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Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

お雛様

2012-09-12 03:22:48 | 素敵な現場
シニア担当のYokoです。

先日ブログでシニアの方が「ひとつ階段を降りる」そのお話を書かせて頂きました。

シニアの皆さんの体力が落ちて行く様子をそう表現します。

施設にご入居されている高齢者の皆さんの体力・気力全ての面を見守り管理し

今どの段階に来ているのかを誰よりも心を寄せて見守っているのは、施設で働いている職員の皆さんです。



「本当はお誘いしたかったんですが・・・」

先日訪れた施設でアートセラピーの時間の担当をされていた職員の方がこう切り出しました。

これまで長く参加されていたN様がアートセラピー参加が終了と聞かされたのは先月でした。

そして先日その理由を話てくださいました。

「今のN様にとって何を一番大事にしたらよいか?

 それを考えた時、残りの時間を少しでもお元気に長く生きて欲しいという事なんです。

 N様がアートセラピーが大好きな事は私たちも本当にわかっているのですが、

 もう食べる事も難しくなり、日中は殆ど横になっています。

 もう1時間起きている事は難しく・・・苦渋の選択で終了となりました。」


N様のお部屋は私たちのアートセラピーを行なっているフロア内にあります。

お風呂やラウンジで過ごされた後にお部屋に戻る際、お見かけします。

先月、お風呂上がりでさっぱりとされたご様子で準備をしている私たちの脇を通ろうとした時、

職員の方のご配慮で「N様 アートセラピーの先生ですよ」と車いすを止めて下さいました。

私たちは「N様 こんにちは」と挨拶をさせて頂きました。

そしてそっと手を握りました。

小さな小さなN様は顔をゆっくりと私たちに向け、私の手をぎゅっと握り 

いつものようにまあるい目をキラキラさせながら私たちににっこりと微笑んで下さいました。



話をしてくださった職員の方が涙をたくさん浮かべながらこう話を続けてくれました。

「以前アートセラピーで作ったお雛様がN様は本当に大好きで大事にされていて

 必ず飾らせて頂くと本当に喜ばれるんです。

 この時間が本当に大好きでいる事はわかっているんです。

 だけれども・・・・」


もう私の目からは涙があふれて仕方なかった。

それは一緒に居た仲間も同じでした。

それ以上に話をしてくださった職員の方も・・・


どれだけの想いを寄せ日々介護という現場で働いているか。。

そしてその胸のうちを丁寧に話して下さった職員の方に、私は感謝しかありませんでした。


「今後アートセラピーで作ったものを、私たちからN様に差し上げてもよろしいですか?」

「そう言っていただけるととてもうれしいです。きっとN様も喜びます。ありがとうございます。」



車いすのN様との時間は1分にも満たないものでした。

発語も難しく言葉をかわす事はもう出来ません。

いつもアートセラピーの時間内の体操で手を握る。

その時のぬくもりのまま

N様の小さくて指の関節が少しごつごつした手の温かさ

「ぎゅっ」と握り返してくれたあの時の力



N様は沢山の物語を持っている方でした。

作品に現れる色、形、飾るもの どれも可愛らしくそしてユニークで

それは一冊の絵本のようだといつも私は思いました。



残された時間はどうやら少しずつ見えて来たようです。

私たちはただその事を静かに受け止めて行きます。

だけれどもそれはN様と私たちの関係が終わった訳ではありません。

また通られた時には変わらずに声をかけるでしょう。

もし止まる事があれば、手を握ってご挨拶させて頂く事でしょう。

お会い出来る事がなければ、職員の方に様子を伺う事でしょう。

私たちから何か皆さんと過ごした時に作った作品をプレゼントする事もするでしょう。

そしてこうしてブログに書いて

N様というすてきな女性がいる事を

私はこれからも伝え続ける事でしょう。



お雛様は「守り雛」の意味もあります。

どうぞN様の人生が最後まであたたかくそして安らかなものでありますように。

残された時間をお守り下さい。





私たちはこれからもずっとN様を心から愛しています。






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