For someone

誰かのために 自分のために

Song for you。

2005-11-25 | Weblog


僕を産んでくれてありがとう
僕が何者かわからないのに
産んでくれてありがとう
あなたの願いどおりに生きてゆけるか約束できないけれど


道が塞がったときは
どうか足元を照らしてください
導かれなくてもその光が僕の闇を打ち砕くはず
蹲ったままの僕の肩をどうか叩かないで
そっと見守っていて
いつか僕自身の足で立ち上がるその時まで
どうか傍で見ていて欲しい


あなたが見えなくなる時がくるかもしれない
それは反抗のように見えるかもしれないけれど
きっと僕はもがいているんだ
あなたもその昔そうだったんだなんて
その時の僕は思いもよらないのだろうけれど


僕を産んでくれてありがとう
生きる意味が判らないから
だから僕は生きている
そんなものに答えなんて出やしないことを
心のどこかで知っている
それでも僕は
生きる意味を考えるふりをしながら生きている


あなたの痛みや眼差しや頬の感触を
忘れないでいることの方がむしろ不自然で
それを悲しく思うあなたはとても自然なんだ


僕を産んでよかったですか
僕は産まれてきてよかったのですか
その答えはきっとこの僕の身体の中にある
あなたをいつか失う時と
僕自身が終わりを迎えるその時まで


僕を産んでくれてありがとう
こうして考える力と機会をくれたこと
きっと、僕は感謝してるんだ


だから、僕を産んでくれてありがとう





風紋・晩鐘

2005-11-15 | Weblog


著者 乃南 アサ(双葉文庫) 「風紋」上下巻 「晩鐘」上下巻


高校生、高浜真裕子の母親がある日車の中で死体となって発見された。
容疑者は真裕子の学校の教師、松永先生。
母親と松永は不倫関係にあったという。

いつも通りの変わることもないはずの日常で
その事件は起こる

母の帰りを待ち続けた真裕子、
何か尋常ではない感じと、まさかという思い。
事件が明るみになり、一介の主婦が殺された謎と
容疑者が教師、そしてその信じられざる関係へと話は一気に展開していく。


もう一方、、、松永教師の家庭。
幼稚園に通う男の子と女の子の赤ちゃんがいるごくありふれた、
でも少しだけ環境に恵まれた主婦。
自分の夫の通う学校で、生徒の母親が殺された事件を
まるで他人事のように話す。
その中には事件関係者と僅かばかりにも近いことから優越感すら漂う。

ある日夕食の準備の最中に刑事が家に踏み込む、
そこで聞かされた、信じられないような話。
家宅捜査の中、ニュース映像が流される、

「夫が犯人・・・・・??????」


この小説の読みどころは
被害者側と加害者側を同時に進行させてゆく。


ある日突然母親を奪われ、好奇の目に晒される被害者家族。

ある日突然殺人者の妻になってしまう女。


裁判の進行、捜査状況の流れから一度は松永に有利な体勢に持ち越されるかの展開。
被害者、加害者、どちらの家族・親戚がどれ程の運命に翻弄されてゆくのか。


続編「風紋」はこの両家族の事件後7年経過したところから話が始まる。

かなり長い小説ではあるけれど
その絶妙な心理状況には他人事とは思えない何かがあり
一気に読み上げてしまう。


そう、他人事ではない。


私も、今これを読んでるあなたも。
いつ被害者、または被害者家族、加害者、加害者家族にならないとも限らないのである。



ここ最近のニュースを見るたびに思う。
1つの例を挙げさせていただくならば、女子高生の同級生殺人事件だ。

何故被害者の顔が晒されてるのか?
加害者の男子生徒であること、未成年であること。
その事からモザイクがかけられている、それはいい。

ただ、何故?
あんなあどけない笑顔で笑う彼女の動画まで流れているのか。


被害者の家族は、本当の意味で、事件後にあらたに被害者になる。
家族の中を全て暴かれ、時には中傷を受けるケースまで出てくる。

加害者の家族はどうか?
まずその土地に住めなくなることはもちろん、
子供がいたのなら「殺人者の子供」というレッテルが一生貼られる。

「風紋」では、殺人者の子供のその後を克明に綴ってある、
そして被害者家族の消えるはずのない心の闇と傷。


正直救いはない、救いがあるはずがない。

巻き込んだものも、巻き込まれたものも、

文字通り、転落してゆくのだ。


それでも、この小説を読んでからの私は
ニュース報道を見るたびに何かを思うようになった。

ただ「悲惨ね、」の一言じゃ済まない、この事件の発端者の周りの人達の苦しみ。
そういう類の事を思うようになった。


もし時間があるならば手にとってみて欲しい。
時間がなくとも、もし自分だったらと考えてみてはくれませんか。


たかが小説と侮ることなかれ。



天使の代理人

2005-11-09 | Weblog


著者 山田 宗樹(幻冬舎)


テーマは重い、堕胎を扱う題材である

妊娠中絶、その言葉を知らない者はいないと思う
しかし、その実情をどこまで知っていたか?

