菌により一次胆汁酸から生成される)のデオキシコール酸(約15%)やリトコール酸(極微量)とがある。
●胆汁酸は、グリシン、タウリン(アミノ酸エチルスルホン酸:2-アミノエタンスルホン酸)などと抱合した後、胆汁として分泌され、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。
●胆汁酸は、抱合型の方が、肝毒性が弱く、肝臓から、胆汁として、排出される(胆汁酸は、抱合型の方が、胆汁中への排泄が促進される)。
●コレステロールから誘導されるコール酸(胆汁酸)が、タウリンと抱合(アミド結合)すると、タウロコール酸(抱合型胆汁酸)が生成される。
●コール酸が、グリシンと抱合(ペプチド結合)すると、グリココール酸が生成される。
●グリココール酸(コール酸のグリシン抱合体)が、一次胆汁酸中では、最も量が多い。
●胆汁酸は、正常では、タウリンやグリシンと抱合した、タウロコール酸(taurocholic acid)やグリココール酸(glycocholic acid)として、胆汁液中に入る。
●ヒトでは、タウリン抱合体とグリシン抱合体との比率は、1:3と言われる。
●肝臓で抱合を受けた胆汁酸は、アルカリ性の胆汁中では、胆汁酸塩(ナトリウム塩あるいはカリウム塩)として存在する。
●胆汁酸には、一次胆汁酸(肝臓で合成される胆汁酸)としてコール酸(CA:cholic acid:肝毒性が弱い)、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)がある。
●胆汁酸には、二次胆汁酸(一次胆汁酸が腸内細菌により7α-脱水酸化されて生成される胆汁酸)としてデオシキコール酸(DCA:deoxycholic acid)、リトコール酸(LCA:litocholic acid:コール酸の7,12α-脱水酸化誘導体:肝毒性が強い)とがある。さらに、ケノデオキシコール酸(CDCA)の7β異性体であるウルソデオキシコール酸(UDCA)が、微量に存在する。
●上記5種類の胆汁酸には、それぞれ、遊離型、グリシン抱合型、タウリン抱合型の3型が存在するので、胆汁酸抱合体分画は、合計15分画に分けられる。
●一次胆汁酸抱合体(抱合型一次胆汁酸)は、主に、小腸の回腸末端から吸収され、門脈を経て、肝臓に輸送される(腸肝循環)。
●一次胆汁酸抱合体は、一部は、回腸下部~大腸の腸内細菌により分解(脱重合と脱水酸化)され、二次胆汁酸になる。
●胆汁酸は、水の表面張力を低下させ、脂肪の乳化を促進させ、脂肪がリパーゼの作用を受けさせ易くする作用がある。
●食物中の脂質(中性脂肪)は、十二指腸で、胆汁中の抱合胆汁酸(強い界面活性作用がある)により、乳化(emulsify)され、水中油滴型のエマルジョン(乳濁液)を形成し、膵液中のリパーゼによる分解を受け易くなる。
●膵リパーゼにより脂質(中性脂肪)が加水分解されて生成される遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールは、胆汁酸ミセル(micelle)の形になり、小腸の粘膜上皮細胞に、取り込まれ、胆汁酸が遊離する。
●胆汁酸は、脂肪酸、コレステロール(コレステリン)、カロチノイドなどと結合し、吸収を促進させる作用がある。
●糞便中の胆汁酸は、主に、細菌の代謝産物として、存在する。
●コレステロールは、成人では、肝臓で、1日当たり0.5~1.0g生成される。
●胆汁酸は、健康人では、肝臓で、1日当たり200~500mg生成される。この量は、腸で吸収されずに、糞便中に、1日当たり(毎日)喪失する胆汁酸の量に、等しい。
●胆汁酸は、成人では、1日当たり20~30gが肝臓から胆管(胆汁中)へ排泄され、小腸内で、脂肪酸の吸収に関与した後、小腸下部で、95%以上が、再吸収される(腸肝循環)。
●体内の胆汁酸のプール量は、約3~5gで、この少量の胆汁酸が、毎日、6~10回、腸と肝臓の間で、腸肝循環している。
●肝臓から分泌された一次胆汁酸は、胆嚢から多く排出されても、小腸から再吸収され、肝臓で、胆汁酸として、再利用される。
●糞便から排出される胆汁酸は、1日当たり0.5~1.0g。
●胆汁酸は、糞便から排出された量に匹敵する量が、肝臓で、コレステロールから生成される。
●(野菜など食物繊維の多い食事をして、)胆汁酸が、小腸から再吸収されない(結果的にコレステロールが排出される)と、肝臓の胆汁酸量が減少し、肝臓での胆汁酸合成が、促進する。
●(二次)胆汁酸は、(大腸癌などの)発癌を促進する作用があると言う。
●高脂肪食を摂取すると、胆汁酸やステロイド代謝産物が増加し、これらの腸管内への排泄が増加し、発癌を促進させる恐れが考えられる。
●野菜を食べると、含まれている食物繊維により、食事中の脂肪の吸収や胆汁酸の再吸収が防がれて、血液中の過剰な脂質(コレステロールやトリグリセリドや酸化LDL)が低下する。
●胆汁酸は、上部腸管ではあまり吸収されず、回腸や結腸(特に、回腸末端部)で、主に、受動的に再吸収される。
●胆汁酸は、胆嚢から、胆汁と共に、十二指腸へ分泌され、腸管(主に小腸の回腸末端)から吸収され、門脈を経て肝臓に回収され、再利用される(腸肝循環)。
●胆汁酸の回収率は、95~98%と言われる。
●痒みは、ビリルビンよりも、胆汁酸が、原因と考えられている。
●脂肪酸は、小腸でも、上部(空腸)で最も吸収されるが、回腸でもかなり吸収される。
●中等度に脂肪を含んだ食餌を摂取すると、含まれていた脂肪の95%が吸収される。
●糞便中には、平均約5%の脂肪が含まれているが、その大部分は、食餌に由来するのでなく、腸の細胞残渣や微生物に由来すると言われる。
●コレステロールは、小腸の下部(回腸)でのみ吸収されると言われる。
●コレステロールは、脂肪酸とのエステル化に際して、植物性のステロール類(大豆などに含まれる)と、競合する。その為、コレステロールの吸収は、植物性のステロール類により抑制される。

