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医師は受けないバリウム検査がなくならない訳

2021-03-05 13:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です

胃がんの早期発見のために受ける検査にはバリウム検査と胃カメラ検査がある。ただし胃カメラ検査のがん発見率はバリウム検査より1000倍も高い。それでは、なぜバリウム検査がいまだに存在するのか。予防医療に力を入れるMYメディカルクリニックの笹倉渉院長に聞いた――。
厚生労働省のがん検診の指針で定められている
胃がんの検査方法として代表的な、バリウム検査(胃部エックス線検査)と胃カメラ(胃部内視鏡検査)。実は、その2つには精度に大きな違いがあります。
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胃がんは粘膜の表面から進行していくのですが、バリウム検査で見つけることができるのは早期胃がんのなかでも「粘膜下層」といって粘膜の表面よりも深くまで進行してしまったがんです。
一方、胃カメラは粘膜の表面に胃がんが生じた段階で発見することができます。いまだ多くの検診ではバリウム検査が採用されていますが、胃がんをより早期に発見したいのであれば胃カメラの方が断然有効であるといえるでしょう。
バリウム検査で胃がんの疑いがあると診断された場合にも、二次検査として胃カメラでの確認を行うことになります。結局二度手間になってしまうため、初めから胃カメラを行った方が良いことは明らかです。バリウムと胃カメラの精度の違いを知っている私たち医師がバリウム検査を受けることはまずありません。
しかし、依然としてバリウム検査は胃がん診断のための検査として行われています。
これは、端的にいえば厚生労働省が定めているがん検診の指針に、いまだバリウム検査が含まれていることが原因です。胃がん検診の検診項目は、「問診に加え、胃部エックス線検査又は胃部内視鏡検査のいずれかとする。市町村は、胃部エックス線検査及び胃部内視鏡検査を併せて提供しても差し支えないが、この場合、受診者は、胃部エックス線検査又は胃部内視鏡検査のいずれかを選択するものとする。」と定められているのです。
指針に含まれている以上、バリウム検査を全く行わないというわけにはいきません。
胃カメラの方ががんの早期発見に優位だ
それでは、なぜそのような指針になっているのでしょうか。国のがん対策は死亡率をエビデンスとしており、そのデータがバリウム検査を受けた人のものしかないからです。「1~3年以内にバリウム検査を受けた人の死亡率が、受けなかった人に比べて60%減少した」というデータがあります(がん検診のあり方に関する検討会中間報告書~乳がん検診及び胃がん検診の検診項目等について~平成27年9月)。
たしかに、バリウム検査を行う意味が全くないというわけではありません。バリウム検査でも、粘膜下層まで進行したがんであれば発見することができます。粘膜下層まで進行していても、手術を受ければ大概の場合寛解します。
とはいえ、バリウム検査は約80年前、胃がんのメカニズムが分かる以前に開発された古い検査で、日々進化する胃カメラの精度にはかなうはずもありません。体の外側からレントゲン撮影するバリウム検査より、鮮明に胃の内部を確認することのできる胃カメラ検査の方が早期発見に優位であることは明らかです。
また、人件費の問題もあります。胃カメラ検査は医師しか行うことができませんが、バリウム検査は医師のほかレントゲン技師も行うことができます。そのため、コスト削減のためにバリウム検査のみを行う医療機関も多く存在するのです。
今の胃カメラは苦しくない上に機能も充実している
時々、「昔受けた胃カメラの検査が苦しかったのでバリウム検査を受けたい」という方がいらっしゃいますが、最新の機材では内視鏡の直径は数ミリまで小型化されています。たしかに数十年前、登場したばかりの胃カメラは直径が数センチあり、検査は苦しいものでしたが、今では非常に小型化され苦しさはかなり緩和されています。
また、画像の鮮明度も大幅に向上しており、さまざまな撮影モードやズーム機能なども実装されるなど目覚ましい進化を遂げています。
一方、バリウム検査はこの数十年大きく進歩したといえることはなく、バリウム剤が少し飲みやすくなった程度のマイナーチェンジしかしていません。炭酸が苦手な人にとってはそれでも飲みづらいと思います。
胃カメラに比べ、バリウムが優れているといえる点はないといっても過言ではないでしょう。
胃カメラであればバリウムよりもはるかに正確に、早期のがんを発見することができます。バリウムより胃カメラの方が、胃がんの発見率は1000倍も高いというデータがあるほどです。
医学の進歩により、もはやがんは不治の病ではなくなりました。早期に発見して手を打つことで、がんは治療することができます。かつてはがんと診断されてから5年経っても生きているかという「5年生存率」というものが一つの指針として使われていましたが、今では生存率が劇的に向上し、「10年生存率」という指標もできています。
ピロリ菌を除菌すれば胃がんはほぼなくなる
そもそも胃がんは、ほとんど予防することができる病気です。胃がんの原因の多くが、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)による慢性胃炎です。ピロリ菌を保菌していると、胃の粘膜が常態的に炎症を起こし、そこに胃がんが発生するのです。ピロリ菌以外の要素が原因となる胃がんは全胃がんのなかの数パーセントあるかないか、といわれています。
そのため、ピロリ菌を除菌することで、胃がんはほとんどなくなるものと考えられます。
ピロリ菌は幼少期に感染し、大人になっても自然に除菌されることはありません。胃がん予防のためにはできるだけ早くピロリ菌を保菌しているかを調べ、除菌しておくことが肝心だといえるでしょう。
ピロリ菌の感染経路はいまだ解明されておりませんが、保菌しているかどうかの検査や除菌は簡単に行うことができます。
まず、ピロリ菌検査については、かつては胃カメラで胃の粘膜や組織の一部を採取してそこに菌がいるか確認するのが一般的でしたが、近年ではより簡単な検査も普及しています。被験者がピロリ菌に反応する検査薬を服用し、呼気を調べるだけでピロリ菌の有無を調べることができる検査もあります。
除菌自体はより簡単で、1週間程度抗生物質を服用するだけです。90%近い方はそれで除菌が完了し、まだ菌が残っていた場合には、再度薬を服用します。
胃がんの死亡率は下がり続けている
ピロリ菌検査や除菌には、数千円程度の費用がかかりますが、胃がんに罹患するリスクを大きく下げることのできる明らかに有用な手立てです。胃がんを予防したいという方は、ピロリ菌検査を受けるのがおすすめです。
最近では中学生に向けてピロリ菌検査を取り入れている自治体も増えています。今後、ピロリ菌除菌はいっそう広まっていくことでしょう。いずれはピロリ菌検査が健診項目に盛り込まれるかもしれません。
ピロリ菌の除菌による予防が普及すれば、胃がんはいずれほとんどなくなると考えられるでしょう。
かつて、日本人のがんの部位別死亡率は男女ともに胃が1位でしたが、胃がんの死亡率は減少し続け、男性は1990年代、女性は2000年代に入ってそれぞれ肺がん、大腸がんに取って代わられました。発症率も、40代の胃がん罹患率は昭和58年の40%にまで減少しています。30年後には胃がんはほとんどなくなっているのではないでしょうか。



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