SEポートランド

ポートランド、川をわたればSE地区
レンガのアパート、ちいさな家、古着屋とカフェ
人・建物・緑がほどよく混ざる街

奥さんが「全米一すみたい街」で見たというおばけの話 ーおばけだってウエルカム! と、その「ウエルカム」をつくりだす人たちの生き様

2017-07-16 00:35:17 | 「まちづくり」するひとたち


このバカ話にでてくる甘い甘いドーナッツについて追記しました (2017/07/17)

翌朝ぼくがゆっくりとおきると、もう日が昇っていた。
車から造りつけの木製ピクニックテーブルへと戻ると、最初に目に入ったのが、きれいに皮がついたまま皿にのった、片側だけ食べかけのチキン・フライ。
どうやら昨晩いそいで食卓を片付けたとき、食品のしまい方が雑だったみたい。チキンには、上にお皿をもうひとつ載せて隠しておいたつもりだった。空けたのカラスかな? それにしては食い荒らした跡がみつからないな?

地面を見ると、昨晩食べのこしたドーナッツのプラ容器。このドーナッツは、フレッドメイヤーのやつみたいに軽くなくて、なかまでぎっちりとシロップが入ったターゲットのやつ。6ケ入りパック中2ケ残ってたはずだが、こちらは逆に綺麗に中身はなくなっている。
  「カラスめ、やけに綺麗に食べて行ったなぁ。チキンは中身だけ見て一口も食べずに!」
オレゴンはカラスも超☆ほんわか系ということで一人納得する。

    ・・・・・

ベイスギのあいだに日が射し、明るくなってくるなか、ひとり昨晩の炭から火を起こしなおしてキャンプ気分を楽しんでいると、いつもより少し寝起きわるそうに奥さんがテントから出てきた。
昨晩は、あまり寝れなかったとのこと。とりわけ朝方、子どもが寝袋を蹴っ飛ばすのが気になって何度か起きてしまった。でももっと困ったのは、深夜、数十年ぶりに金縛りにあったとのこと。
さらに、金縛りの中、だれかがテントに入ってきたそう。
   最初は、ぼくが入ってきたのかと思ったそうだ。
鳥居の穴を少しだけ手伝ってからその後、すっかり先住民族づいているぼくは、それはネイティブ・アメリカン? と訊ねると、奥さんは「いえ違う、短髪の二人づれの女の人」だと答えた。怖かったけど、楽しそうだったから、まあいいや、と。

    ・・・・・

ぼくは考えた。
昨晩来たのは「オ〇ゴンから愛」っぽい優しいカラスではない。
たぶん、その人たちは、楽しくシロップ漬けドーナツをたべてから、奥さんたちのテントに入ってきたのだろう。あと確認するとハーシーズのチョコも、こちらは包装紙ごと消えていた。
いかにも楽しそうな行動と、その人たちがおばけであるという事と、おばけが神話的なマイノリティではなく、今日も当市のどこかで元気よく働いたり遊んでいたりしそうな短髪の人であるということ、三つそれぞれは、昨日のぼくのなかでは相互に矛盾していた。そういえば、撤収時のテントを何度か確認しにきたレンジャーの人も、さっぱりとしたカウボーイふう笑顔の短髪のひとだった。

    ・・・・・

その翌日、ぼくは仕事に戻った。
イベントが集中する週末、とりわけ霊的な意味ではなく、今日もステキな人たちと会うことができた忙しく充実した一日。
そのなかの一人が、たまたま僕をQステーション(=北西太平洋岸で唯一、LGBTQが所有する建物にある性的マイノリティの支援団体)でのパーティに誘ってくれた。
本日は、おもに「レズビアンの年長者があつまる夕べ」とのこと。

ぼくをさそっていただいたJさんは、当市北部のジェントリフィケーション地区にある会館まで連れて行ってくれたあと、このパーティでの注意点を、当市一優秀な日本語ツアーガイドさんとしての能力を全力発揮し、きわめて端的・明瞭に教えてくれた。

    ・・・・・・

ぼくが現場でであった活力あふれる短髪の人たちの話をすると、彼は、反対の話をしてくれた(注1)。
   事例:昨年トランプが大統領になった後、報道された限りで6人の「Q」のひとが自殺している。この数字は、性的マイノリティのなかでも、さらにQのひとの人口の少なさを意識すれば、とても重いものだ。


そんな話を聞いてから、おいしいピザとサラダ、たのしそうに年配のひとたちが踊る音楽がかかるフロアを抜けて、さらにこの会館の入居団体を紹介してくれた。あのプライド・パレードの団体もここに入居している。その奥には「T」のひとたちのサポートも視野に入れた医療施設。
廊下の角には、いままで、僕たちが見慣れたポスター「みんなウェルカム!」に続く、あまりにも重い返歌があった。
    
     「いろんな悲しみは現実だし、たたかいも現実だ」

そう、みんなは楽しく生きているし、ときに、みんなは悲しんでいる。
ぼくだって、だれだって、おばけになるかもしれないし、おばけだって楽しいときもある。


(注1)過剰な「ヒーロー化」だって、異化さらには周縁化の一変化形に過ぎないってことを教えてくれたのかと。24時間テレビのアナウンサーみたいなことね。アブナアブナイ…













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