2.胆汁酸と発癌
●古い食物残渣が腸管内で停滞すれば、ウェルシュ菌(腸内細菌の悪玉菌)などにより発癌物質が生じる危険がある。
●食べた肉のアミンは、腸管内でウエルシュ菌により、発癌作用のあるニトロサミンに、変化する。
●脂肪分解のために分泌される胆汁酸が、ウエルシュ菌により二次胆汁酸に変わり、腸粘膜を障害する。
●大腸癌は、このウエルシュ菌により生成されるニトロサミン(主犯)が、二次胆汁酸(共犯)により障害された腸粘膜を発癌させるのが原因と、考えられている。
●疫学的な調査でも、脂肪の摂取量が多い国程、大腸癌の発生率が高いと言われる。
●脂肪(動物性脂肪)は、摂取すると、分解・吸収に必要な胆汁酸(一次胆汁酸)が、胆嚢から腸管内へ多く分泌される。
●胆汁酸(一次胆汁酸)は、腸管内で腸内細菌(悪玉菌)によって代謝を受け、二次胆汁酸に変化する。この二次胆汁酸には、発癌作用があると言われている。
●肉食などで、動物性脂肪を多く摂取すると、大腸癌になるリスクが高くなると、考えられている。
●二次胆汁酸は、コレステロール(卵黄や乳製品に多く含まれている)を多く含む食品を多く摂取しても、増加する。

