♪みなさま、変わりはないですか
日ごと、寒さがつのります~
さして金にはならぬけど
寒さこらえて描いてます~
ところで、僕は眠れないタチだ。僕の不眠症は母親譲りで、近年は無理して眠ろうとせずにどろどろに眠くなるまで起きていて、しかるのちばったり眠るという誠に不規則な生活習慣だ。
眠らなきゃ、と念じて目を閉じ、暗闇の中で空しく過ぎていく時間がもったいない、と思うようになったのだ。時間が有り余るほど目の前に横たわっていると思えた時はいつしか過ぎ去り、人生の第3コーナーにさしかかっていることを思えば、眠る時間は仕方ないが、眠ろうとしていて眠れない時間は空しく時間を消費している感じがする。
毎週2回、早起きして学校の仕事をしているが、当然当日はいつも寝不足で、しかし僕の場合、寝不足だと妙にテンションが高くなるので、常時テンション高めの生徒を相手にするのに特に不都合はない。授業が終わるとぐったりして非常に疲れはするが。
早起きも毎日のことではないので、週末は寝だめをする。それで、まあ、とりあえず問題はない。しかし、明日は早いから早めに眠りたいな、と思うときにすっと眠れたらいいなとは思う。睡眠導入剤の類を何度か試したことがあるが、最悪だった。
眠る前、ずっと本を読む習慣があったが、最近本を読むかわりに音楽を聴くようになった。ヘッドフォンでかなり大音量で聴く。暗闇の中で目を閉じて真剣に聴く。何も考えないでとにかく集中して聴く。これが眠気を誘う。なかなかいい。
で、最近の「眠りにつくための音楽」としてのお気に入りがGavin Bryarsの「Jesus' Blood Never Failed Me Yet」という楽曲。
ギャビン・ブライヤーズはイギリスの音楽家で、ミニマル・ミュージックというのか、お芸術系の音楽の人で、トム・ウェイツのクレジットがあったので随分前このアルバムを入手したのだが、最初一、二度聴いて「何じゃこりゃ」と思い、ずっと聴くこともなかった。
ところが「眠りにつくための音楽」としてベッドルームの闇の中、目を閉じて聴くと、これがすこぶるいい。なんともハート・ウォーミングて豊かで深遠な音楽だ。
ブライヤーズは、彼の友人が製作した映画の中で、ホームレスの老人が口ずさんだ短い宗教歌を、テープ・ループにし、オーケストラゼーションを徐々に加えることで、甘美でセンチメンタルな楽曲に仕上げた。
Jesus' blood never failed me yet
Never failed me yet
Jesus' blood never failed me yet
There's one thing I know
For he loves me so...
歌詞はこれだけ。遠くから、打ちひしがれたような、それでいて妙に明るくオポチュニスティックな歌声が聞こえてくる。独特なリズムと間。それにシンプルな弦がからみ、次により厚い編成の弦楽が被さり、次に管が加わり、フルオーケストラへと、徐々に徐々に楽曲は甘美でノスタルジックな色を帯びてくる。
後半、老人の枯れた歌声はトム・ウェイツのそれにとってかわり、トム・ウェイツがオーケストラをバックに切々と歌い上げていく。ぐわーっと盛り上がって終わるかと思えばまた始まる、もう終わるだろうと思うとまた始まる、ああついに終わると思うとまた…。どこまでも持続するクライシス。
1分にも満たないメロディーが、とにかくCDいっぱい74分続くわけです。
Jesus' blood never failed me yet
Never failed me yet…………………
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だんだん眠くなる、だんだん眠くなる、だんだん眠くなる…、
というわけですね。不眠症の僕でさえ、トム・ウェイツが登場する前に眠りに落ちてしまう。
ということで、不眠症気味の方は是非、聴いてみて。
Gavin Bryars Official HP
サンプル音源