051:宙（笹井宏之）

まばゆいね、まばゆいねって宇宙服着たままはじきあう青林檎

050:仮面（笹井宏之）

ありふれたかおをいちまい川底へ沈める夕ぐれの仮面売り

049:約（笹井宏之）

直線がすこしぼんやりなるころに私、あなたに集約される

048:毛糸（笹井宏之）

眠りたてのあなたの繭にふれるときほのかにひかる真冬の毛糸

047:没（笹井宏之）

牛乳と野菜サンドがめぐりあう日没五分前のコンビニ

046:階段（笹井宏之）

あのひとは階段でした　のぼろうとしても沈んでしまうばかりの

045:トマト（笹井宏之）

傷のあるトマトをひとつ籠に入れごくゆっくりとレジへむかった

044:寺（笹井宏之）

上半身ほとんど寺であるひとがごおんごおんと挨拶をする

043:ためいき（笹井宏之）

降り積もる木の葉いちまいいちまいにあなたのためいきが宿る夜

042:海（笹井宏之）

海沿いの小さな町を吹いている一陣のあなたに会いにゆく