3.胆汁
●胆汁は、消化酵素を含まないが、胆汁酸(胆汁酸塩)、胆汁色素(ビリルビン)、コレステロールなどが、含まれている。
●胆汁中には、アルカリ性陽イオン(ナトリウムやカリウム)が含まれていて、胆汁のpHは、アルカリ性の為、胆汁酸や、その抱合体は、胆汁酸塩(bile salt)として、存在する。
●胆汁酸塩は、タウロコール酸(コール酸にタウリンが抱合)やグリココール酸(コール酸にグリシンが抱合)のNa塩であり、溶液(水)の表面張力を低下させ、十二指腸での脂肪の乳化を促進する。
●胆汁酸塩は、水に溶けない脂肪酸、レシチン、コレステロールなどを可溶にし(親水作用)、脂肪の消化・吸収を促進する。
●十二指腸に排出された胆汁酸塩は、約85%が、小腸下部で吸収され、門脈を経て肝臓に輸送され、再利用される(腸肝循環)。
●胆汁に含まれるコレステロールは、血中から排出されたコレステロールである。
●血中コレステロール濃度が変化すると、胆汁中コレステロール濃度も、変化する。
●胆汁中のコレステロールは、十二指腸で排出されると、腸内での脂質の乳化や吸収を、容易にする。
●胆汁と共に排出されたコレステロールは、一部は再吸収されるが、残りは腸内細菌によりcoprosterolに変換され、糞便中に排出される。
●胆汁は、肝臓から、1日、15ml/kg分泌され、胆嚢で濃縮されて貯蔵され、小腸内に脂肪(や蛋白)が入って来ると、腸から分泌されるCCK(cholecystkinin)により胆嚢が収縮し、十二指腸に排出される。
●胆嚢の胆汁には、胆嚢の上皮細胞から分泌されるムチンが、含まれている。 
●胆汁中の遊離コレステロールは、水溶液である胆汁には、まったく溶けないので、レシチン-胆汁酸のミセル中に、溶解して存在する。
●胆汁中のコレステロールの溶解度は、コレステロール、胆汁酸塩、レシチンの相対比により、決まる。溶解度は、胆汁中の水分量にも、影響される。
●胆汁中のコレステロール量が、溶解度を越えて、過飽和になると、過剰なコレステロールが、結晶として析出し、結晶、結石に生長する(胆石)。
●胆汁性コレステロール(肝臓から胆汁中に排泄されるコレステロール)は800~2000mg/日、食事から摂取されるコレステロールは400~500mg/日と言われる。
●上記コレステロールは、小腸の粘膜上皮細胞の絨網(先端)に存在する小腸コレステロールトランスポーターにより、体内に吸収される。
●胆嚢は、肝臓で生成された胆汁を貯蔵し濃縮し、必要時に胆汁を分泌するポンプ機能を果たしている。
●食事(脂肪など)が十二指腸に入ると、コレシストキニン(CCK)が分泌され、門脈を経て、胆嚢を収縮させ、胆汁をリズミカルに分泌させる。
●胆石症などで、胆嚢摘出術を受けると、(胆汁酸を含む胆汁が、胆嚢が無い為、持続的に、胆管を経て十二指腸に分泌されて、)腸肝循環する胆汁酸量が増加し、胃粘膜障害が起こったり、二次胆汁酸分画が増加する(胆嚢摘出後症候群)。

4. 胆汁酸の腸肝循環
①肝臓に到達したコレステロール(以下Ch)は肝臓において胆汁酸前駆体(コール酸など)の合成に使用される。
②胆汁酸前駆体はタウリン、グリシン抱合を受け、一次胆汁酸になる。
③一次胆汁酸は胆嚢へ移行し濃縮される。
④濃縮後十二指腸に放出される。
⑤一次胆汁酸は乳化性が強く、腸管内の脂質とミセルを形成し脂質の吸収に寄与(リパーゼによるトリアシルグリセロールの分解、Chのミセル化)しつつ小腸上皮細胞に吸収される。
⑥脂質とミセルを形成せず腸管内に留まった一次胆汁酸は、そのままの形では小腸上皮細胞に吸収されない。
⑦一次胆汁酸(コール酸など)はタウリン、グリシン脱抱合を受け二次胆汁酸(デオキシコール酸など)になる。
⑧二次胆汁酸は小腸上皮細胞に吸収される。
⑨二次胆汁酸は肝臓に移行し、タウリン、グリシン抱合を受け一次胆汁酸として再生する。
●脂質の消化吸収に関与する胆汁酸が、腸と肝臓の間でリサイクルされていることを言う。
●胆汁酸の腸肝循環においては、場所が循環するのみならず、胆汁酸の構造も循環している。
●タウリン、グリシン抱合、及び、脱抱合によりそれぞれ一次胆汁酸、二次胆汁酸に変化しており、これらの循環が即ち再生を意味している。 ではなぜ構造の循環の必要があるのか?
●一次胆汁酸がもしも吸収されやすいのであれば、脂質吸収に寄与する以前に小腸に吸収されてしまう。それでは意味がない。脂質吸収に寄与するだけ寄与させるには一次胆汁酸は吸収されるわけにはいかない。
だが、それでもあぶれてしまったものはそのままだと排泄されてしまう。それではもったいないということで二次胆汁酸に変化し、サルベージされるのである。


