カウンセリング研修から帰ってきた院長に研修の様子を聞いてみました。
一番印象に残った話は、ダイレクトモードとバッファーモードという脳の働きについてでした。
何か目的をもって集中しているときは、脳は目的のもの以外を脳から除外して、物事を効率よく達成しようとする。これがダイレクトモード。これに対して、物事の全体を何となく眺めている状態では、いろいろな情報が入ってきて、広く浅く脳の中に情報をため込んでおく状態となり、これがバッファーモード(バッファーはデーターの一時的記憶場所を示すコンピューター用語)というのだそうです。
以下は、院長の話です。
会場には80名ほどの参加者がいて、会場の真ん中から左右の2グループに分かれて実験を行いました。それぞれのグループには前もってある指示が伝えられました(他方のグループには分からないように)。私(院長)のグループには「これから流れる動画を興味を持って見ていてください。」という指示が与えられ、その後同じ会場で両グループ一緒に同じ動画を見たのですが・・・
動画には女子大生(と思しき女性)が黒いTシャツと白いTシャツを着て、各3名、計6名で、音楽に合わせて動き回りながらバスケットボールをパスしている。途中から黒いTシャツの子が1名、ゴリラ(着ぐるみの)と入れ替わり、ゴリラは画面の中央部まで来て、得意の胸を叩くポーズをして画面の左手に消えていきました。
さて観終わった直後の質問タイムです。「今の動画で白いTシャツの人は何回パスをしたでしょうか?」という質問に私のグルーブの人たちは(私も含めて)全く沈黙、ところがもう一方のグループの人たちは8割9割の人たちが正確な回数(16回でした)を答えたのです。でもこれは何となく想像ができました。そうです、もう一方のグループの人たちには「白いTシャツを着た人は何回パスをしているでしょうか?」という指示が与えられていたのです。
驚いたのは次の質問がなされた時です。
「いまの動画の中で何か変わったことはありませんでしたか?」
という質問に、私のグループではほとんど全員がゴリラのことに気付いていたのに対して、パスを数えるように指示されたグループの人たちはほとんどが気付いていませんでした。あんなに堂々と画面に写っていたのにです。
つまり、人は何かに集中することによって目の前にあるものも見えなくなるという実証です。何かに悩んでいる人にとっては、目の前にある解決策が見えていないことがよくあるそうです。それを見えるようにするのもカウンセリングの役割だとか。
以前に、この実験でとある男性が、「興味を持って見ていて」と指示されたにもかかわらず、ゴリラの存在に全く気付かなかったそうです。後で実験者がその男性にインタヴューしたところ、動画に出てきた女性のなかに好みの人がいたそうで、その人に集中していたために他の状況には気付かなかったとのことでした。これこそダイレクトモードです。