先月、当日長崎から遠路滋賀までおこしになる眞蔵の曾孫・西澤佳隆さんからご連絡をいただきました。
かつて枝下用水には親に連れられて行ったことはあったけれど、その記憶はおぼろでしかない。自身が60代になり、先祖を知りたい思いから枝下用水に出かけたいという気持ちになりましたとのことで、供養の翌日10日に枝下用水をご案内することになりました。
今春、眞蔵の孫・秀隆さんがご来豊のときは、豊田市近代の産業とくらし発見館で枝下用水の展示がおこなわれていたことと、ご高齢ということもあり、あちこちにというわけにはいかなかったのですが、今回はもうとにかく西澤眞蔵を肌で感じていただける場所をたっぷりご案内しようと思いました。
それにはやはり眞蔵時代の枝下用水旧取水口、そして第二樋門を見ていただきたい。ところがその場所に到達するには草木を刈り、足元を固めなくては難しい。豊田土地改良区でその準備をしなくてはならなかったのですが、あいにく矢作川の取水制限が始まり、職員は大忙し。いつもお世話になっている枝下歴史研究クラブの菅沼一郎さんにご相談したところ、任せなさいと言ってくださいました。
10日朝、名古屋方面から知立駅経由で名鉄平戸橋駅に向かってくる西澤さんに「知立駅から二つ目の駅、三河八橋から下車駅までは枝下用水の受益地を列車は走りますので、農村風景を楽しんできてください」とメッセージしました。西澤さん、列車の先頭で感慨深く左右の風景に目を配りながらお越しくださったようです。
先ずは越戸ダム対岸の「偉哉疏水業」碑を見て、旧枝下用水路取入口、第二樋門、そして枝下川神社周辺と、ときに長靴に履き替えて炎天下を歩きました。お疲れになったろうと思いますが、やはり私たちだけでなく、地元の方たちと触れ合うことで、直に西澤眞蔵への想いを感じ取ることができたことは何よりの思い出となったのではなかったかと思います。
2日前の8日、最終確認に来たときには増水していて全く見ることのできなかった取水口に設置された水準点が、サプライズプレゼントのように、きれいに顔を出していました。
資料室来訪の際の記念撮影はここと決めています。背景に矢作川と平戸橋がしっかり見える自慢のポイントです。
午後は豊田土地改良区のいまということで最新の枝下用水の遠隔操作のシステムを見ていただいたり、私たちが土地改良区内のスペースに設けている展示を見ていただき、それから西澤眞蔵顕彰のなかでも最も早く始まったと思われる、金谷町・福萬寺の西澤眞蔵の戒名が書かれた碑（墓）へご案内しました。この時も、毎年いまも福萬寺でおこなわれる西澤講で披露される西澤眞蔵の肖像画の掛軸をご子孫にお見せしたいとおもって管理している地元農事組合長にご相談したところ、地元の長老で元枝下川神社崇敬者総代・近藤修身さんと打ち合わせてくださり、当日は近藤さんからこの肖像画にまつわるお話などもしていただきながら拝見することができました。肖像画は御神体のような扱いを受けているもので、これも西澤眞蔵の子孫がおこしならばと特別に対応いただけたことでした。
本当は各地の顕彰碑にご案内したかったのですが、時間がなく、最後に元枝下用水土地改良区理事長・岩月壽さん宅に伺いました。壽さんはいつも引退した自分が出るのはよくないとおっしゃるのですが、長崎の西澤家とはこれまで交流があったことをお聞きしていたので、長崎の西澤家を継ぐ佳隆さんには会っていただきたかったのです。壽さんは枝下用水開削の西澤眞蔵への感謝の言葉とともに、竹村の地元の語り、そこには眞蔵のこともいろいろと記されている『竹村風土記』を贈りました。
一日はあっという間で、本当はもっともっとご案内したかったし、もっともっとゆっくりと各所でお会いした方たちとの時間もとりたかったのですが、限られた時間のなかで、思うようにうまく進めることはできませんでした。それでもなによりもたくさんの地元の方たちの思いを直に受け止めていただけたことはどんなモノを見るよりも良かったのではないかと思いました。
佳隆さんもおっしゃっていたように、このことを次の世代に伝えていかなくてはという思いは様々な立場からの課題です。
今回、この来豊にあわせ、豊田土地改良区枝下用水地区委員長・岩月幸雄さん、そして多忙のなかを豊田土地改良区事務局長・野場嘉輝さんが一日一緒に回ってくださったこと、資料室として本当に心強く嬉しいことでした。
枝下用水の視察コースは、考えればその目的でいろいろなパターンがつくれそうです。
私もまわってみたいという声に提案できるものをつくっていきたいと今回感じました。