5. ビタミンK
●脂溶性ビタミンの一種。
●主要な働きとして血液凝固作用(止血作用)がある。KはKoagulation(ドイツ語で凝固)にちなんでつけられた。
●ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)がある。
●ビタミンK1は、緑葉野菜、植物油、豆類、海藻類などに多く含まれる。
●ビタミンK2は、微生物由来であり納豆やチーズなどに多く含まれるほか、体内の腸内細菌によっても作られる。
●血液凝固因子であるプロトロンビン(第II因子)、 第VII因子、第IX因子、第X因子の肝臓での産生の際、カルボキシル化酵素(ビタミンK依存性カルボキシラーゼ)の補酵素として働く。これらの因子はビタミンK依存性凝固因子と呼ばれる。
●通常、欠乏症に陥ることはほとんど無いが、抗生物質の投与による腸内細菌の減少や何らかの吸収障害によって、また新生児では腸内細菌叢による新生がないため、ビタミンK欠乏状態に陥ることがある。
●ビタミンK欠乏症では、血液凝固能の低下がおこる。
●プロトロンビンは、ビタミンKが欠乏すると、活性のない、PIVKA II(protein induced by vitamin K absence or antagonist)となる。
●PIVKA IIは、ビタミンK欠乏の指標とされている。
●抗血液凝固薬ワルファリンは、肝臓でのビタミンK依存性凝固因子の産生を抑制し、PIVKA IIを増加させ、血栓形成を予防する。
●ワルファリン投与を行っている場合には、ビタミンKの摂取を制限する。
●納豆は、納豆菌が腸内でビタミンKを産生するため、含有量以上の多くのビタミンKをとることができる。
●納豆の一人あたりの消費量が多い県ほど、大腿骨頸部骨折(股関節近くの骨折)の頻度が低い傾向がある、という調査報告がある。

胆嚢癌

2008-08-09 00:28:11 | 外科医の基礎知識
胆嚢癌

● 女性に2倍多い(肝外胆管癌は男性に多い)。
● Female genderが独立危険因子である(胆石や合流異常が女性に多いからではない)。Scott TE et al. Dig Dis Sci 44: 1619-25,1999.
● 女性胆嚢癌患者におけるCYP1A1遺伝子多型が報告されている。
● 胆嚢腺腫の癌化率は15-40%
● 胆嚢癌の60%に胆石を合併、胆石の6%に胆嚢癌を合併
● 胆嚢腺筋症では1.4%-6.6%に癌を合併
● 10mm以下の胆嚢ポリープでは癌の頻度:5%-9% (m癌82%)
● 16mm以上の隆起性病変では癌の頻度:61 % (mp癌以上80%)
● 胆嚢の解剖学的特異性から、癌組織が固有筋層内もしくは漿膜下層内のRokistansky-Achoff洞にある場合(RASmp, RASss)には、癌の上皮内進展と見なし早期癌に含まれる。
● 1群Ln:12b1(上胆管), 12b2(下胆管),12c(胆嚢管)
● 2群Ln:12h(肝門部), 12a1(上肝動脈), 12a2(下肝動脈), 12p1(上門脈), 12p2(下門脈), 13a(上膵頭後部), 8a(総肝動脈幹前上部), 8p(総肝動脈幹前後部)

● LC後に発見された胆嚢癌ではポート再発や腹膜播種発生率が10-19%と高率。Wakai et al. World J Surg 26:867-871, 2002.
● LCによる胆汁漏出による播種の可能性 Wullstein et al. Surg Endsc 16:828-832, 2002.
● LCによるPort site recurrenceの報告 Wibbermeyer et al. J Am Coll Surg 181: 504-510

● pT別5年生存率:pT1(m,mp)-90%, pT2(ss)-60%,pT3(se)-25%,pT4(any)-13%  吉川ら 第34回 日本胆道外科研究会アンケート調査報告 日本胆道外科研究会 2005.
● リンパ節転移別5年生存率:n0-65%, n1-25%, n2-16%, n3-7%, n4-2% Nagakawa et al. J HBP Surg 9:569-575, 2002.
● 切除後Stage別5年生存率:I-90%, II-74%, III-42%, IVa-24%, IVb-5.4% 吉川ら 第34回 日本胆道外科研究会アンケート調査報告 日本胆道外科研究会 2005.


