司法制度に喧嘩を売る。

動き出した司法改革。
法科大学院生が感じる、新司法制度の抱える問題をぶっちゃけトーク。

見切り発車の法務省、それを認める法務省。

2005-05-02 15:43:29 | 新司法制度の動き
読んでいて、気が滅入ってきました。


何を読んだかというと、法務省の司法試験委員会が平成17(2005)年2月28日に発表した「併行実施期間中の新旧司法試験合格者数について」です。
結局、新司法試験制度についてはほとんど決まっていないのに、とりあえず見切り発車しちゃいましたぁ…という様な香り(?)が、この司法試験委員会の文章からプンプンします。3100字ちょっとの中に、同じ用語(特にネガティブな意味を持つ用語)の繰り返しが多いんですよね、これが。例えば、

『困難』=3箇所発見。
『新司法試験の合格者の予定数を一定の数値で長期的に示すことは困難である。』
『(実際の受験者)数をどの程度と見込むかを数値化して示すことは困難である。』
『現時点で将来の受験者数を予測して的確な見通しを立てることは困難であり,』
『不確定要素』=3箇所発見。
『新司法試験については不確定要素があまりにも多いため,』
『新司法試験については,前述のとおり不確定要素によるところが大きいことから,』
『また,同19年については,同18年の試験結果等とも関連して更に不確定要素が増えるが,』

更に、こちらはネガティブな意味を持つ用語ではありませんが、これが読んでいてムカつく程登場します。

『厳格な成績評価及び終了認定』=4箇所発見。
『その実際の受験者数の動向については,改革審意見が強く求めている「厳格な成績評価及び修了認定」の具体化に大きく左右されることとなる。』
『とりあえず入学者数を基本にして新司法試験の受験者数の動向を想定すると,平成18年は,同16年に入学した2年コースの学生約2,300人のうち,「厳格な成績評価及び修了認定」を経た者(当然のことながら,現行司法試験に合格した者は除かれる。)がその受験者数のベースとなり,同19年以降は,毎年新たに約6,000人程度の学生のうち「厳格な成績評価及び修了認定」を経た者がそのベースに加わっていき,受験機会が3回であることを勘案すると,同21年以降,受験者数がおおむね平準化していくものと予測される。』
『法科大学院において,厳格な成績評価と修了認定が実施されることが不可欠の前提であり,質の高いプロセスとしての法曹教育が適切に実施される必要がある。』

わざわざカギカッコを付けている位ですから、よっぽど強調したいんでしょう。
法務省のお役人さんや司法試験委員の皆様は、この文章で何を言いたいんでしょうか。


法科大学院生の不安を煽りたいんですかね?


新司法試験に関しては、その予想が『困難』『不確定要素』があまりにも多いからどう転ぶか分からんが、法科大学院は『厳格な成績評価及び終了認定』でデキル人間だけ卒業させなさい…という事なのかしら。『困難』『不確定要素』たっぷりの司法制度改革をしたのはあなた方でしょう!?そんなユルユルで穴だらけの制度をこしらえといて、法科大学院に厳格さを求める資格があるんでしょうか。
ひとつ前の記事で紹介したAERAの記事では、新司法制度を設計した法務省と法科大学院制度を設計した文部科学省の連携ミスを指摘しています。国を挙げた改革をやろうとしたのに、未だ縦割り行政的影響が抜けないお役人さん達に、もはや同情です。でも、彼らだけが悪い訳じゃないですよね。ごめんなさい。

自分は今年、未修者コースの1年生ですから、実際に新司法試験を受ける頃には現在よりも実態が見えているかもしれません。数年度分の過去問も、受験者の経験談を聞く機会もある程度あるでしょう。
しかし、法科大学院も新司法試験も一期生となった先輩方の苦労を考えると、頭が上がりません。先が見えなくても、五里霧中だとしても、とりあえず試行錯誤してみなければならないのですから…。



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