「100円玉」 作:よし
昭和49年の100円玉がポケットの財布の中から顔を出した。
ぼくはこの100円玉の何番目の持ち主かな。
この100円玉は、今までに一体何人の人の手を渡ってきたのかな。
100人かな。1000人かな。それとも10000人かな。
ぼくが、記念すべき10000番目の持ち主だとうれしいな。
そんなわけないか。
それにしてもこの100円玉はどういう使い方をしてきたのかな。
もしかすると、どこかのお母さんが、子どもにお菓子を買ってあげるために、その子ども
に手渡したのかもしれない。
他にもいろいろな歴史を持っているはずなんだ。ある時は、ジュースと引き換えに自動販
売機の中に投入され、数週間を自動販売機の中で過ごしたり、ある時はコンビニで使われ、
レジの中で数時間待機したり、ある時は不注意で地面に落とされたり、ある時はオレンジ
ジュースをかけられたり、ある時は封筒の中に他の小銭と一緒になったりもする。いろん
な出会いもあるんだ。だけどお金は一生のほとんどを真っ暗なところで過ごす。つまり財
布の中やレジの中だ。だからぼくはかわいそうなので、天気のいい日に彼らを日向に並べ
て置いたりする。けれど、お金は言う。「そんなことするもんじゃないよ。人目につくと
ころにお金を置いておくものじゃない。」でも、光に照らされ、お金は輝いている。お金
は、ああ言ってはいるけれど、まんざらでもないみたいだ。
お金は使うとなくなるというけれども。厳密にはなくなってはいない。使うと持ち主が変
わるだけだ。お金の効果も一度使うとなくなるという訳ではない。何度使っても100円
として生き続ける。そして100円といえども、10回使われると1000円分の働きを
し、100回使われると、10000円分。1000回使われると100000円分の働
きをしたことになる。それはともかくとして、この昭和49年の100円玉は、ぼくより
多くの歴史を見てきている。大先輩なのだ。それでも、ぼくはこの100円玉を使う時が
来る。そのときぼくは別れをつげる。”100円玉よ、またね。”
100円玉も言う。”それじゃ、またね。”
ぼくは、昭和49年の100円玉という「歴史の金貨1枚」を何に使うか迷っている。
「そして、100円玉はよく知っている。100円玉は100円玉でしかないことを。」
僕も少し謙虚に生きよう。そう思った。
昭和49年の100円玉がポケットの財布の中から顔を出した。
ぼくはこの100円玉の何番目の持ち主かな。
この100円玉は、今までに一体何人の人の手を渡ってきたのかな。
100人かな。1000人かな。それとも10000人かな。
ぼくが、記念すべき10000番目の持ち主だとうれしいな。
そんなわけないか。
それにしてもこの100円玉はどういう使い方をしてきたのかな。
もしかすると、どこかのお母さんが、子どもにお菓子を買ってあげるために、その子ども
に手渡したのかもしれない。
他にもいろいろな歴史を持っているはずなんだ。ある時は、ジュースと引き換えに自動販
売機の中に投入され、数週間を自動販売機の中で過ごしたり、ある時はコンビニで使われ、
レジの中で数時間待機したり、ある時は不注意で地面に落とされたり、ある時はオレンジ
ジュースをかけられたり、ある時は封筒の中に他の小銭と一緒になったりもする。いろん
な出会いもあるんだ。だけどお金は一生のほとんどを真っ暗なところで過ごす。つまり財
布の中やレジの中だ。だからぼくはかわいそうなので、天気のいい日に彼らを日向に並べ
て置いたりする。けれど、お金は言う。「そんなことするもんじゃないよ。人目につくと
ころにお金を置いておくものじゃない。」でも、光に照らされ、お金は輝いている。お金
は、ああ言ってはいるけれど、まんざらでもないみたいだ。
お金は使うとなくなるというけれども。厳密にはなくなってはいない。使うと持ち主が変
わるだけだ。お金の効果も一度使うとなくなるという訳ではない。何度使っても100円
として生き続ける。そして100円といえども、10回使われると1000円分の働きを
し、100回使われると、10000円分。1000回使われると100000円分の働
きをしたことになる。それはともかくとして、この昭和49年の100円玉は、ぼくより
多くの歴史を見てきている。大先輩なのだ。それでも、ぼくはこの100円玉を使う時が
来る。そのときぼくは別れをつげる。”100円玉よ、またね。”
100円玉も言う。”それじゃ、またね。”
ぼくは、昭和49年の100円玉という「歴史の金貨1枚」を何に使うか迷っている。
「そして、100円玉はよく知っている。100円玉は100円玉でしかないことを。」
僕も少し謙虚に生きよう。そう思った。