● pT2に対し肝床切除を48.5%、S4a/5切除を25%の施設がおこなっているが、遠隔転移の好発部位に対する予防切除に意義があるか否かは不明である。
● リンパ節郭清を2群までおこなうのは異論がないところである。Kondo et al. Br J Surg 87: 418-422, 2000.
● pT2症例では50%にリンパ節転移あり、転移例では第一群は必発である。
● 胆管切除例の予後が非切除例と比較して必ずしも向上していないので、胆管切除が標準術式とは言えない。

小腸術後イレウス

2008-07-09 13:59:00 | 外科エビデンス
Nonsurgical management of partial adhesive small-bowel obstruction with oral therapy: a randomized controlled trial.
Chen SC, Yen ZS, Lee CC, Liu YP, Chen WJ, Lai HS, Lin FY, Chen WJ.    Taipei, Taiwan
CMAJ. 2005 Nov 8;173(10):1165-9.

背景:小腸の癒着による閉塞は通常、保存的に、輸液と絶食で治療される。過去に行われた研究では、このアプローチでは入院期間の長期化と外科手術が遅れるリスクについて言及されてきた。本研究では、標準的内服薬の組み合わせににより手術に至る必要性や入院期間の減少ができるかRCTをおこなうこととした。
方法:144人の癒着性小腸閉塞による入院患者のうち、条件に合う128人をランダムにコントロール群(輸液、NGチュウブによる減圧、絶食)または介入群(輸液、NGチュウブによる減圧、カマグ・ガスコン・Lactobacillus acidophilusの内服)に振り分けた。主要評価項目は手術治療なしで治癒した患者数、入院期間とした。合併症や再閉塞率も記録した。
結果:128人のうち63人はコントロール群に、65人は介入群に振り分けられた。ほとんどの患者は男性であった。介入群の方が手術なしですむ可能性が高かった(59 [91%] v. 48 [76%], p= 0.03; relative risk 1.19, 95% confidence interval 1.03-1.40)。平均入院期間はコントロール群の方が長かった(4.2 [SD 2.7] v. 1.0 [SD 0.7] days, p <
0.01) 合併症や再発率は、両群で差がなかった。
結論:Oral therapy with magnesium oxide, L.acidophilus and simethicone was effective in hastening the resolution of conservatively treated partial adhesive small-bowel obstruction and shortening the hospital stay.


軽めのイレウスには、これでいいのでしょうか。

イソジン拭き取り EBM

2008-07-09 13:51:06 | 臨床医の基礎知識
2007/02/11 EBM round

Patient:消化器外科手術患者で
Exposure:手術前の皮膚消毒をイソジンでしてすぐにふき取ったら
Comparison:イソジンを自然乾燥する場合と比べて
Outcome:創感染率が増えるのか?

まずは、CDCのガイドラインを調べてみた。1999年に手術部感染予防のためのガイドラインが出ている。この中に、下記のような記述があるのを見つけた。

GUIDELINE FOR PREVENTION OF SURGICAL SITE INFECTION, 1999

I. SURGICAL SITE INFECTION (SSI): AN OVERVIEW 
E. Risk and Prevention 
2. Operative characteristics: Preoperative issues 
c. Patient skin preparation in the operating room P257-258

There are reports of modifications to the procedure for preoperative skin preparation which include: (1) removing or wiping off the skin preparation antiseptic agent after application, (2) using an antiseptic-impregnated adhesive drape, (3) merely painting the skin with an antiseptic in lieu of the skin preparation procedure described above, or (4) using a “clean” versus a “sterile” surgical skin preparation kit.188-191 However, none of these modifications has been shown to represent an advantage.

術前皮膚消毒方法の亜型として(1)消毒薬を塗布後の除去、ふき取り(2)消毒薬つきドレープの使用(3)手洗いの代わりに消毒薬を皮膚に塗る(4)滅菌に対して清潔な外科皮膚用消毒キットを使うなどがある(188-191)。しかし、これらの亜型はいずれも有効であることは示されてはいない。
1999年のガイドライン作成時点で同様の疑問が生じていた様子だが、はっきりとしたエビデンスはなかったようだ。ここで引用されている論文をのぞいてみる。

188. Kutarski PW, Grundy HC. To dry or not to dry? An assessment of the possible degradation in efficiency of preoperative skin preparation caused by wiping skin dry.
Ann R Coll Surg Engl 1993;75(3):181-5. PMID: 8323214
A controlled study of the effects of wiping skin dry after application of aqueous povidone-iodine was carried out in 24 subjects. There was no significant difference in the reduction from baseline counts of skin flora at 5, 30, 60 and 120 min between wiping the agent off after 30 s of application and leaving it to dry. It would appear that wiping skin dry that has been prepared for operation with this solution in order to allow application of adhesive drapes is a bacteriologically safe practice.

