Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

あたたかい60分

2015-08-10 18:06:14 | 素敵な現場
猛暑ですね。皆様お変わりありませんか?

春から新しい現場が始まりました。


高齢者向けのアートセラピーの現場


いつもそこには出会いがあり、そして別れもある。

誰もが同じ24時間を平等に与えられているけれど、

その一分一秒をどう味わって、どう生きているのかは本当に違うのだという事を私は学びます。


******************


一人の女性にお会いしました。

「私今ねバラバラなのよ」

そういいながら、押し葉を並べ、押し花を重ね 手が止まる事がない

また重ねると

「今そうバラバラなの。こんな感じです」と作品を指す。

だからといって、現れや言葉からお元気がない様子はあまり感じない。



何が起こっているのでしょうか?

はじめて参加したアートセラピーの場所

だけれども、お知り合いはいないよう。。



参加する1時間位前に、私は女性とお会いしていました。

アートの準備でバタバタしていた時、その近くの大きなTVがあるリビングで一人うつらうつら

午後のシエスタ うつらうつら

物音で起こしてしまったようでした。

女性はゆっくりとソファから腰上げると、背丈はとっても小さくて、更に腰は曲がっており

杖を突きながらゆっくりと目線が私たちの方に向けました。

その姿勢や目線からちいさな小さな女性は上品でそしてどこかきりっとした厳しさも持ち合わせているように

私は感じました。



「申し訳ございませんでした。うるさくしてしまいましたね。」

そう女性に告げると、

女性は 「あれはなぁに?」とサポーターが準備をしているテーブルの方を見つめていました。

私は自己紹介ののち、アートセラピーが何なのか、そしてこれから何を行うかをご説明すると

「こだわりを作るの?」と一言

そう。その言葉は、私がアートの説明で使った「自分の好きやこだわりを表現」・・・という言葉の

「こだわり」という部分をキャッチしていたのです。



「そうですか。」

やるでもやらないでもなく、何も感想もなく女性は部屋に帰っていきましたので

私は参加はないのかな?とこの時は思っていました。




ワークが始まりしばらくすると女性は一人杖を突いてゆっくりとやってきました。

当初の参加予定には入ってはいませんでした。


何をするかをサポーターが伝えると、女性は先ほど書いたように手が止まることがない。

そして同時にどんどんと発語が増えて行きました。


「私今バラバラなのよ」


話しは止まることはありませんでした。


まだ慣れぬ施設での生活、戸惑い 不安 だけれども 自分はちゃんとしていようというこの女性の生き方

会話はいきつもどりつ 同じ話しを繰り返しながらも ご自分が今置かれている状況や感じている事を

たくさん話しをしてくださいました。

そんな自分の様子を話しが出来る時間・・・・高齢者向けのアートセラピーの特徴でもあります。


そしてそれは年齢に関係なく、高齢者だけでなく私たちが当たり前に感じる

はじめての場所や人との出会いで感じる事

だけれどもそれを見せまいとする自分の癖や生き方の姿勢 プライド

アートが引き出す心の表現の場は年齢を越えて繋がっていく。






作品はどうですか? みなさんにはどう見えますか?? 

この女性の持つ品や華やかさ 

私にはそれが溢れているように感じました。

そう、最初におっしゃっていた「こだわりを作るの?」

その言葉はワーク中には忘れていたかもしれませんが、この女性のこだわりがあふれているように感じます。



女性はこの後、ご一緒されたお仲間にもたくさんの言葉をかけてくださいました。

「素敵な言葉ねぇ~」とか お隣の人に「いいわね」と握手しあったり、笑いあったり


そう、この女性のもつこの「華やかさ」をたくさんこの場のみなさんに分け与えてくださったのです。


もちろん女性も沢山の笑顔に溢れていました。





シエスタを起こしてしまうそんな出会いがなければ、この時間は作れなかった。

確かにみんなが感じたあたたかい60分でした。

次にお会いできる事を楽しみに。。。


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