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Classicalな人生

音楽を中心に、好きなものをつれづれなるままに。。。

シェイクスピアの音楽

2008-06-07 14:39:07 | 全体
劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品は音楽と密接な関係があり、関連する音楽作品も多岐にわたっています。もともとシェイクスピアの時代に劇中で演奏された歌や舞曲などをはじめとして、後世の上演や映画化に際して作られた音楽、シェイクスピア原作のオペラ、また作品にインスパイアされて生まれたオーケストラ作品など。シェイクスピアが好きな僕としては、作品とのつながりに対する興味も手伝って、それなりにゆかりの音楽を聴いてきたように思います。
シェイクスピアの劇は一般市民を対象に書かれたものであり、観客へのサービスもあって道化や羊飼いなどの狂言回し役から王妃などさまざまな登場人物が劇中で歌う場面が出てくることが多く、芝居全体が音楽に満ちています。もともと台詞は韻を踏んでいるものも多く、特に本場の俳優たちが独特の抑揚をつけて演じるさまは、劇自体がひとつの音楽を奏でているようです。そのような舞台で実際に使われた音楽を中心に集めたアルバムとしては、LP時代にカウンターテノールのアルフレッド・デラーが中心になってまとめたアルバムのほか、演奏者は忘れてしまいましたがアルヒーフに「シェイクスピアの音楽」というアルバムもありました。最近ではピケットが率いるグローブ座(シェイクスピアの劇場の名前)付の音楽家による作品集が出ています。これらは断片的ではありますが、リュート・ソングやジグなどの舞曲を中心に活気に満ちた当時の雰囲気に浸らせてくれます。「オセロー」でデズデモナが歌う有名な柳の歌も当時の曲が残っており、ヴェルディのオペラとは一味違った、しみじみと哀切さがこもった歌になっています。

後世のオペラ化では、有名なところでは、ヴェルディの「オテロ」「ファルスタッフ」「マクベス」があります。シェイクスピアの素材を活かしつつ、完全にヴェルディの世界が構築されています。原作をうまく刈り込んで作られたリブレットも出来がよく、シェイクスピア作品のもっとも芸術的な再現例と言えるでしょう。ほかにオペラとしてはニコライ「ウィンザーの陽気な女房たち」、トマ「ハムレット」、ライマン「リア王」などもありますが、いずれも聴いたことはありません。
オペラといえばもう一つ、ブリテンの「真夏の夜の夢」を忘れるわけにはいきません。妖精の王オベロンと妻タイターニア、恋する若者たち(ハーミア、ライサンダーほか)、そして喜劇的な職人たち(ボトムほか)が織り成す世界をブリテンは実に巧みにオペラ化しています。オベロンをカウンターテノールとして超現実的な存在を際立たせたり、狂言回し役の妖精パックに語りの青年をあてるなどの構想も効果的です。個人的には、職人たちが国王夫妻の結婚式の余興で演じるピラマスとシスビーの物語の道化芝居のくだりが大好きです。レーザーディスクで見た英国ロイヤルオペラの映像も大変好ましかったのですが、ずいぶん前に実演で観た二期会の公演も忘れがたく、非常に成功した上演だったと思います。

ブリテンと同じく20世紀英国の作曲家であるウォルトンも数々の映画音楽などを書いており、ローレンス・オリヴィエ主演の「ヘンリー五世」などの映画をDVDで見ましたが、「ハムレット」「ヘンリー五世」「リチャード三世」などからの音楽を集めたCHANDOSのCD(マリナー指揮)では、シェイクスピア俳優として高名なサー・ジョン・ギールグッドやクリストファー・プラマー(サウンド・オブ・ミュージックのトラップ大佐)の語りも入って、本場英国の舞台をほうふつとさせる仕上がりになっています。このあたりが一番シェイクスピアの芝居に音楽が寄り添った成功例と言えるでしょう。

オーケストラ作品としてはR・シュトラウスの交響詩「マクベス」などもありますが、チャイコフスキーやプロコフィエフ、ショスタコービッチなどロシア・ソ連の作曲家がかなり多くの曲を作っていることは注目に値します。プロコフィエフもバレエ音楽を書いている「ロメオとジュリエット」では、僕はベルリオーズの劇的交響曲が以前から結構好きで、LP時代は小澤/ボストン響を聴いていました。特に第2部の舞踏会の饗宴の前後は、原作からインスピレーションを受けて独自のファンタジーを展開するこの作曲家の面目躍如。でもまだ決定盤と言える演奏には出会えていない気がします。あとは有名なのは何といってもメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」でしょう。この作曲家が得意とするスケルツォなど、いかにも夜の森の幻想的な情景を描き出していて秀逸ですが、僕は作曲家の若書きである序曲が特に気に入っています。森の妖精たちのざわめきのような導入部から、晴れやかな輝きに満ちた祝祭への鮮やかな展開。
こうして見てくると、歴史劇や悲劇が多く、ロマンス劇が少ないのは分かるにしても(チャイコフスキーに「テンペスト」があるけど)意外に喜劇作品が音楽化されていないなと思います。「夏の夜の夢」とファルスタッフ関連くらい。「十二夜」「お気に召すまま」「空騒ぎ」「じゃじゃ馬ならし」などの佳作も誰かにオペラ化して欲しかった。きっとボーマルシェの「セビリア」「フィガロ」並の傑作が生まれたに違いないのに。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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シェイクスピア (ryotaro)
2008-06-14 12:40:40
こんにちは。トラバさせていただきました。
よろしくです。
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Unknown (ろべると)
2008-06-15 13:04:04
Ryotaroさん、コメントありがとうございます。「十二夜」は僕が一番好きなシェイクスピア作品です。男装したヴァイオラも格好いいし、サー・トービーたちのドタバタも楽しいです。ずっと前ですがシェイクスピア・シアターの公演を2回も見に行ってしまいました。2度目は演劇などに縁のない弟を引っ張っていきましたが、喜んで観ていました。
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