1993 年のpaperである。24人の患者をイソジン塗布し30秒後に吹き取る群と乾くまで放っておいた郡の2群に分けて、5,30,60,120分後の皮膚細菌フローラを調べたところ、2群に差はなかった。

細菌数を調べるという代替アウトカムを用いているが、臨床的には「術後創感染率」で比較するのが理想的(真のアウトカム)である。さらにいえば、サンプルサイズ24は、発現頻度が低いアウトカムの比較には少なすぎる。(計算したところ創感染率が5%違うことを有意水準0.05で示すためには各群350人が必要)

同CDCガイドラインの中にも下記のような記述があった。
残念なことに手術時手洗いの消毒薬の評価は手の細菌のコロニー数に焦点が当てられている。SSIの危険性における、手指消毒薬選択の影響についての臨床的な試験は行われていない(195,202-206)。

この文献がでた後(1993年以降)に新たな文献がでていないか、PubMedの関連文献をみてみた。163のrelated articleがあった。その中で下記の文献のみが似たような研究をしていた。

Workman ML .Comparison of blot-drying versus air-drying of povidone-iodine-cleansed skin. Appl Nurs Res. 1995 Feb;8(1):15-7. PMID: 7695351 
Povidone-iodine is the cleansing agent most commonly used before accessing implanted venous devices. This agent has peak bacteriocidal action when allowed to air-dry for 20 min postscrub. However, the drying time increases the length of the procedure and the risk for accidental contamination of the site. In this study, the effectiveness of air drying versus blot drying povidone-iodine-prepared skin sites was compared by examining the number of bacterial colonies present on skin cultures obtained after each drying method. No significant differences in the number of bacterial colonies between the two drying methods were found.

結局、有意な差は無いとなっているが、この文献も代替アウトカム(細菌数)を調べており創感染がどうなるのかは調べていない。つまりは、まともなエビデンスがないということなのか?

Search Most Recent Queries Time Result
#17 Search #14 AND #15 Limits: Publication Date from 1993 to 2007 215
#15 Search randomized 350253
#14 Search Povidone 6106

上記検索式でえられた215件をみても今回の疑問解決につながる文献はなかった。
明治製菓のホームページに医療関係者向けのサイトをみてみた。
http://medical.meiji.co.jp/medical/top_doctor.html 

この中で、http://medical.meiji.co.jp/medical/pathogen/disin/disin_02.html にて消毒薬の使い方が写真入で説明されている。しかし、今回の疑問解決には役にたたなかった。

結論:イソジンのふき取りが創感染率に影響を与えるか否かは、明らかではない。したがって、これを今後の調査によって明らかにすることは意義があることと思われる。

大腸癌stageII 術後5-FU+LV (QUASAR試験)

2008-07-08 19:37:00 | 外科エビデンス
大腸癌治癒切除stageIIの術後化学療法5-FU+LVの効果 RCT: QUASAR試験

大腸癌治癒切除stageIIに対する術後補助化学療法5FU+LV(4週毎5日間連続投与6コース)vs. 経過観察のみ
追跡期間中央値 5.5年
総死亡のRR  0.82(95%CI 0.70-0.95) 大腸癌死のRR 0.81(95%CI 0.68-0.96)
ただし再発抑制効果は2年以内のみで、以降は差が無い。
5年死亡率の絶対的リスク減少は3.6%であった。

BACKGROUND:
To determine the size and duration of any survival benefit from adjuvant chemotherapy for patients with colorectal cancer at low risk of recurrence.