著者が男性であること、そしてその題材を完全に女性の視点で捉えられてることにまず驚く


望まぬ妊娠から躊躇いもなく中絶を行った女子大生、
医療ミスからお腹の我が子を中絶させられた主婦、
子供だけが欲しいと海外の精子バンクから人工授精を行ったキャリア女性、

そして、物語の発端となり要を担っていく助産師。


胎児は人であるか、否か?


この物語に最後まで欠かせない重大なテーマ。


妊娠初期の中絶に関しては何となくではあるが知識はあった

それにしても子宮内を器具で掻き出すという方法、、
体長数センチではありながら
すでにヒトとしての形を担うそれは
掻き出され、時にちぎれた手足が後から出てくるという


そして、法的に認められてる中絶は妊娠22週までとのこと
それ以降は母体の生命に関わらないことには認められていない、
なら、行われていないのか?否だ。

産み月になって堕胎された子供もいる。
ただ「死産」として役所に報告されるだけ、
実際、違法ながらも行われているそうだ。



その方法は分娩形式で行われる
想像できるだろうか、、、


陣痛促進剤を使い誘発する
子宮破裂にならないよう、限界までの促進剤をつかい
胎児を圧死させながらお産していく


たったの今までお腹を蹴っていた胎児を
普通のお産のように、いきみ、産道を回転させながら圧迫し
窒息死させてゆくのだ


娩出された子供は、赤紫に変色し息も絶えている
そして業者が引き取る


中絶擁護派、反対派、様々な視点で立場で
この物語は1つの糸に集結してゆく、
当然、終結ではない
永遠のテーマであるだろう


ただ、考えて欲しい、

望まぬ子とは一体なんだろう?
妊娠は事故なのか?
明らかに性行為をすれば妊娠に繋がるという知識をもった男女が、

できちゃった、、、
まじで?やべぇ、、
おろすしかないかな、、
だって俺親にはなれねーよ、向いてないし?


そうなのか?

年間に何百万という堕胎の件数があるという。

良心の呵責があるからか?
胎児はヒトではない、
ヒトになりうる可能性をもった細胞の塊だ、と誰かが言う。


ただ考えて欲しい

その「選択」さえなければ
間違いなくこの世に生まれ、名前を授かり、人生を手に入れるはずのできた子供が
数百万人消えてしまっているという事実を。


そして知って欲しい

堕ろす、ということが
どれだけ女性の体を傷つけ、心に深手を負うものかを。


個々の事情があるだろう、
未成年であった、
相手には家庭があった、
経済的に無理だった、
性別が希望してたのと違っていた(!)、


きっと減っていくことはないと思われる闇の中の中絶。
性行為の若年齢化が進んでいく中で
大人は何を教えるべきか。

今できる事は性教育というものではない、
命の教育だと私は思う

自分の娘があと3年もすれば10代に突入する、
遠くはない、身近な問題だと感じる


もし、あなたが女性ならば1度だけでいい、考えてみてはくれませんか?

もし、あなたが男性ならば大事な人の事、考えてみてはくれませんか?


「お腹に宿った子供はヒトではないのですか・・・??」






Snow White。

2005-11-05 | Weblog


誰かが言った、

「いい夢を見せてくれる人はいい男だ」と。

そうかもね?そうかもよ?



夢を夢と気付かぬまま見る夢ならいい。

キスをして魔法が解けた白雪はそこに何を見たの?

王子の体温を感じた瞬間に夢は醒めた、そして

汗臭く泥臭い現実がそこから始まる。

まほろばの檻に囲まれた無限の小宇宙

夢か現か幻か、たゆたゆと。たゆたゆと。

それでも人はやはり涙が出るほど愚かで

夢を語り続ける現の生き物。

いや、だから人は夢を見る。

現実の生臭さと恐ろしさを知ってるから、だからこそ、

たゆたゆと。漂いたがる。

夢だけで生きてゆけたらいいのに。





連なるもの。

2005-11-02 | Weblog


君は覚えているかい

虹の端を探そうと駆け出したあの頃を
七色の融合 曖昧な旋律を 目を凝らして数えたね

黒い雲が見えたとき
最初の一粒を受け止めたくて 見上げ続けた空
気が付いたら影が伸びていた

まるでお化けのような長い影を
どうしても踏みたくて 足を交錯してる姿は
ステップを踏んでるダチョウみたいだった

なんて小さな君
出会うもの 囲むもの 落ちているもの 通り過ぎるもの
それらはあまりにも大きかった
それが全てでそれが君の世界の始まりだったんだ

君は見た事があるかい

見上げるほど大きくて君を繋ぐその手だって
迷子の子供のように 途方に暮れることがあることを
暗闇に怯える子供のように 声をあげて泣くんだ

君は知っているはず

朝露が地中に帰る
やがて空にのぼり雲になり雫になり流れをつくる
世界はそうやって丸くできてること
君の丸い頬と同じ柔らかさで
優しい円を描いてることを

なんて小さな君
君の丸い瞳が写す まるい まるい地球