競艇事業に対する深い愛情

競艇事業に対する深い愛情

笹川良一が競艇事業に賭けた情熱や愛情は、桁外れのものがあった。モーターボート競走法の制定に奔走したことは既に紹介している。

笹川は、競艇におけるSG競走などの大きなレース開催時や公務で地方に出張した際は、足繁く競艇場を訪れファンの前で礼を述べ挨拶をした。

笹川はファンの前で挨拶をした後、舟券を発売する女性、警備員、食堂の人たちなど場内くまなくまわり、感謝の言葉を述べて歩いた。

当時は今と違って「競艇場（ギャンブル場）」で働くことで、地元で肩身の狭い思いをする時代があったことも事実である。

また、戦後間もない頃、戦犯の家族は世間から厳しい目で見られていた。日本が敗戦国になり、食べるものもなく、荒廃した社会にしたのは全て戦犯の責任である、という風潮があり就職口もなくお金があっても戦犯というレッテルが貼られ、物さえ売ってくれなかったこともあったそうだ。

笹川は競艇事業を立ち上げ、競艇選手や競艇場で働く従業員に雇用の道を開いた。そして従業員には他の業種に比べ、胸を張って暮らせるように高い給与水準にしたのであった。

後に日本船舶振興会（昭和37年設立、現・日本財団）を設立した当初、東條英機（巣鴨拘置所で処刑）の子息が勤務していたこともあるなど、戦犯の家族の面倒もよくみた。

そんな笹川の行動や言動が競艇ファンに愛され、どこへ行っても人気者であった。

また、競艇場で働く従業員も笹川のファンであったことは間違いない。笹川は、歴代の米国大統領や日本の首相など国内外の要人と会うときと同じ目線でファンや従業員と接していたのである。

ファンからの強い要望と競艇の生みの親であり競艇業界における功績を称えＳＧ競走のなかに笹川賞競走（優勝賞金4000万円）が制定された。

笹川賞競走は、ファン投票によって出場選手を決定していることが、中央競馬会の有馬記念と同じでところである。

この大会はファン投票で選ばれたスター選手による「夢の競演」であり、俗に言う「オールスター」とも言われ、毎年5月に開催される。