METHODS: After apparently curative resections of colon or rectal cancer, 3239 patients (2963 [91%] with stage II [node negative] disease, 2291 [71%] with colon cancer, median age 63 [IQR 56-68] years) enrolled between May, 1994, and December, 2003, from 150 centres in 19 countries were randomly assigned to receive chemotherapy with fluorouracil and folinic acid (n=1622) or to observation (with chemotherapy considered on recurrence; n=1617). Chemotherapy was delivered as six 5-day courses every 4 weeks or as 30 once-weekly courses of intravenous fluorouracil (370 mg/m2) with high-dose (175 mg) L-folinic acid or low-dose (25 mg) L-folinic acid. Until 1997, levamisole (12 courses of 450 mg over 3 days repeated every 2 weeks) or placebo was added. After 1997, patients who were assigned to receive chemotherapy were given fluorouracil and low-dose folinic acid only. The primary outcome was all-cause mortality. Analyses were done by intention to treat. This trial is registered with the International Clinical Trial Registry, number ISRCTN82375386.

FINDINGS:
After a median follow-up of 5.5 (range 0-10.6) years, there were 311 deaths in the chemotherapy group and 370 in the observation group; the relative risk of death from any cause with chemotherapy versus observation alone was 0.82 (95% CI 0.70-0.95; p=0.008). There were 293 recurrences in the chemotherapy group and 359 in the observation group; the relative risk of recurrence with chemotherapy versus observation alone was 0.78 (0.67-0.91; p=0.001). Treatment efficacy did not differ significantly by tumour site, stage, sex, age, or chemotherapy schedule. Eight (0.5%) patients in the chemotherapy group and four (0.25%) in the observation group died from non-colorectal cancer causes within 30 weeks of randomisation; only one of these deaths was deemed to be possibly chemotherapy related.

INTERPRETATION:
Chemotherapy with fluorouracil and folinic acid could improve survival of patients with stage II colorectal cancer, although the absolute improvements are small: assuming 5-year mortality without chemotherapy is 20%, the relative risk of death seen here translates into an absolute improvement in survival of 3.6% (95% CI 1.0-6.0).

Quasar Collaborative Group
Adjuvant chemotherapy versus observation in patients with colorectal cancer: a randomised study.
Lancet. 2007 Dec 15;370(9604):2020-9. PMID: 18083404

人体画像の断面

2008-07-08 18:41:50 | 臨床医の基礎知識
矢状断 sagittal section 
体を左右に分けるように縦に切る切り方

前頭断・前額断・冠状断 frontal・coronal section 
体を腹側と背側に分けるような断面

固形癌の治療効果 Recistガイドライン2000

2008-07-08 18:01:34 | 臨床医の基礎知識
2003年から日本癌治療学会はNCIのRecistガイドライン2000使用を推奨している。
Recistガイドライン2000 日本語訳

標的病変の評価:
最長径の測定が必要なのは標的病変のみであることを考慮
完全奏効(complete response; CR):すべての標的病変の消失。
部分奏効(partial response; PR):ベースライン長径和と比較して標的病変の最長径の和が30% 以上減少。
進行(progressive disease; PD):治療開始以降に記録された最小の最長径の和と比較して標的病変の最長径の和が20% 以上増加。
安定(stable disease; SD):PR とするには腫瘍の縮小が不十分で,かつPD とするには治療開始以降の最小の最長径の和に比して腫瘍の増大が不十分。


非標的病変の評価:
完全奏効(complete response; CR):すべての非標的病変の消失かつ腫瘍マーカー値の正常化。
不完全奏効/安定(incomplete response/stable disease;IR/SD):1 つ以上の非標的病変の残存かつ/または腫瘍マーカーが正常上限値を超える。
進行(progressive disease; PD):既存の非標的病変の明らかな増悪1)。

[注:「非標的」病変のみが明らかな増悪を示すことはまれであるが,そのような状況では,治療している医師の意見が尊重されるべきである。ただし,その増悪の状態は後日判定委員会(review panel)(または研究代表者)により確定されるべきである。]


全奏効期間(duration of overallresponse)
CR あるいはPR の測定規準を満たした時点から,再発あるいはPD が客観的に確認された最初の日(治療開始以降に記録された最小測定値をPD の評価の比較対照とする)までの期間

完全奏効期間
はじめてCR の測定規準を満たした時点から,再発が客観的に確認された最初の日までの期間

安定期間(duration of stable disease)
治療開始からPD 規準が満たされるまでの期間

新規薬剤の生物学的効果に関する初期評価を行うには,
無増悪生存期間(progression-free survival)無増悪期間(time to progressionが考慮に値する代替指標となる可能性がある.